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プレゼンテーションのテクニック: データ&AI 時代にますます必要となる技能

本記事は、プレゼンテーションの心得、また、Tips に関する記事です。


将来必要となるスキルは何か?

先日、将来に必要となるスキルは何かについて、APECのプロジェクトにアドバイザリーとして参加したという記事を書きました。

このAPECのプロジェクトの議論の中でもあったのですが、プレゼンテーションの技能というのは、今後ますます重要なとなっていくと考えられています。私個人も、プレゼンテーションのスキルは、職種によらず非常に大切な現代人としての必修科目であろうと思います。今回は、ビジネスプレゼンテーションについて書いてみたいと思います。


プレゼンの心得の資料

まず紹介したい資料があります。数年前に社内で行ったプレゼンテーションの勉強会で用いたプレゼンの心得の資料を、Speaker Deckにて公開しています。

イイタイコト革命というタイトルがついています。これは、プレゼンにおいては何よりも大事なことは、イイタイコト。それを伝えることに集中しよう、というメッセージになっています。ここでイイタイコトとは、「貴方が最も聴衆に伝えたいこと」を指しますこれはつまり、プレゼンテーションを行う時においては、伝えたい、そしてそれを聞いてオーディンエスに何をしてほしいのか、というメッセージを掘り下げ、明らかにし、そしてとにかくそれを限られた時間内で伝えることにエネルギーを注ぐように、という内容になっています。原則としては、プレゼンテーションのアドバイスとしてはほぼこの一点のみといえます。ですが、蛇足で、Tips を追加で書いてみます。


準備

準備においては何をすべきか。これも、上記の資料の主題と同じように、プレゼンテーションの準備としてはとにもかくにもイイタコトをクリアにしていくことが最重要事項であることは間違いありません。その上で、イイタイコトをどう視覚的に表現していくか、伝えていくかをアレコレ考えましょう。どういう写真やイラストがイイタイコトを伝えるのを助けてくれるのか考えつつ、素材としてプレゼン資料に配置していきましょう。また、パワーポイントに記載するだけでなく、プリントアウトした資料を用意しておくとか、あるいは、その場でホワイトボードに詳細に説明するとか、図示するとか。あらゆるイイタイコトを伝えるための手段を考えておきましょう。
その際、プレゼンの対象となる聴衆のプロファイルをチェックしましょう。職種や職位、年齢を意識し、効果的なプレゼンの伝え方を想定しておきましょう。


イイタイコトは、顧客目線で、主語は「You」で、ストーリーを語る

特にビジネス・プレゼンテーションではそうですが、顧客目線でメッセージは考えられ、議論され、ストーリーを語られるべきです。プレゼン時においては、更にオーディエンスの視点に立つことも大事です。魅力的なストーリー、メッセージとは、謎かけがあり、わかりやすさがあり、共感があり、驚きがあり、想像の余白があります。

聴衆の気持ちになってストーリーを用意しましょう。聴衆があなたのストーリーを聞くことで、最初はその見出しや出だしでどんなことを疑問に思い、想像し、そしてあとに続くあなたの説明によってそれがどう解消され、クリアな理解を得ていくのか。聴衆のエクスペリエンスジャーニーを意識しつつ、聴衆を主語にして、顧客についてそのストーリーを語りましょう。


データで語る、数字で語る

Factfulness という書籍が話題です。世界に対して多くの人が抱いている悪い誤解を、様々な「世界がよくなっているデータ」を引用して示すことで説いていく書籍で、ビル・ゲイツ氏が2018年の夏に読むべき5つ本のうちの一つとしてあげて、またUSを卒業する大学生に電子版を無償でダウンロード可能にして話題になりました。逆説的に本書が楽観的すぎるという専門家の指摘もありますが、主張はデータをもってなされるべきという考えは共通です。そう。データの時代になっています。以前は、たとえ話や権威のある人の言葉の引用等が、プレゼンのメッセージを補強してくれました。ですが、今やそれらは実際のデータの前に無力であることは多くの聴衆は知っています。自分の主張がなぜ成立するのかのデータをできる限り集め、それらを客観的に、比較可能な形で用い、イイタイコトを語りましょう。

ちなみに、数字を用いて説明する際のテクニックとして、「数字だけ」を先に見せ、オーディエンスに何の数字か想像させるというものがあります。例えば、「この人事施策の改善で重要なのは、3、1200、70という3つの数字です」と見せて、「自分と職場がマッチしないと思う人は平均して3年で辞めていきます。辞められた場合、回収できない研修などのコストは1200万円と考えられます。それだけでなく、職場とマッチしないがゆえに、年間平均して70件の訴訟が起きています」と数字の意味をあとから説明します。(数字は仮のものです)


ハンドアウト

可能であれば、自分のプレゼンのストーリーライン、構造、キーポイントを整理した配布資料を配りましょう。聴衆は話の流れをフォローしやすくなります。また、メモを取る負担を下げれるので、よりプレゼンの世界に聴衆を引き込みやすくなります。


短期記憶に気をつける

短期記憶の研究では、特に注意を払わない情報は、18秒後までにほとんどすべてを忘れてしまうと言われています。プレゼンに関心をもっているオーディエンスとは言え、人の短期記憶ができる量はスピーカーが思う以上に少ないのでそこは気をつけたいポイントです。
プレゼン資料は聴衆が自然に読めるようにできる限りシンプルになるように心がけ、あれもこれもと情報をつめこまないようにしましょう。結局、聴衆がおぼえていられることはごくわずかです。メッセージを絞り込みつつ、また覚えやすい構造・フレーズを聴衆に提供して、かつ印象に残りやすい演出をすることで、彼らの記憶をサポートしましょう。リンカーン大統領によるゲティスバーグの演説は、2分程の長さしかありませんでした。しかし、人々の心に強く残り、歴史に語られる名演説となったのです。


