マッチ棒(ライターに憧れている)

趣味でイラストを描いたり、物語を考えたりしています。 今まで書いた長編小説はマガジンに…

マッチ棒(ライターに憧れている)

趣味でイラストを描いたり、物語を考えたりしています。 今まで書いた長編小説はマガジンにまとめ、追加しています。

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はじめまして

はじめまして、マッチ棒と申します。 いつもはTwitterで自分の思ったことを呟いているのですが、このたびnoteを始めてみました。 これからnoteでは、次の3つのことを綴っていきたいと思います。 日々考えていること→【日記】タイトル 描いたイラスト&描いてみた感想→【イラスト】タイトル 小説→【小説】タイトル まだnoteの操作に慣れておらず、文章も拙いですが頑張って書いていこうと思います。どうぞよろしくお願い致します!

    • 【小説】ある駅のジュース専門店 第44話「ジュース屋と雑貨屋」

       これはある夜、電車の中で居眠りをして、降りる駅を乗り過ごしてしまった時のこと。  慌てて降りたその駅は色あせたように真っ白で、改札の扉が開いたまま壊れている。看板の駅名に目を凝らしても、全く読めない。読み方を調べようとスマホを出せば、「圏外」の文字が目に飛び込んでくる。  以前、ネットで知った都市伝説が脳裏に浮かんできた。この世とは別の場所にあるという駅の噂だ。きさらぎ駅とか、かたす駅とか、やみ駅とか、とにかくたくさんあるらしい。  ここはもしかしたらそういう駅なのではない

      • 【小説】ある駅のジュース専門店 第43話「散歩」

         これは、暖冬で昼間の気温が高くなった日の話。  私の家にはレナという茶色いトイプードルがいて、一日に三回、家族が順番に散歩に連れて行っている。私は夜の散歩を担当しており、七時ごろに家を出ている。  ある夜、私はレナと散歩に出かけた。レナは尻尾を高く掲げ、私の少し前を軽やかな足取りで歩いていく。まんまるの瞳は喜びに満ち溢れているように見えて可愛らしい。自然と笑みがこぼれる。  いつもは散歩コースがだいたい決まっていて、電柱の匂いを嗅ぎつつコースをなぞるように進む。だがその日は

        • 【小説】赤ずきんの銃弾 第1話「おつかい」

          「わぁ、でっかいお家!」  ロザリー・ペルティエは背の高い木に囲まれた屋敷を見上げ、感嘆の声を漏らした。背後から視線を感じて振り返ると、先程入ってきた門のそばで、二人の警備員が小声で話し合っている。本当にあんな子どもが、ありえない、などという会話が耳に入ってきたが、気にせず玄関の呼び鈴を鳴らす。 「こんにちは! フックス社長はこちらにいらっしゃいますか?」  扉が開き、分厚い辞書が辛うじて入るくらいの隙間が作られる。そこから厳つい男が怪訝な顔を覗かせた。男は鋭い目でロザリーを

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        • ある駅のジュース専門店
          44本
        • 赤ずきんの銃弾
          1本
        • キャンバスランド怪談
          2本
        • 瑠璃の囀り
          5本
        • ヴァン・フルールの飴売り
          9本
        • 時の砂が落ちるまで
          3本

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          【小説】ある駅のジュース専門店 第42話「霊感」

           気がつけば、都市伝説の紹介サイトが表示されたスマホの画面がすぐ目の前にあった。どうやらスマホを持ったまま、前傾姿勢で眠ってしまっていたらしい。バスの床に落ちそうになっていたスマホを持ち直し、運賃表を見やれば、降りるはずの停留所はとうに過ぎている。顔から血の気が引いていくのが分かった。 「次は、⬛︎⬛︎駅前。⬛︎⬛︎駅前」  ざざざざ、とアナウンスにノイズが混じる。耳障りなその音に顔をしかめながら、私は降車ボタンを押した。  窓の外は墨を塗りたくったような暗闇で、街灯の明かり

