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奏心声音㉑

深夜に耳元で苦しい息遣い
僕はいつ眠りについてしまっんだろう

ふと隣で寝る少女をのぞき込むと
息遣いも荒く 涙を流していた
泣くことも出来ず 助けを求める声を持たない少女

苦しさに1人で耐えていたのかと思うと
僕の心は痛んだ
こんなことを何度繰り返しただろう
前日から体調が悪いことを知っていたのに
なぜ僕は寝てしまったのか

髪を整えることも忘れ
僕は少女を抱えて救急病院に走る
車中て少女は 苦痛に歪んだ顔で僕に笑いかけてくれる
でもその笑顔は涙でにじんでいた

子供が大きくなると
本人からのサインで体調チェックをしてしまいがちになる。しっかり食べているのか。熱は無いか。怪我をしていないか。そんな目で見えることだけを信じ込んでしまいがちだった
内面的な見えない健康チェックがこんなに必要だったとは

医者にかけられた言葉は
「便秘だったみたいですね」
「お腹が痛いとか言ってませんでしたか?」

そういえば 大好きなおやつも アイスも
少女はお腹いっぱいだからと最近口にしていなかった
(ダイエットでもしているのか?)
そんなにも気にいていなかった自分が恥ずかしい
そして情けない

先日友人たちと食育について
語っていたばかりなのに  バランスよく
食物繊維にも気にかけていたはずなのに
本当に情けない自分に朝まで泣いた
(ごめんな……)

軽い気持ちで少女の親代わりをしている僕
声なき 少女と向かい合うことの大変さ辛さを
楽しさに変えたいと
2人で手話を習ったり 下手なイラストで会話をしたり
毎日必ず
夜寝る前にお互いに手紙を書いたり
僕なりに  そんな障害も楽しみに変えてやりたいと

少女の熱も下がり自宅についた僕は
新たな目標ができた

言葉の次は  ……

料理が得意じゃない僕だけど
君のために  頑張ってみようと思う
「食育健康アドバイザー」

今朝まで笑顔を忘れてしまっていた僕だけど
今やっと   笑えるよ

少女がいることで僕の人生も経験もこうやって広がっていく

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