チョコの通訳現場で訳せなかった「アレグリア」の解説
通訳現場で滑ってから1年経った。その悔しさが、未だに残っている。
2023年2月12日、ヴェンキのレシピ開発責任者GBさんとチョコレートジャーナリスト市川さんのトークイベントで、ヴェンキのアイデンティティとチョコレートについて日伊通訳を担当させていただいてから訳せなかった言葉がずっと頭に残っていた。この1年間、Allegria (アレグリア)について深く考えた。
チョコレートの話だけではなく、カカオの歴史、ピエモンテの話、チョコレートの中から生まれる感動とアモーレ。1時間半のトークは楽しくて、短いようにも長いようにも感じた。
下準備と事前の打ち合わせ、ヴェンキジャパンの担当者からのサポート、周りの関係者も含めて心強いと思った。今思い出すと、この「思った」のは「思っていた」に変わる。難しい話と複雑な文法のことではなく、見た目は可愛くてシンプルに感じるアレグリアという言葉は、想像以上に倒せない敵だった。
この記事ではアレグリアについての解説をしてみたいと思う。調べれば調べるほど、奥深くてわからなくなる可能性もあるかもしれないけど、最後まで付き合ってくれれば、心強い。
1年前に書いた内容はこちら。
わかるような、わからないような説明になってしまう。日本語の「喜ぶ」に近いけど、日本人とイタリア人の間に感覚が大きく変わる。「喜ぶ」という言葉を使っていてもそこまで違和感がないかもしれないけど、細かく分析して近づけば近づくほどその違いがわかる。
そういうことで、まずはイタリア語での説明を見て考えてみよう。できるだけイタリア人のような感覚で訳すと、日本語の「喜び」という単語が1回しか出てこない。
アレグリアは、満足感や上機嫌な心の状態であり、複数の人が一緒に共有する場合でも、活気に満ちた、しばしばお祭り気分や騒々しい方法で表現される。それは習慣的な状態である可能性もある。アレグリアという単語は、感嘆詞 (allegria! allegria!) としても使用でき、喜びを表現したり、ユーモアを誘発したり、小さな事故を良い願いに変えたりすることもできる (ワインをテーブルにこぼしたときや食器が割れたときなど) 。2. 視覚や聴覚に心地よい影響を与える物事の活気も陽気さと呼ばれることもある。
喜びを表現したりという日本語の感覚に少し近くなった。ニュアンスはまだ達成していない。
ヴェンキのレシピ開発責任者GBさんによると「毎日、好きな現場で好きな人たちと、好きな仕事をやるだけで、allegriaだ。知らないうちに笑顔になる。朝起きるだけで笑顔になる」だった。ここで「好きな仕事をする / 好きな仕事をするだけで喜ぶ」というニュアンスが合わないことがないけど、イタリアに対するアレグリアが消えてしまう。完全に日本のモードになる。
Allegria → 喜びという訳は便利でなんとなく気持ちの表現になるけど、ピエモンテ人としてヴェンキの情熱を見て感じるのは喜びではない。満足感と上機嫌な心の状態に加えた活気から生まれる自然な笑顔と浮き足立つという最高の気分。
このアレグリアから生まれる雰囲気はカラフルな毎日ということで、ヴェンキのパッケージはいつも明るい。心で感じている気持ちは作っているチョコにもパッケージにも移るに間違いない。
おそらく、日本語だけではなく他の言語でも同じことになるということで、英語文ではAllegriaだけ、訳さない。そのまま使う理由はイタリア人の命に関わるエネルギーを消したくない、知ってもらいたいからなのだ。
日本でもアレグリアという言葉だけではなく、その気分と生き方も広がったら、朝は起きる前から既に笑顔になっているかもしれない。たった一つの単語にこんな奥深い意味が隠されているなんて、通訳現場でこの言葉に殺される理由が分かった。当時、Allegriaを聞いてパッと出てこなかったけど、今よく考えたら大好きなヴェンキのトークイベントにいただけで、僕がアレグリアだった。
ではでは。みなさん、アレグリア!!
Massi
みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。