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ミスチルが聴こえる(短編小説)

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Mr.Childrenの曲を聴いて浮かんだ小説を創作します。 ※歌詞の世界観をそのまま小説にするわけではありません。
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#恋

通り雨(短編小説『ミスチルが聴こえる』)

通り雨(短編小説『ミスチルが聴こえる』)

 ビルの入り口。僕は突然降ってきたゲリラ豪雨を眺めながら、先ほど買った缶コーヒーを飲んでいる。生憎の大雨。しかし、必然的に降る恵みの雨。考え方は様々だが、この後遊びに出かけようとしていた誠司はうんざりした顔をしていた。
「ひどい雨ですね」
「そうだな」
「全く、これから渋谷行こうとしていたのに。これじゃ行けませんよ」
「お前は若いな。僕はもう、渋谷みたいな喧騒した街に行く気力は微塵もないよ」
 誠

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シーソーゲーム(短編小説『ミスチルが聴こえる』)

シーソーゲーム(短編小説『ミスチルが聴こえる』)

「ねえ、祐二」
「何?」
「私のこと、好き?」
 始まった。いつもいつも、里英は僕を試す。自分の内部を満たすためなのか、それとも愛を感じたいのか。
「好きだよ」
「じゃあ、私より可愛い女の子が現れても、見向きもしないで私を愛してくれる?」
「僕は見た目で里英を選んだわけじゃないから。内面が好きだから付き合っているんだよ。だから、浮気なんて絶対しない」
 すると里英は「そっか」と澄んだ声で言って、に

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