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ラララ(短編小説『ミスチルが聴こえる』)
テレビをつけると、いつも出てくる芸能人が熱弁している。何を語っているのだろうと聞いていると、自分が乗り回しているフェラーリの話だった。僕はテレビの電源を消した。
コンビニに行くと、アイスケースの中に中学生が入って踊っていた。それを動画に収めて喜ぶ親。僕はその様子を写真を撮った。誰かが呼んだであろう警察が来て、容疑を否認する親子をよそに、僕は写真を警察に見せた。警察は親子を連行した。
満員電車に乗っていると、近くで女子高生に痴漢をしているおじさんを見つけた。僕は携帯でアラームを鳴らした。みんなが僕に注目している隙に、女性はそのおじさんから離れた。
ラーメン屋さんに寄ったら、食券じゃなくて注文制だったから怖くなって、仕方なく出てきた。
地元のカラオケ大会に挑戦するという親父の歌を聴いていると、僕も少しくらい言葉が出せたらいいなって思う。
母は僕の面倒を見てくれる。それが申し訳ないと思う一方で、母がいないと生活に支障が出ることも知っている。だから僕は母の日にカーネーションとアイスクリームを買った。母は普通に喜んでくれた。
妹がギターの弾き語りをしている。僕はなんとなくそれを聴いている。なんの曲だろうと気になっていると、妹は察してくれたのか「ミスチルだよ」と答えてくれた。でも、僕が知っている曲ではなかったから首を傾げてみると、「ラララって曲だよ」と教えてくれた。
ららら。ららら。言葉じゃないけど、自然と歌として成り立つ。ららら。ららら。
「ら、ら、ら」
僕が口ずさむと、妹は「すごいね」と嬉しそうにしてくれた。僕の心もほんわかして、心地よかった。
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