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蝉の鳴かない猛暑の日

扉を開けると
湿気と熱気を含んだ、大きな魔物に飲み込まれたような感覚だった。

とても暑い。真夏のようだ。

…と思ったけれど、何か夏っぽさが足りない。
そもそも、何がこれまで夏っぽさを感じさせていたのだろう。
…なんてことを、体温が1.5度ほど上がってしまったような、ホカホカの頭でぼーっと考えていた午後のこと。


「これぞ、晴れた夏の日だ」と感じるものを考えてみる。

“昼間”は

ピカーッとまっすぐに天から照りつける太陽。
真っ青な青空。
モクモク立体的な、白い積乱雲。
鮮やかな緑の木々。
風鈴の音。
蝉の声。
キリギリスの声。


“夕方”は

眺めると熱を感じるオレンジ色の夕日。
ヒグラシの声。
鈴虫の声。


“夜”は

鈴虫の声。
コオロギの声。


…とりあえず思いつくものを挙げてみた。
もっと色々あるような気がするけれど、ホカホカの頭ではこれ以上浮かばなかった。

こうしてみてみると
夏は色々な生き物の声で、本当に賑やかだ。
そして、あらゆる色が、鮮やかだ。

そして
この真夏のような今日に、何か物足りなさを感じたのは
紛れもなく、この「声」の存在だった。


…蝉の声が聞こえない。


だからなんだか、夏っぽさの大きな一部が欠けているように感じたのだ。

そうか、まだ梅雨入りがどうこう、という時期だった。


私は決して蝉が好きなわけではないけれど

蝉の声の聞こえない、まるで真夏のような陽気の日は
なんだか少し物足りなくて、不思議な感覚だったな。


今日は、太陽の光をたくさん浴びた。

自分では生み出せない自然のパワーを吸収しつつ
ジリジリと肌を焼かれ、心地よく疲れた。


今年初めてセミの声を聞く日は、一体いつになるのだろう。



2024.7.4

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