見出し画像

成長を支援するか、辞めていくのを傍観するか

今回は、「キャリア開発」に関するこちらの本の紹介です。
ちょうどこの本のサブタイトルにあるようなことが社内で話題になっていたこともあり、個人的には、サブタイトルに非常に惹かれて購入しました。内容も期待に違わぬもので、かつとても実用的で示唆に富んだものでしたので、印象に残った部分を中心にご紹介したいと思います。

画像1

「キャリア開発」と「儲けること」にある距離感

昨今では多くの企業が「キャリア開発」を人事領域の重要テーマの一つとして掲げていますが、実際には、何をどう取り組んでいいかわからない、更には、企業活動の目的である「儲ける」ことからどうしても距離感を感じることから、単なる研修や自己啓発と同義として捉えてしまっている企業や人事の方も多いのではないかと思います。(まさに私も同類です)
少し整理してみると

企業の目的は「儲けること」
→儲けるためには「成果を出す」ことが必要
 →成果を出すためには、
  「人のパフォーマンスを高める」ことが必要
    =キャリア開発/一人ひとりの成長支援

というロジックが一応成り立つと思いますが、パフォーマンスを高めるための手段として、「キャリア開発」「成長支援」という部分がどうもしっくりこないという方も多いのではないでしょうか。

この本では、こうした点をいくつかの観点でわかりやすく解説してくれています。もちろん、この本ですべてがクリアになるものではないですが、背景にある考え方や世界観を提示してくれているだけでなく、何をどう進めるかの「HOW」を欲しがる人にとっても、比較的受け入れられやすい内容になっていると思います。

「キャリア開発とは他者の成長を支援すること。それ以上でも以下でもない」

まず冒頭に「キャリア開発とは他者の成長を支援すること。それ以上でも以下でもありません」と言い切っています。うん、確かにそうですね。それ以上を期待しすぎてしまう自分もいるのですが、まずは「キャリア開発」の立ち位置を正しく理解することからなのかと改めて認識を新たにしました。

そして、キャリア開発に関するいくつかの「誤解(=私は「言い訳」と解釈)」を提示しています。

・キャリア開発する時間がない
・キャリア開発はわざわざ取り上げるテーマなのか
・キャリア開発はメンバー自らが責任を持つべきで、マネージャーの
 仕事ではない
・誰もが昇進/昇格/高い地位を求めている
・キャリア開発は、ハイポテンシャルな人材のため

うん、これも確かにすべて「あるある」ですね。とはいえ、それに対して自分自身明確な答えをもっていないのも事実。

その上で、特にマネージャーがキャリア開発を行う上で効果的なことを紹介しています。簡単にまとめると以下の通りです。

1.シンプルに、メンバーと話す
2.メンバーのことをもっと知る
3.「これから」を話せる場を
4.「これまで」と「これから」の境界にあるインサイトを活用
5.成長機会を広い視野でとらえる
6.「何になりたいか」ではなく「何をしたいか」を支援
7.アクションを探求するプロセスを支援
8.成長支援を日常に取り込む
9.カルチャーは重要

なんとなく眺めるだけで理解しやすいものばかりだと思います。ここではそれぞれの内容を紹介することはしませんが、特に印象に残ったパートをご紹介します。

シンプルに、メンバーと話す

これは、昨今のリモートワーク下でのコミュニケーション強化の効果的な取り組みとしても紹介されていますが、1回の長い会話よりも、短いカンバセーションの積み重ねが、組織へのエンゲージメントやコミュニケーションの満足度が高まると言われていて、キャリア開発もまさに同様。要は「質より量」ということで、10分でもよいので、より頻度を意識したコミュニケーションを心がけることが効果的です。

「これまで」と「これから」の境界にあるインサイトを活用

「これまで」を振り返りながら、「これから」を話してる中で、その交差点に「インサイト」があるとのこと。確かに、キャリア開発というと、今後のことに目を向けがちですが、これまでの経験を内省したり、フィードバックしたりすることで、自分自身の強みを再認識しやすくなり、自分のやりたいことが見えやすくなる、というのは、私がいま取り組んでいる組織開発の中でも実感しているところです。

成長機会を広い視野でとらえる

ここは、いろいな要素を含んでいますが、前述した「キャリア開発の誤解」にもあるように、どうしてもキャリア開発の目指すべき目標としては、上位の役職や社内の等級を意識しがちですが、そうしたいわゆる「前」や「上」を目指すだけがキャリア開発ではなく、「未来やビジョンに向かう」ことをキャリア開発とここでは定義しています。

また、「ボルダリング」を例えとして引用し、時には、横に移動しながら、場合によっては一回下がってみて違う行き方を探求したり、どういうリスクを取りながら進むか、といった必ずしも直線的に最短距離で行くということを捨てることの大切さも書かれてます。
キャリア開発というと、「転職」という選択肢を目的のように考えてしまうマネージャーも中にはいらっしゃるかと思いますが、今いる場所でも成長する場がある、そうした可能性が広がりそうな機会を探し続けることもマネージャーの役割ということも大切なポイントです。

成長支援を日常に取り込む

最後に、成長支援を日々の仕事に落とし込むことの重要性も書かれています。よくありがちな半年に1回、年に1回といった定期的に「キャリア面談」ではなく、日常からメンバーと話す場を作る、そして、マネージャーだけでなく、様々な人たちがお互いに成長に関わる、という場を探求しながら作ることで、仕事中でメンバーが成長していくことです。
こうしたことを狙いとするのであれば、ある意味、今流行りの「1on1ミーティング」のような取り組みも「やらされ感」ではなく、その場の意味合いもかなり違ってくるのではないでしょうか。

最後の締めの言葉として、
(ここで紹介した)これらの取り組みを一つでも二つでも実践したら、
「メンバーはきっと成長するでしょう。そして事業も成長し、あなた自身もきっと成長するでしょう」とエールを送っています。

この本を読むと、少なくとも「キャリア開発」=「キャリア研修を実施すること」というところから、一歩抜け出せる方も多くなるのではないでしょうか。

この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?