私のトラウマ的アルバム。銀杏BOYZ「DOOR」
中学時代、なんとなくTSUTAYAで借りてきた銀杏BOYZの「DOOR」。
(画・緑色三号)
iTunesへ取り込んだ後、どんな音楽なんだろうという期待を胸に抱きつつ再生ボタンを押す。
2曲目が終わったあたりで、当時の私はこう思った。
「あっ、これはちょっと刺激的すぎるからもっとテンション高いときに聴くべきかな……」
流れてくる曲たちがあまりにも強烈で怖気づいてしまったのだ。
何を言っているのかわからないって?試しに聴いてみるといい。なんも予備知識なしに聴いたら、きっとその圧倒的なパワーにぶちのめされることだろう。
特に1曲目の峯田(以下、敬称略)によるアジテーション、衝撃的すぎる。
あいつらが簡単にやっちまう30回のセックスよりも
「グミ・チョコレート・パイン」を青春時代に1回読むってことの方が
僕にとっては価値があるのさ
現実なんて見るもんか
現実なんて見るもんか
(銀杏BOYZ「十七歳(…Cutie girls don't love me and punk.」より)
たった4, 5分で、「DOOR」という作品は私にトラウマ的な印象を植え付けたのである。
それから数年間、このアルバムを聴くことはなかった。
◇
時は経ち。高校生になった私。
ふと、「『DOOR』を全部通して聴いてみよう」という思いに駆られた。
せっかく借りたのだから、一度はちゃんと聴き通したいと思ったのだ。
恐る恐る、最初から最後まで通して聴いた時、銀杏BOYZの振れ幅のすごさというものにひどく驚いた覚えがある。
アルバムの前半で「援助交際」「あの娘は綾波レイが好き」「メス豚」といった破壊的な曲をやっていると思えば、後半には「銀河鉄道の夜」「惑星基地ベオウルフ」「夜王子と月の姫」のような、きらびやかでかつ切ない曲群が待ち構えていた。
アルバムのクライマックスには大曲の「人間」。
最終的には、アコギの弾き語り曲「なんとなく僕たちは大人になるんだ」でしっとりと終わる。
なんだこれは、と思ったと同時に、僕は銀杏BOYZに心を奪われたのだった。
このアルバムと同時発売だった「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」もすぐに聴いた。最高じゃん、と思ったときにはもう完全に銀杏BOYZファンの私がそこにいた。
この二つのアルバム、「どちらが良いか?」といわれたら本当に悩ましい。甲乙つけがたい。
聴きやすさという観点からいえば、「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」の方に軍配が上がるかもしれない。こっちも名曲揃いで「SKOOL KILL」や「漂流教室」「東京」「駆け抜けて性春」「BABYBABY」「若者たち」「もしも君が泣くならば」…ってキリがないよ!
「君と僕の~」のほうが聴きやすいと感じるのは、銀杏BOYZの前身バンドであるGOING STEADY(以下ゴイステ)の曲群の新録が多いことも関係していそうだ。人に勧めるのであればこっちをお勧めするかもしれない。
ただ、アクの強さでいったら断然「DOOR」。やはりその衝撃的な出会いが印象的で、今回はこちらを取り上げることにした。
そのアクの強さゆえ、ハマらない人にとっては生理的に受け付けない作品であるかもしれない。
逆に、ハマる人はどっぷりとつかってしまうことだろう。
あと、全体的にものすごい音圧のアルバムなので、電車内とかで聴く際には音漏れに注意してほしい。裏を返せば、周りの音を遮断したいときにも使えたりする。
僕は高校の修学旅行の時、ただでさえ寝られないのに同級生の陽キャが猥談し始めてどうしようもなくなったから、DOORを聴いていた。
こういう状況の時に聴く峯田の歌詞はすさまじく心に響いたぜ……。ある意味、助けられた。
少年の心にトラウマを植え付けるほどの刺激的な一枚。
機会があったら聴いてみてネ。
◆余談◆
この二つのアルバムがすごすぎたせいなのか、銀杏BOYZはそれ以降の作品でなんだかパワーダウンしてしまった印象が否めない。結局、「DOOR」と「君と僕の~」を超える作品を出せないまま、銀杏BOYZは実質的に解散してしまった。
解散後リリースした「光の中に立っていてね」「BEACH」は正直マニア向けの作品だと思うので必聴というまでのアルバムじゃないかなあ。曲単位では結構いいのもあるんだけどね。
実質ソロになってからの峯田は、歌い方をかなり変えている。それを否定する人もいるみたいだ。私個人としては、そこまで悪くない歌い方だと思う。
2017年の長田大行進曲というフェスで生歌を聴く機会があったんだけれど、心に直接訴えかけてくるような歌、という表現がまさに似合う感じだったよ。
「エンジェルベイビー」や「恋は永遠」を聴くと、表現方法が変化しても本質は変わらないな、と私は感じる。
「恋は永遠」、なんか聴いていると泣きそうになるのはなんでなんだろう。
★この記事は私が個人ブログで掲載していた記事を加筆・修正したものです。
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