みなさん、組織開発を始めるには今がチャンスですよ!

「組織開発」についてはここでも何度か書いていますが、組織開発を自組織内で進める上での最初のハードルは、導入する目的や大義をどう定めるかです。

まあ当たり前のことなのですが、組織開発のような経営層にはなじみが薄く、一般的にはまだまだわかりづらい取り組みだと余計にこの点でのハードルが高くなりがちです。
誰しも課題感(困ったなーという感覚)がないと、腰が重くなるのは当然なので、組織開発という活動の大切や重要さを何とか伝えたい、と思ったとしても、それを伝えるためには、働きかけをする先の人や組織の課題感と一致させないといけないですよね。


コロナ禍をうまく活用しよう

そうした中で、コロナ禍の今はまさに、組織開発を始めるもしくは広めていくチャンスだと思っています。
日々、感染対策の状況は変わっていってはいますが、首都圏に緊急事態宣言が発令されたことを受け、多くの会社特にいわゆる大企業ではリモートワーク(≒在宅勤務)が働き方の一つとして否応なしに定着することになって約3、4か月。メンバーとのコミュニケーションやチームマネジメントに漠然とした不安を抱えている人はかなり多いのではないでしょうか。(実際に私の周囲でもそうした声をよく聞きます)

だからこそ、今、万人が(というのはやや言い過ぎですが)気になっているチームやコミュニケーションの課題を、「組織開発」という問いに変えて投げかけるには今は非常にいいタイミングです。

もちろん、「コロナだから」というのはかなり荒っぽいもって行き方ではありますし課題感の捉え方は様々だと思いますので、本当に何が課題なのかの見極めは適切に行う必要はあるものの、議論のテーブルに乗らないことには何も始まらないので、言葉は悪いですが「コロナ」という「大義」をうまく使いながら、「組織開発」を進めるきっかけにできる絶好の機会だとも思います。

成果主義(実際には結果主義?)を謳っている会社が、「在宅勤務が広がったことで評価が難しくなった」というやや意味不明な状況(あれ?成果/結果を評価する仕組みがないの?)も聞きますが、ある意味、「コロナ」「リモートワーク」という状況では色々なことを「見直さないと」というモードになっているとも言えます。

今は「信頼貯金」を食いつぶしている状況

リモートワークが働き方のベースとなっている中でも、おそらく、多くのチームメンバーとはこれまで対面でのコミュニケーションを基本にしてきたことによる「信頼貯金」とでもいえるような関係性があったことで、これまではなんとか業務をやり切れている組織、個人も多いと思いますが、いよいよこの状況が長期化することで「信頼貯金」が切り崩されて、新たにどう貯金をしていくか、日々を乗り越えていくか、という課題に直面することになるのだと感じています。

特に、新たにチームに加わったメンバーや、この時期であれば新入社員との関係をどう作っていくかは、相当意識的に取り組まないと、これまでうまくいっていたチームやコミュニケーションがノッキングを起こすことは時間の問題なのでは?と薄々皆さんも感じているところだと思います。

組織開発の進め方

じゃあ、具体的にどう「組織開発」を始めるか、ということになりますが、このあたりは参考になる文献やサイトはたくさんあるので詳細はググってもらうとして、ここでは日本での組織開発を進める上での進め方として、比較的一般的と思われるパターンをご紹介します。

<組織開発の進め方>
1. チームの状態を「見える化」する
2. その結果を元にメンバーで「対話(ダイアログ)」する
3. 何らかのアクションを決める

組織開発の研究で有名な立教大学の中原淳教授が、著書の中で紹介されていた図もあわせてご紹介します。

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※出所:パーソル総合研究所のサイト(「組織開発の探求」中原淳・中村和彦著(ダイヤモンド社)より引用)

ガチ対話とは

ここで、注意したいのは、「ガチ対話」の部分です。
組織開発でよく勘違いされがちなのが、「要は仲良くなればいいんだよね」という理解をされてしまうことです。その裏には、組織開発の関連ワードの一つでもある「心理的安全性」とか「チーミング」といった一見ここ地位の良い言葉の捉え方があり、「仲良くなる」という要素はもちろん大事ではあるものの、本当の意味での「心理的安全性」とは、ネガティブなことや耳の痛いことも「なんでも言い合える」という意味合いです。

多くの欧米企業がこうした点を重視して取り組んでいるのは、それが組織としてのパフォーマンス向上に繋がるからであって、彼らは単に仲良しチームを作ろう、ということを目的にしているわけではないのです。
心理的安全性を一躍有名にしたGoogleの「プロジェクトアリストテレス」の目的も、生産性の高い組織の要因を調査する、ということだと報道されていましたし、ある意味、欧米企業は日本企業よりも生産性とかパフォーマンスにはよりシビアなので、パフォーマンス向上につながるからこそ、本気で取り組んでいるという点は正しく理解しておく必要がある点です。
(このゴール設定や検証方法、KPI設定も取り組みのキモですね)

ダイアログとディスカッションの違い

最後に、組織開発の取り組みにおいてキモとなる「対話」を進める上で留意点です。
基本的には「ダイアログをする」、というスタンスで臨むことが効果的だと思っています。理由としては、おそらく、組織やチームのありたい姿や未来のことをテーマに話をすると、組織のあり方や関係性など、単純に解決できないことがそれはそれでたくさん出てきて(おまけに、他責的になりがち)、「正解がある」前提の「ディスカッション」のスタンスでは解決できないと考えるからです。

なので、まずは正解を求め過ぎずに、なぜそういう結果になっているのか、どういう事象からそう考えたのか?という「Why?」や「解釈」を大事にして、ダイアログを進め、まずはお互いの解釈を共有し合う、ということから始めるのが遠回りのようで、近道なのだと思います。

でも、これなかなか難しいです。特にダイアログの場には自分より役職の上位者がいることがほとんどだと思うので、「メンバー自身が本音を言う」というところまで到達するには時間がかかる、と覚悟して進める必要もあります。メンバーの中には、上位者が言いそうな意見を「当てに行く」ということが癖になっている人もいると思うので、そうした点をいかに取り除けるか、本当の意味での「心理的安全性」を実現できるかが、この取り組みのキモだと信じています。

ということで、組織開発を進めたいけどなかなか進められずに悶々とされている方は、「コロナ禍」という難しい局面を、うまく大義に変えて、今こそ組織開発を進めてみてはいかがでしょうか。
※参考までに、ダイアログとディスカッションの違いが分かりやすく整理されていた表を紹介しておきます。

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出所:ヒューマンバリュー社のサイトより。

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