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【小説】ある駅のジュース専門店 第39話「話し声」
これはある年の八月、母と買い物に出かけて家に帰ろうとしていた時の話。
町中からバスに乗り、自宅に一番近いバス停で降りてしばらく歩くと、背の高い木々に囲まれた石造りの大きな鳥居が見えてくる。
そこは「開戸神社」という神社で、日本神話に登場するイザナギの杖から生まれた神様を祀っているらしい。神社のそばには、かつてこの地域が村だった頃に入り口を守っていたという神様の石碑が建てられている。その石碑の
【小説】ある駅のジュース専門店 第32話「笠岐の道祖神」
いつこの世に生まれたのか、定かではない。
気づけば見知らぬ人々が、地に両手をついて口々に叫んでいた。私の傍らには、大きな石を削って整えた、なんだかよく分からないものがどんと建っている。
「お願いします……どうか、どうか」
「わしらの村を守ってくだせぇ」
「病気が村に入らんように!」
ムラ? ビョーキ? いったい何を言っているんだ。人々の話に耳を傾けてみると、どうやら隣の村で川の氾濫と土砂崩れ