マガジンのカバー画像

#極短編小説

74
運営しているクリエイター

2020年1月の記事一覧

同じ過ちはしない

同じ過ちはしない

俺には姉がいる。
といっても半分しか血がつながっていない。異父姉弟という事だ。
俺が生まれた後、当時小学生の姉に、父が性的な虐待をした。それが問題になって両親は離婚した。その後、父は3人の娘を持つシングルマザーと再婚したそうだ。

そんな事情を知ったのは俺が大学生の時だった。その頃の俺は小学校の教師を目指していた。
知った後、俺は教育実習に行くことが出来なかった。「父みたいになったらどうしよう」と

もっとみる
かみひこうき

かみひこうき

長女と次女はよくケンカをする。
10歳と7歳。
最近長女は大人びて、ままごとなどしたくないようだ。
次女はそれが許せないらしく、気にくわない様子だ。
だから、次女がいつもケンカをしかける。
大抵の場合、長女は相手にしない。
すると次女は手を出して反抗するのだ。

見かねた私は次女を諭す。
けれど、すぐには「ごめんね」が言えない。
しばらくして、手紙を書いて飛行機にして飛ばしていた。

「しね」

もっとみる
思い出の味

思い出の味

カレーを嫌いな子供を探す方が難しいだろう。ご多聞に漏れず、私達姉弟もそうだった。学校の給食の献立にカレーを見つけると、ワクワクしたものだ。
給食もそうだが、やはり母の作るカレーが一番好きだった。それは弟も同じで、おかわりを2人で争うようにしていた。

昨夜、夢を見た。夢の中の私達は子供で、一緒にカレーを食べていた。
「ねぇちゃん。お母さんのカレーは一番おいしいね」なんて事を弟は言っていた。あまりに

もっとみる
未来の会話

未来の会話

「そもそも上下関係に縛られているような挨拶はダメだ。後輩が先にしなきゃいけないとか、声は大きくとか、暗黙の決まりみたいなものはいらないのだよ。義務みたいになると気持ちが萎えちゃうだろ?」

「挨拶は、見知らぬ物同士が共存するために最低限度なマナーじゃないですか。挨拶などの小さな積み重ねが、信頼関係を築き上げると僕は思います」

「おいおい。弁解するんじゃないよ。お前のためを思って言っているのだ。人

もっとみる