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ミスチルが聴こえる(短編小説)

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Mr.Childrenの曲を聴いて浮かんだ小説を創作します。 ※歌詞の世界観をそのまま小説にするわけではありません。
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君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)

君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)

 

 僕の好きな夏が終わってしまった。同時に、学校が始まってしまった。夕暮れも悲しくなる季節が来る。海を見ても虚しくなる季節が来る。冷たい風が吹き、寒くなるこれからが、僕は嫌いだ。

「何聴いてるの?」

 放課後。君はイヤホンをした僕の肩を叩いて、訊く。

「言っても知らないよ、君は」

 それでも君は僕を離さない。

「いいじゃん、教えてよ」

 小さな子供みたいにせがむ君。仕方なく、僕は教

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イノセントワールド(短編小説『ミスチルが聴こえる』)

イノセントワールド(短編小説『ミスチルが聴こえる』)

 堀くんは、自ら作り出した世界を持っていた。僕らには到底理解できない、堀くんだけの世界。

 休み時間中も、堀くんは一人で自分が作った世界に没入していた。最初は他の生徒が遊びに誘い、次は先生が外で遊ぶように言ったけど、堀くんは銅像みたいに動かなかった。

「僕は、この世界でヒーローなんだよ」

 あるとき、堀くんは僕に『世界』の中身を教えてくれた。僕は小さいながら、「何言ってるの?」と突き放すよう

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