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お月見とおだんご

静かな夜。天頂近くで煌々と光る中秋の名月。あまりにも明るくて、ベランダの床に、窓のへりに座り込む自分の影が映る。本当は、出始めの大きくてぼんやりとした月の方が風流な感じがして好きなのだが、その時間は必死でおだんごを作っていたので、お月見どころじゃなかった。

今日は朝から雨が降っており、まさか、こんなに素敵なお月見ができるとは思ってもみなかったのだ。元々だんご粉は家にあったので、四の五の言わずに作るつもりでいれば良かったものを、面倒に思ったことを天気のせいにしたもんだから、月のうさぎが嫌味なことをして出てきたに違いない。いや、イヤミになったのは兄弟であった。

「きょうはおつきみのひなんでしょ?おだんごはいつたべるんだっけ?」

「今日は中秋の名月なんだよね?給食でもおだんごが出たけど、みんな家でもおだんご食べるらしいよー」。

はいはいはい、わかったよ。今から作りますよ。

今夜はひやむぎにしようと思い、グラグラ沸かしていた大きな鍋の横に、慌ててもうひとつ鍋を出し、お湯を沸かす。その間に急いでだんごをこねて丸めなければ。ちなみに、白玉風の柔らかだんごがお好きな方は、水分と一緒に木綿豆腐を入れてこねると、もっちり感が愉しめるかと思う。我が家はもっちり好きなので、昨日の味噌汁に使った残りの木綿豆腐を投入し、ガッシガッシ握りつぶして揉み込んで(これが結構ストレス解消になる)、耳たぶくらいの柔らかさになったら生地の完成。

ひやむぎの番をしながら、生地を丸めて茹で上げる。勢いでだんご粉ひと袋プラス木綿豆腐半丁を投入してしまったので、結構な量。2回に分けて茹でねばならなくなった。ひやむぎの方も、塾からの帰りが遅い兄のために2回に分けて茹でる手筈にしていて、ふたつの鍋とふたつのボールとふたつのザルと、待機させるボールとザルと…で、キッチンがいっぱいになってしまった。兄弟のお腹と、おだんごに対する渇望は無事に満たすことができたが、後片付けが大変のなんのって。気づけばキッチンに2時間立っていて、東の空のぼんやりお月さまを眺めることなど、到底できなかったというわけだ。

しかし、南の空高くにある月も美しい。大人ですから、夜も更けたこれからお月見タイムといきましょう。

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