49日目 リハビリのお勉強

杖を手に入れたとはいえ、車椅子はまだ必要だった。買い物や洗顔、歯磨きは両手が空いていないと不便なのだ。杖を持っていると難しい。ただ緊急じゃないときはリハビリのつもりで、積極的に廊下を歩き回ろうと思う。

午前中はNHKの朝ドラを見ながら左手首のリハビリをする。普段装着しているスプリントを外して、右手でサポートしならがすこしずつ曲げ伸ばしをしていく。シャワーがない日は、看護師さんにベッド上で傷を洗ってもらう。日替わりで担当看護師さんが変わるので、いろんな看護師さんが洗ってくれる。骨盤に刺さっているピン周りを泡で丁寧に洗って水で流してくれるのだが、たまに水がお尻側に流れ込んでしまうハプニングがあったりするが、それもまた楽しい。

さっぱりしたあと、渡り廊下の窓辺のソファまで歩く。ナースステーションも一周して、看護師さんの仕事を眺めたりする。

昼食は焼き魚。嬉しいカルシウム。食事は怪我の回復のために重要だ。栄養をとることを意識するようになった。

歯磨きのために車椅子に乗ったついでに、病院の外に行ってみることにした。付き添いはない。大丈夫、私には右足と右手がある。外は暖かく、風がここちよく吹く。花壇のラベンダーの周りでは忙しそうに蜂が蜜を集めている。ユリの花は、前に来たときよりも増え、華やかだった。木陰の下で外の空気を満喫して、病棟に戻る。

音楽を聴いて左手首のリハビリをしているうちに、ウトウトしていた。目が覚め、頭がはっきりして5分後にいつものOTさんが、様子を見に来てくれた。OTさんは作業療法士だが、今日は理学療法リハビリの分野、歩行訓練の様子を確認しに来たという。渡り廊下の窓目のソファまでの往復をしながら、作業療法、理学療法、言語聴覚療法の違いや特徴について教えてもらった。理学療法は歩行など体の大きな動作に関する分野、言語聴覚療法は首か上、嚥下や脳機能に関する分野が多い。作業療法ではそのどちらとも重なる部分が多く、担当OTさんも時々理学療法的なこと、言語聴覚療法的なことをすることがあるらしい。(私の場合は骨折した左手首周辺を見てもらっている。)もともと作業療法は精神科で行われていた歴史があるという。手で細かい作業をする訓練などと、深い関わりがあることを考えると少し納得する。

OTさんが帰り、自由時間になったので、その後も歩き回ったり手首のリハビリのつづきをしたりして過ごした。夕食はすきやき。

外出の予定が固まった。当日の装備や交通手段、服装など、具体的なことを考え始める。コンサートには職場の関係者も来てくれると、同じ職場に勤めるお母さんが教えてくれた。久しぶりに会える。こんなボロボロになっても見捨てず応援してくれた皆さんに、会える。楽しみと、ほんのすこしの緊張。

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