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西浦博 ・川端裕人『理論疫学者・西浦博の挑戦―新型コロナからいのちを守れ!』(Kindle版)中央公論新社 (2020/12/8)

まさかこんな状況になるまで政府が必要な対策を取らないとは、想定外でした。(>_<;) 不覚

私は新型コロナについては素人ですが、世界保健機関(WHO)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のホームページの内容くらいは理解しています。テレビやネットに溢れるデマやトンデモ理論の類にも引っかからないように注意してきました。

「感染症は感染経路を遮断すれば確実に伝播しなくなります…」

岩田健太郎『丁寧に考える新型コロナ』(Kindle版)光文社(2020/10/30)より(新型コロナについて知りたい方にはこちらがお勧め)

第一波での緊急事態宣言で、7割の接触削減だと2ヵ月、8割の接触削減なら1ヵ月で新型コロナの感染を抑え込めることが実証されました。(日本の第一波程度の状況であればということです)本書の著者、「8割おじさん」こと西浦博先生の計算通りだったのです。

政府の無知ゆえに8割の接触削減目標を7割に緩和してしまい、本来なら1ヵ月で済むところをダラダラと期間を引き延ばしてしまった。政府はこの失敗を教訓にして、もしまた感染が拡大すれば次こそ真剣に感染対策に取り組んでくれるだろう。

人は失敗に学ぶ生き物なのだという思い込みが、私の判断を曇らせていたのでした。(あぁ…)

ところがまだ十分に感染を抑え込めていないのにGoTo強行。これにはさすがに呆れ果て、言い知れぬ不安を覚えました。しかし素人の私はまだこう考えていました。

いくら日本の政治家だって、南北アメリカやヨーロッパ諸国のような壊滅的な被害を黙って受け入れるはずがない。GoToは血迷ったとしか思えないけど、また感染が拡大すれば必ず正気に戻るはずだ。

本書を読んで愕然とました。私は新型コロナの脅威を過小評価していたのです。新型コロナの真の恐ろしさは、新型コロナだけを見ていたのではわからないのです。私たちはこの不都合な事実を認めなければなりません。

新型コロナは、日本政府の理解能力を超えているのです。(^O^;)


何だかわけのわからない物には対応しようがありません。お手上げです。見て見ぬふりをしたり、見え透いた言い訳をしたり、責任をほかの人にになすりつけたり。やれることは限られています。

手遅れになって、もうどうしようもなくなってから、やっと大慌てで騒ぎだすことになります。

ヤバいよ~!(^^;)コマッタ


新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会と新型コロナウイルス感染症対策分科会は、感染リスクが高まる5つの場面をできるだけ避けるよう呼びかけています。


本書は、新型コロナ感染第一波を「西浦目線のドキュメントとしてまとめたもの」で、10月9日に行われた両著者の対談も収録されています。以下ではとくに気になったところを引用し、短いコメントをつけています。


もしかして暇なの。(・・?

今この瞬間にヨーロッパで起こっていることですから、日本でもオーバーシュートが起こると、ICUが足りなくなる事態がありうるということを伝えないと、と思い、資料に【図8】を掲載させていただいたのですが、これを載せることが、ものすごい反対にあいます。まず…若手の厚労省担当者たちが…最初は課長さんが…次に局長さんが…その次に審議官が…最終的には鈴木医務技監から…最後は裏で私に凄んできた審議官から尾身先生に…


NHKも当てにならない。

右裾の部分は密な環境で起こっていますよ、オッズ比が18倍ぐらいですよ、というような話をして、よしこれで伝わったと思ったら、放送ではその、「行動が変われば制御ができなくはない」という話が完全にカットされていました。


官邸あかん…

…さまざまな官邸主導のナンセンスな政策が連発される中で、…


大阪もあかんやん!

…大阪については誤解と拡大解釈に基づいて、結果的に僕が恨まれることになったような気がしています。


東京は、大阪とは違う…

東京都のほうは…「…実は、東京都が感染経路不明と発表している人の中にも、リンクがある人はたくさんいるんですよ」と言うんです。


内閣官房には気をつけろ!

…そういう検討を経ていて変えられるはずがない8割が、緊急事態宣言を承認する有識者会議の前日に内閣官房のどなたかによって書き換えられてしまっていました


尾身先生ガンバレ~!

