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ヴァン・フルールの飴売り

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20世紀初頭のフランスが舞台の小説です。
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【小説】ヴァン・フルールの飴売り 第3話

【小説】ヴァン・フルールの飴売り 第3話

 警察署での取材を終えたアンベールとウィリアムは、町の小さなホテルの一室で一息ついた。
 窓から見える日は、もう西へ傾いている。
「今回の取材、なかなか厳しくなりそうだな……」
「そうですね……半日経っても、事件に関する情報がここまで集まらないとは……」
「でも、どれだけ厳しい取材になろうと、俺はこの事件の真実を知りたいと思う。そのために新聞社に入ったんだ」
 アンベールの表情からは疲れが見えてい

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【小説】ヴァン・フルールの飴売り 第2話

【小説】ヴァン・フルールの飴売り 第2話

 人攫い? アンベールは首を傾げ、老人に尋ねた。
「どうして、人攫いのことを『飴売り』と呼ぶんですか?」
 老人はなお、掲示板を見つめながら答えた。
「この子たちがいなくなった場所には、いつも甘い香りが残っているんだ。飴のように甘い香りが……だからみんなそう呼ぶようになった」
「香り……ですか」
 考え込むアンベールの横で、ウィリアムは必死にメモを取った。
「とにかく、あんたらはもうこのことに首を

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