          【小説】ある駅のジュース専門店 第42話「霊感」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第41話「いわくつけ」

           期末テストを二週間後に控えたある日。私は親友の千晴と高校に残り、放課後の教室でテスト勉強をしていた。 「ダメだぁ、頭パンクした! ねぇ萌、休憩しない?」 「そっか、もう一時間ぐらい経ってるね。ちょっと休もっか」 「よっしゃ! クッキーつまも〜」  千晴はスクールバッグの中からクッキーの箱を取り出した。 「お、美味しそう! 私も食べてもいい?」 「良いよー! 一緒に食べよ」 「やった! いただきまーす」  ビニールの包装を破き、クッキーを一口かじる。疲れた身体にほんのり甘い味

          【小説】ある駅のジュース専門店 第41話「いわくつけ」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第40話「井田晴人の都市伝説研究」

          はじめに  昨今、SNS上で「ある駅のジュース専門店」という都市伝説が突如出現し、現在も流行が続いている。大まかな内容は「存在しないはずの駅に迷い込んだ」というもので、2004年1月8日に投稿された「きさらぎ駅」や2011年11月10日に投稿された「すたか駅」と同じように、「異界駅」のカテゴリに分類することができる。しかし、SNSやネット掲示板で囁かれている噂を確認すると、「ある駅のジュース専門店」には従来の異界駅とは異なる特徴が見られる。  本稿では都市伝説「ある駅のジュ

          【小説】ある駅のジュース専門店 第40話「井田晴人の都市伝説研究」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第39話「話し声」

           これはある年の八月、母と買い物に出かけて家に帰ろうとしていた時の話。  町中からバスに乗り、自宅に一番近いバス停で降りてしばらく歩くと、背の高い木々に囲まれた石造りの大きな鳥居が見えてくる。  そこは「開戸神社」という神社で、日本神話に登場するイザナギの杖から生まれた神様を祀っているらしい。神社のそばには、かつてこの地域が村だった頃に入り口を守っていたという神様の石碑が建てられている。その石碑の管理も、開戸神社がしているのだという。 「もうそろそろ夏祭りの時期だね」  鳥居

          【小説】ある駅のジュース専門店 第39話「話し声」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第38話「腕時計」

           人のまばらな電車に乗り込むと、男は座席に全身を預けた。発車ベルが鳴り、ドアが閉まる。電車はゆっくりと走り出した。  左腕の時計に目をやれば、午後十時。家に帰ったらミックスナッツを肴にビールを飲んで、録画していた番組を観たい。だが明日も仕事だ。軽くシャワーでも浴びてすぐに眠りにつくのが最善だろう。そう考えながら、流れていく夜景をぼんやりと眺めていた。 「ご乗車ありがとうございます。次は、⬛︎⬛︎……⬛︎⬛︎です」  激しいノイズの入ったアナウンスにびくりとする。駅名の部分が全

          【小説】ある駅のジュース専門店 第38話「腕時計」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第37話「肝試し」

           これは、僕が小学五年生だった頃の話。  当時通っていた小学校では、毎年五年生の夏頃になると二泊三日の合宿があった。山間にある青少年自然の家に泊まり、キャンプファイヤーをしたり班ごとにカレーを作ったりと、普段はなかなかできない体験ができた。  そんな合宿で最も印象に残っているのが、二日目に行われた肝試しである。  夕方からキャンプファイヤーが始まり、終わった頃には、日はとっくに沈んでいた。次のイベントがあるので体育館に集まってください、と先生から指示が出される。みんなでぞろ

          【小説】ある駅のジュース専門店 第37話「肝試し」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第36話「接触」

           公共の施設に行くと、たまに違う場所で同じ人を何度も見かけることがある。普段通っている高校でも、さっき廊下ですれ違った人を図書室でも見かけたり、さっき授業をしていた先生と掃除中にも会ったりして、そのたびに偶然の不思議さを感じている。  つい最近も同じような体験をした。ただ、あの頻度は少し……異常だったと思う。  これは昨日、友人たちと三人でショッピングモールに遊びに行った時の話。  最初にエスカレーターで三階に上がり、ゲームセンターに向かった。クレーンゲームで流行りのキャラ

