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【青年海外協力隊ベトナム日記 2006〜08】 第11話 ベトナム式新年

ベトナムの正月は、日本のように1月1日ではなく、テトと呼ばれる旧正月(1月下旬~2月中旬。年によって違う)で新年を祝う。
ここベトナムでは日本の正月の1月1日は特に意味のない普通の1日だ。

しかしこのテトは違う。

ベトナム人は皆1週間くらい前からそわそわと浮き足立ち、ただでさえはかどらない仕事が全く手に付かない様子。
この時期は人が大移動するため交通機関は麻痺し観光地の宿は予約で埋まり、あちらこちらで酔っ払いが続出し、町中が花で埋まり、テトを迎えるための買い物に走り、どさくさにまぎれてテト価格で値段が跳ね上がり、もう国を挙げてのお祭り騒ぎ。
その盛り上がりっぷりは日本の年末年始以上だ。

そのテトの時期に私の勤務する大学でも新年を迎える式典が行われた。

式典の前日にテレビ局が私の取材に来た。

この町ではまだ外国人が珍しいので、今までも何回か地元の新聞やテレビの取材を受けたことがあった。
だから今回もまたいつものように軽く一言二言答えるだけなのだろうと思って油断していたら、実はテトに全国放送される番組とのことで、VTV(ベトナムのNHK)スタッフが照明や機材などを大量に持ち込み、司会者も台本などを用意していていつもの軽い感じとは大違いだった。

撮影が始まり司会者が私にインタビューする。
私、言葉に詰まる…撮りなおし…。
こんな真面目な撮影だったなんて。

とても緊張して何回もNGを出したがなんとか撮影が終了した。
私のつたないベトナム語のトークとその後ろで学生たちが楽しそうに歌を歌うというベタベタな内容だが、正月らしい平和な感じに仕上がったはずだ。
付き合ってくれた学生くんたちありがとう。
局の人たち、何回もNG出してすみませんでした。


そして式典当日。

この学校はこの省唯一の大学の上、テト休み直前ということが重なって朝から大いに盛り上がっている。
たくさんの来賓に加え、新聞記者、テレビ局、写真屋なども大勢来て、まさに町を挙げてのお祭り騒ぎだった。

正月ということで私は日本人らしく着物を着てこの式典に出席した。
この町のベトナム人は実物の日本の着物を見るのが初めてだったようで、私と記念撮影をするために長蛇の列ができてしまうほどの盛況ぶりだった。
着物がこんなにもウケるとは思っていなかった。
かさばったけれど無理して日本から着物を持ってきて本当に良かった。

みなさんとの記念撮影が一段落した頃に、先生から食事に誘われた。
しかもこの日ばかりはなんと車での送迎付だった(この町では、車は一部の大金持ちか政府関係者しか乗れないほど珍しい)。

そして町の中心部にあるきれいな店の一番奥のきらびやかな部屋に案内された。

そこにはすでに偉そうな方々が集まっていた。
聞いたら、省の主席、人民委員会の幹部、教育局の局長、大学の学長、その他この省の偉い人たちが勢ぞろいしていた。

そんな中に坊主頭の変な日本人が着物で登場するというシチュエーションが、すでに酒を飲んで盛り上がっている彼らの興味を引かないわけがない。
ということでベトナム人お約束の、恐怖の一気飲み大会が始まってしまった。

とりあえずジョッキのビールを5杯くらい一気飲みさせられ、その後も彼らは出てくる食事にはほとんど手をつけずに酒を飲むわ飲むわ。
私は普段はあまり酒を飲まないのだが今日は祭りなのでまあいいかと思い久しぶりにかなり飲んだ(飲まされた)。

しかしベトナム人は酒を飲むときにいつも一気飲みをするから絶対早死にする…、と思っていたら隣で70歳のおじいさんが普通に一気飲みをしていた…。
なぜこんなに元気なのだこの人たちは?ベトナム人ってすごい…。
日本では最近は学生ですら一気飲みなんてしないのに…。

その後のことはよく覚えておらず、翌日気が付いたら無事に自分の部屋のベッドの上だった。
反省…。

続く ↓

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