【美術展2024#55】ポール・ケアホルム展@パナソニック汐留美術館
会期:2024年6月29日(土)〜 9月16日(月・祝)
名作椅子で有名な織田コレクションを元にした展覧会。
今年は日本橋高島屋でも織田コレクションの名作椅子展があった。↓
ポール・ケアホルムの椅子やベンチは多くの美術館・博物館で用いられている。
特に目にする機会が多いのは《PK80》だ。
PK80
デザイナー:ポール・ケアホルム
発表:1957年
メーカー:FRITZ HANSEN
価格:¥2,923,800(2024年7月現在)
私の【美術館の名作椅子】マガジンでも、もはやお馴染みの名作中の名作。
ざっと挙げただけでも、東京国立博物館本館、東京都現代美術館、国立新美術館、サントリー美術館、京都国立博物館、MOA美術館など、その他多くの美術館・博物館で採用されている。
低い座面と固い座り心地が特徴で、どんな場にも自然に馴染みながら空間を美しく彩る魔法のベンチだ。
展覧会は建築家の田根剛氏が会場構成を手がけているが残念ながら撮影不可。
展示台の上に椅子を並べて「椅子」というよりも「作品」として見せている。
そのおかげで視点が高くなり通常椅子を見下ろす角度からは見えない部分の構造や細部の工夫がよく観察できた。
北欧、特にデンマークというとハンス J. ウェグナーのような木工家具がまず思い浮かぶがポール・ケアホルムはそれらとは一線を画す。
コペンハーゲンの美術学校時代にはそのハンス J. ウェグナーのもとで学び、卒業後FRITZ HANSENに入社。
その後独立し、スチールの名作を次々と発表した。
年代順に展示されるその変遷を辿ると試行錯誤が手に取るようにわかる。
中には構造的に無理があるようなデザインもあったり、いまいちブサイクなデザイン(私感)もあったりと、人間味が感じられるのも面白い。
《PK80》や《PK22》のような完璧なモデルだけではなかったんだなあ。
いくつか撮影可の部屋があった。
《パントンチェア》盗作騒動の元になったアイデアスケッチ発見。
確かに形状はよく似ている。
パントンは1950年代後半からデザインを考え始めたようだが、ケアホルムのアイデアスケッチは1953年となっている。
シンプルといえばシンプルな形状なので知らずとも似てしまうということもなくは無いだろうが…だけどねえ。
《ルオー・ギャラリー》ではケアホルムの名作椅子たちに自由に座れた。
FRITZ HANSENから現行モデルの提供を受けているのだろう。
個人的には見た目も座り心地も《PK22》が圧倒的に好きだ。
この横から見たストイックなまでの薄さとか緊張感がたまらなくかっこいい。
PK22
デザイナー:ポール・ケアホルム
発表:1956年
メーカー:FRITZ HANSEN
オーラレザー 価格:¥822,800(2024年7月現在)
ポール・ケアホルムの代表的な椅子。
ミース・ファン・デル・ローエの《バルセロナチェア》をオマージュしているとのことだが、個人的には《バルセロナチェア》よりも《PK22》の方が大きさも座り心地もシルエットも好みだ。
国立新美術館には《PK80》とともに《PK22》も多数設置されている。
あの佐藤可士和氏もポール・ケアホルムを多数愛用しているというのは有名な話だ。
椅子好きの私としては楽しみにしていた展覧会だった。
ポール・ケアホルムは多くの美術館・博物館に置かれているので名前は知らずとも実際に座ったことがある人も多いはずだ。
そしてケアホルムに限らず美術館・博物館では近代デザイン史上の名作椅子が実際に座れる什器として置かれていることが多い。
お出かけの際にはぜひ私の【美術館の名作椅子】を参考に名作椅子を楽しんでいただきたい。(宣伝)
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