          【小説】ある駅のジュース専門店 第36話「接触」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第35話「検索履歴」

           親友の知樹が死んで、約一年が経った。  俺のせいだ。俺があの日、カーナビを信じて知らない道を突き進んでしまったからだ。明らかに怪しい駅の中にどんどん入っていって、あのジュース屋で何の疑いもなくジュースを飲んだからだ。間違った判断を重ねた結果、知樹は化け物に喰われて死んでしまった。  そろそろ過去のこととして割り切らなければならないのは分かっている。しかし、考えないようにすればするほど、あの日のことを鮮明に思い出してしまう。いつまでも前を向けないのが辛い。  気晴らしに動画で

          【小説】ある駅のジュース専門店 第35話「検索履歴」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第34話「路地裏のジュース専門店(裏側)」

           十月三十一日、ハロウィンの夜。路地裏に停めたキッチンカーの周りには、何人か仮装した客が集まっている。どれもべろべろに酔っている奴ばかり。話し声は五月蝿いし、キッチンカーの方まで酒の匂いが漂ってきそうで、思わず眉をひそめてしまう。  しばらくすると、客たちは満足したのか、どこかへ千鳥足で去っていった。私は小さく息を吐いた。  今日は年に一度の特別な日。生者も死者も、怪異も魔物も、自由に町を歩ける時間。浮ついた気分なのはお互い一緒だ。ハメを外したくなるのもよく分かる。  だが、

          【小説】ある駅のジュース専門店 第34話「路地裏のジュース専門店(裏側)」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第33話「路地裏のジュース専門店」

           十月三十一日、ハロウィンの夜。動画配信アプリに上がる渋谷のライブカメラは、仮装した人々でごった返すスクランブル交差点を映し出している。今年も例年通りの賑わいだ。  渋谷ほど大規模ではないが、私が住んでいる町でも、あちこちで仮装を楽しむ人を見かける。魔女や黒猫、その周りを駆け回ってはしゃぐ小さな蜜蜂や妖精たち。人もオバケも入り混じり、町がちょっぴり異世界と化すこの日がいつも待ち遠しかった。  今年は私も張り切って、赤ずきんの仮装に挑戦してみた。葡萄酒に見立てた空き瓶と親友に渡

          【小説】ある駅のジュース専門店 第33話「路地裏のジュース専門店」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第32話「笠岐の道祖神」

           いつこの世に生まれたのか、定かではない。  気づけば見知らぬ人々が、地に両手をついて口々に叫んでいた。私の傍らには、大きな石を削って整えた、なんだかよく分からないものがどんと建っている。 「お願いします……どうか、どうか」 「わしらの村を守ってくだせぇ」 「病気が村に入らんように!」  ムラ? ビョーキ? いったい何を言っているんだ。人々の話に耳を傾けてみると、どうやら隣の村で川の氾濫と土砂崩れが起き、その影響で病気という悪いものが流行り始めているらしい。病気がこの村にも入

          【小説】ある駅のジュース専門店 第32話「笠岐の道祖神」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第31話「山中の廃バス」

           今から一ヶ月ほど前、俺は隣町の山奥にある蕎麦屋へと車を走らせた。もともと「秘境メシ」に興味を持っていたことに加え、テレビ番組でその店が紹介されていたことで行きたいという衝動が膨れ上がり、久しぶりのドライブとなった。  昼過ぎに家を出たが、山道にはあまり慣れていないので道に迷ってしまい、蕎麦屋に辿り着いた頃にはもう夕方になっていた。予定していた時間よりも遅くなってしまったが、窓に差し込む夕日を見ながら食べる蕎麦や山菜は美味かったし、店員さんの接客も温かかった。俺は美味いものと

          【小説】ある駅のジュース専門店 第31話「山中の廃バス」