【小説】ある駅のジュース専門店 番外編「サラセニアの自立」
私は育ての親の家を出て、山の中まで来ていた。もし今誰かに自分の姿を見られたら、きっと甲高い悲鳴を上げられるか写真に撮られるかされて、食虫植物のバケモノが出たなどと勝手な噂が広まるだろう。人の気配が無い場所でゆっくり休むつもりだったので、とにかく目立つことだけはしたくなかった。
雨が降ったばかりの湿った地面に根を下ろし、からからに乾いた全身に水分を送る。これまでは整った環境が既に作られていたが、もう世話をする者はいない。これからは、自分で生き延びていかなくてはならないのだ。