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日本のサンタシステム

あっという間に今年もあと1か月。早速、あらゆる方面で「終わってない!」「やってない!」と叫び声を上げながら、あたふた走りまわっている今日この頃。しかも12月の我が家は、夫、次男、クリスマスと3週連続お祝いイベントが続くので、とにかく予定過多である。ちゃんと精査していかないと、同じメニューを作ったり、プレゼントを手配し忘れたりしそうなので、いつも事前の計画を心がけている。まぁ、私の誕生日なんて、誕生日自体を忘れら去られていたけど(恨み節)。

その中のひとつが、クリスマスプレゼントである。子どもたちには、「サンタへの手紙は今週末が締め切り」と伝えてある。なぜなら、君たちのサンタは、楽天スーパーセール期間中にプレゼントを用意したいからだ。そしていつも、「サンタはAmazonか楽天に載っている商品しか持ってこない」とも伝えている。玩具業界や出版業界に何のコネのない君たちのサンタは、絶版や完売の品は用意できないからだ。

こんな条件も嬉々としてのむ子どもたちを見て、今年もホッとしている。特に兄は、そろそろサンタの正体に気づくかもしれないお年頃だが、今年はサンタを労うためにコーラを置くと宣言しているので、まだ大丈夫そうだ。

しかし、兄が思い描いているサンタは、トナカイが引くソリに乗って、鈴を鳴らしながら夜空を飛んでやってくるサンタではない。クロネコさんのような、はたまた飛脚さんのような、短時間でいかにたくさんの荷物を届けるか、ということに精を出す姿が凛々しい、あの姿を想像しているのだ。

きっかけは小学2年生のとき。「サンタさんのソリはどうして空を飛べるんだろう?フィンランドから来るのはすごい時間がかかるし、燃料もどうするのだろう?」と聞かれた母。穏やかな顔を心がけるも、心中は最大級に慌てふためいた。兄は理科好きの理論派。ドリーミーなぼんやりとした回答では、絶対に納得してくれない。ヘタをすれば、納得できなかったところから、親が怪しいという嫌疑をかけ、サンタの正体がバレる端緒になってしまうかもしれない。自分のできる最大級の速さで考えを廻らせた結果、

「フィンランドのサンタ協会に認められたサンタさんが、日本にもいるんだよ。幼稚園のクリスマス祝会に、いつもサンタさんが来てくれたでしょ。ああいう人。24日の夜にたくさんのサンタさんが手分けして、手紙をくれた家々にプレゼントを届けに来てくれるのよ。日本の空は狭くて、空を飛ぶのはなかなか難しいだろうから、もしかしたら車かもしれないねぇ」

と、話した。リスクヘッジのために、サンタが空を飛ぶ夢は壊してしまった。すまん。だが、この話が妙にハマり、

「そっか!トナカイで空を飛ぶのはあり得ないよね。宅急便の人みたいにみんなの家を回ってくれるのか。一晩で回るのは大変だね!」

と、言って、納得してしまったのである。

次の年の12月、サンタに関することは一切話題に上らなかった。その代わり、窓に一晩中、配達し続けるサンタを労うメモが貼ってあった。12月24日の真夜中、寒い中。サンタは普段、街中で見る宅配業の方々のように、汗水垂らして日本の子どもたちにプレゼントを配ってくれている。日本はそういうシステムのある国なんだ。そう思ってしまったようなのだ。

クリスマスの朝、1階の窓の前に、お手紙どおりのプレゼントが届く。我が家には煙突がないので、「窓から入るしかないから、鍵を開けておかなきゃ」というのは、まだ幼稚園の頃に受けたご指摘。それ以来、サンタがプレゼントを置くのは、鍵が開いている窓の前と決まっている。一晩中開けておくわけにはいかないので、25日は兄より先に起きて開錠しなければならない。

子どもたちが寝静まったあと、本当のサンタはゴソゴソと隠し場所からプレゼントをひっぱり出してくる。ラッピングも、サンタからの手紙もお手製。手紙は筆記体で書いているから、筆跡から足はつかないはずだ。それらを例年どおりにセッティングすれば、あとは次の日、早起きするだけ。毎年骨が折れる作業だが、残り少ない「サンタを信じる期間」が1年でも延長されるのならば、お安い御用だ。今のところ寝坊もない。あとはコーラを飲み干せば、今年もバッチリかな。

色々ある2020年。今年のクリスマスは、兄が思い描く日本のサンタシステムが無事に機能するような、平和な夜を迎えられたらそれで十分だ。今年も勝手にサンタ仕事を仰せつかることができて、感謝。


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