シーソーゲーム(短編小説『ミスチルが聴こえる』)
「ねえ、祐二」
「何?」
「私のこと、好き?」
始まった。いつもいつも、里英は僕を試す。自分の内部を満たすためなのか、それとも愛を感じたいのか。
「好きだよ」
「じゃあ、私より可愛い女の子が現れても、見向きもしないで私を愛してくれる?」
「僕は見た目で里英を選んだわけじゃないから。内面が好きだから付き合っているんだよ。だから、浮気なんて絶対しない」
すると里英は「そっか」と澄んだ声で言って、にこりと笑った。
「ねえ、里英」
「何?」
「僕のこと、好き?」
まただ。いつもいつも、祐二は私に確認する。もちろん、私だって会うたびに気にしているから仕方ないけど、男が気にするって、ちょっと不気味かも。
「好きだよ」
「じゃあ、僕よりもイケメンが現れても、見向きもしないで僕を愛してくれる?」
「もちろん。私は祐二の中身が好きだから」
すると祐二は「ありがとう」とお礼を言って、白い歯を見せた。
「ねえ、祐二」
「何?」
「祐二って、私が誰かにさらわれたら助けに来てくれる?」
急にどうしたんだろう。里英は時々、よくわからないことを言う。
「うん。助けに行くよ」
「ってことは、祐二は勇敢だね」
「まあ、恋人だから当然だよ」
「恋ってすごいよね。だって、自分の身を危険に晒してまで誰かを助けたいって思えるんだから」
また、試したのか。僕は苦笑して、「そうだね」と言った。
「ねえ、里英」
「何?」
「僕の前では笑顔でいてほしい」
何を急に言い出したのかと思ったら、結構な無茶振りだ。私は心でため息を吐いて、だけど彼に笑顔を見せる。
「いつも笑顔でいるつもりだけど」
「そうだね。僕は里英の笑顔が好きだから。その笑顔、守りたいな」
「あ、ありがとう」
裕二はたまに大胆なことを言う。その言葉に愛が含まれているのか、私にはよくわからない。
僕は、里英のことが好きなのかな?
時々疑問に思うことがある。毎度会うたびに愛を確認し合って、僕らしくない言葉を吐いて。
だけど、里英のいない生活は想像できなくなっている。僕は里英の愛を確認しないと、きっと腐ったリンゴみたいにボロボロになってしまうだろう。
私は、祐二のことが好きなのかな?
ふと、考えてしまうことがある。毎回会うたびにお互いの愛を見せ合って、それを受け取り合っている。
それが、幸せだとしたら。私は相当恵まれているのかもしれない。たとえ、偽物の愛だとしても。
私は、祐二のいない世界では生きていけない気がする。
「ねえ、里英」
「何?」
「好きだよ」
僕は今日も里英を愛するように気持ちを整える。
「私も好きだよ」
「ありがとう」
私は今日も祐二に愛を送る。それが、生きる意味になっているから。
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