…それどころか、布製マスクを配ったりしましたよね。あの時に尾身先生は西村大臣にマジ切れして怒ってました。「なんだあれは!あんなことにお金を使うのか」と言って、担当大臣がその場で「すみません」と謝ってましたが。


しっかりしてよ~!

…今でも経済優先の政策を決断する時に「専門家に政策実施の判断をいただく」と言って責任転嫁しつつ有識者会議の役割について言及しています。気付いていただきたいのですが、この「ご判断いただく」のは正常ではないのです。というよりも、情けなくて仕方がない。考えてみてください、「政策の判断をする」のが政治家の仕事です。…自分が腹をくくって決めているという事実を、誰も明確に言えないくらい政権は責任を取れない構造で弱々しい。


政治家のみなさま、もっと危機感を持ちましょう!

…経済産業省の意志が強めに効いた安倍政権は、次第次第に経済重視に傾くことになります。第二波の拡大が他の先進国よりすごく早く、特に英国やフランスなどのヨーロッパを1ヵ月以上の時間差を追い抜いて発生したのは、経済重視の解放プロセスで制御をなおざりにした結果であることは、否定しようのない事実だと思います。


専門家グループから必要な人材を要求してください。内閣官房に任せてちゃダメ!

内閣官房が招聘した経済学者の候補は、マクロ経済の人が多くて、必ずしも数理モデルを扱うような専門家ではありませんでした。…経済との両立を目指すタスクを与えられる計量経済学者を参画させられていない政府の問題なのだと思います。


専門的な知見の軽視が、新型コロナ感染を拡大させている…

…3月10日の専門家会議ぐらいから、厚労省の人が介入してきます。専門家会議の「状況分析」に関する文章の中に、行政の事業でやりたいことも政策課題として入ってくるようになったのです。かつ、最終的な文案を取り仕切るのが厚労省の対策本部の担当者になります。骨を抜きやすくなり、また、政府の意志があたかも専門家の言ったことであるかのように好きに入ってしまうようになりました。


新型コロナ感染拡大は政府の責任で決まり!

…そこに、行政の意向が後から加えられて、大切な部分を捻じ曲げられる。…それに、本当に大事な経済重視の政策は、そういった文書の発出日の前日とかに突如として政府側から提示されます。これはとても卑怯な霞が関の方法ではあると思うのですが、本当に議論しなければならない鍵となる話は、官邸から突如として降ってくる形で専門家にも知らされます。すると「時間切れ」になってなにもできないまま発出される、ということになってしまうのです。


厚労省さん、ダメだよ~!

…それは3月19日だったんじゃないかな。厚労省の担当の事務官が、文書の最終バージョンのところで、提言している政策の一部をマイナーチェンジして、自分たちが入れておきたい政策を支持するように高度な日本語で書き換えていたんですね。伏線には、すでに公になっていますが、無症状者からも二次感染が起こる、という記載が厚労省側の判断で削除された、ということが何件もありました。


政府は備えなさすぎ!(ありえへん)

僕自身はこれまで「感染者が増えた場合の備えがない限り、移動の解禁は困る」と、リスク軽減を重視する立場から発言をしてきました。でもGoToが始まるとなれば、僕たちがいくら「ダメです」と訴えたところで、経済的理由で始まってしまう。だとしたら一歩大人になって開き直り、専門家として何ができるかを考えるしかありません。


エビデンスみっけ!

7月22日にGoToが始まった直後の4連休(7月23~26日)の前後で、観光を理由とした旅行に伴う感染者が地方でどれくらい増えるのかを見たのですが、やっぱりしっかり増えているんですよ。でも増えるということを分かってやっている政策なので、その中で重症の人を減らそうとか流行が悪くなるのを防ぐにはどうしようとか、考えることになります。


本書の「対談 新たな波に立ち向かうために 西浦博 X 川端裕人」「ハイリスクな場所とは?」を読むと、たとえ新型コロナ感染について解明が進んだとしても、政府が抜本的な感染対策を取るのは困難であるという厳しい、というよりも絶望的な現実に気づかされます。

新型コロナの感染が広がってしまえばしまうほど、収束は困難となり、ダメージも大きくなる。これは世界の状況を見渡せばすぐにわかることです。

わかるはずなんだけど…

たとえわっかたとしても日本政府には本当に必要な対策を断行する度量も実力もないのかもしれません。

どう見ても新型コロナのほうが役者が上なのです。

我々は、恐ろしい敵と戦っている…ぐぬぬ

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