マガジンのカバー画像

アオマスの小説

159
どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。
運営しているクリエイター

#スキしてみて

階段

 目の前にある階段を下るか、それとも上るか。  上には大好きな人がいる。下にはじぶんを育…

蒼乃真澄
1年前
14

描かれた夢の先で(6)

 翌週の土曜日。僕は施設に向かい、いつも通り母の表情を見る。今日も眠そうだが、穏やかな笑…

蒼乃真澄
2年前
4

描かれた夢の先で(5)

「まさこにとっての『夢』は、秀雄さんが戻ってくることだったのかなって思うの。だから『夢』…

蒼乃真澄
2年前
7

描かれた夢の先で(4)

 僕が三歳のとき、当時の父、秀雄は消防士をしていた。もともと運動神経が良かった上に、人を…

蒼乃真澄
2年前
9

描かれた夢の先で(3)

「まさこは元気?」  翌日。僕は朝から母の妹である遠藤よしこさんの家へ向かった。よしこさ…

蒼乃真澄
2年前
13

描かれた夢の先で(2)

 ある日。それは日本中を焼き尽くすような太陽が、ようやく落ち着きを取り戻した頃だった。そ…

蒼乃真澄
2年前
7

描かれた夢の先で(1)

 壁に飾られたその絵に描かれた真実を、僕は受け入れることができるだろうか。  母が介護施設に入ってから三ヶ月が経った。僕は毎週土曜日にこの場所を訪れては、母の体調を確認する。母はいつでも少しだけ眠たげな表情で僕を見つめて、戯けたことばかりを言っている。 「わたし、今は花束を持ったお嫁さんなの」  母の手には、造花を束ねたものが握られている。僕はしっかりとした笑みを作ってあげて、母を褒めた。 「そうなんだ。綺麗なお花もらえて、よかったね」  嘘か誠か。虚実か真実か。そんな難し

『落日』 (2000字のドラマ応募作品)

「俺、お前の分まで頑張るから」  日が落ち始める夕暮れの空の下、僕と真島は二人で花壇の縁…

蒼乃真澄
2年前
12

ALIVE

 僕の一つ前の机には、一輪の花が入ったガラスの花瓶がポツリと置かれている。造花のように枯…

蒼乃真澄
3年前
4

雨のちお守り

 しとしと降る雨がアスファルトを刺激して、ビショビショにさせて鼠色から真っ黒に染めていく…

蒼乃真澄
3年前
3