印象に残りやすい素材を

コントラストを意識した配色をする、文字を大きくする、音楽を流す、動画も活用する等、聴衆に、自分のプレゼンに注意を払ってもらい、かつメッセージを覚えてもらう工夫をしましょう。赤い色は注意を払いやすい色とも言われますので効果的に赤色を使ってみるのもありだと思います。


練習とシミュレーション

ひたすら練習しましょう。鏡の前でも。友達や同僚に見てもらいアドバイスをもらいましょう。前述のリンカーン大統領は、移動中の場上でもぶつぶつと演説の練習をしたそうです。現代を生きる我々としては、スマホで動画をとってチェックしてみるのもいいでしょう。自分のプレゼンを撮影した動画は恥ずかしくて見てられないというのであれば、早送りで見たり、スキップしながらポイントポイントを見てチェックするのでも大分違います。その際、もし自分のプレゼンの中に、言いにくいフレーズがあることを発見したら、何度も練習してなめらかに言えるようにしましょう。あるいは、フレーズそのものを言いやすくなるように修正しましょう。
また、練習するだけでなく、自分のプレゼンがうまくいくようなイメージがもてるよう頭の中でもシミュレーションをしましょう。そうすることで、自分が行うプレゼンを違った角度から眺めることができるようになります。


下見、点検

事前に、プレゼンを行うことになる会場を下見しましょう。立ち位置を目視し、資料や機器を点検し、想定どおりに動くか、どう使うかを確認しておきましょう。また、他にもどんな設備があるのかもチェックしておきます。


そして、本番。実際のプレゼンが始まります。


導入はキーとなるポイントに留める

一説によると、プレゼンの開始時は、聴衆はそれほど集中しておらず、最初の数分、下手すると10分は、受身的な状態で、あなたのプレゼンにそれほど注意を払ってくれないかもしれません。どうやって最初の段階からも注意を掴むか。また、詳細な説明はなるべく最初は避けてキーとなるポイントをまず述べ、聴衆が受身的な状態を脱してから、細かい解説でデータの説明を行う等、聴衆の心理や状態の遷移を踏まえたプレゼンの運びを考えましょう。

キーとなるポイントを説明する際に、「共通点は何か?」というテクニックが有用なときがあります。まず2つか3つのワードをあげます。例えば、「製造業A社」「生命保険D社」「小売X社」とあげて「共通点を知っていますか?」と続けます。「実は、三社とも『AIによる需要予測』で業績を伸ばしています」と種明かしします。そうすることで、キーとなるポイント「需要予測が大事だ」ということをオーディエンスに印象づけることができます。前述した「数字だけを先に説明する」とあわせて、小さな謎掛けをさりげなく入れていくことで、聴衆の注意を獲得し、あなたのメッセージを支えるポイントを理解してもらいます。


聴衆の注意をガイドする

プレゼン時、立つ場所も重要です。よくスクリーンの前に立ってしまい、プレゼン資料が見えにくいプレゼンターがいます。もちろん、自分に注意を集めるためにわざとスクリーンの前に立つ時もありますが、そうでなければ聴衆からスクリーンがきちんと見えているかにも気をつけましょう。
話しているとき、自分の口調のメリハリをつけましょう。同じトーンで話したら、聞いている方も疲れます。早く喋ったり、また遅く喋ったり、繰り返し述べたりしつつ、また声の大小も用いながら、更には、オーディエンスに向けて一歩踏み出す、あるいは後退する等、緩急をつけて、強調するところは強調するようにしましょう。重要な箇所では、動きを止め、口を紡ぎ、またオーディエンスの中の特に数名をじっと見つめ、ドラマチックな沈黙を作り、注目を集めてから、それについて述べるという手もあります。それら手段を使いながら、聴衆の注意を自分のイイタイコトへ向けられるように努めましょう。

オンラインでのプレゼンテーションでは、どう注意をガイドするのかというのが難しいときがあります。Webinar のセッティングによっては、ジャスチャーをしても効果的でない場合もあるでしょう。その際に、「もしもペンとメモが手元にありましたら、ぜひ今からいうことをメモしてください」とオーディエンスにアナログなお願いをするという手もあります。オンラインなのに手書きのメモ? というギャップもそうですが、あなたがイイタコトを言おうとしているのがオンラインでも伝わります。もちろんこれは、対面でのプレゼンでも使える手です。


最後の最後までイイタイコトにフォーカス

イイタイコトを確実に聴衆に伝え、行動を起こしてもらうために、最後まで集中しましょう。最後の最後のプレゼンのまとめも、締めくくる言葉も、イイタイコトを伝えるために使いましょう。


以上、プレゼンテーションのTipsを書きました。データサイエンスやAI の進化に伴い、よりデータに基づく世の中になっていくわけですが、ビッグデータというキーワードが示唆するように膨大な情報に囲まれる社会でもあります。逆説的に、イイタイコトをきちんと伝えるプレゼンテーションの技能というのは、今後ますます重要なとなっていくでしょう。本記事がイイタイコトを伝えていくプレゼンの手助けに少しでもなればと思います。


おまけ:英語でのTips

Medium の方に、プレゼンテーションのTips の英語記事をあげています。こちらはイイタイコトではなく、オーディエンスに何を思い出してもらうかにフォーカスする内容になっています。もしご興味ありましたらこちらもどうぞ。


また、本記事内で Factfulness について言及していますが、Factfulness に関する記事も書いています。本記事のテーマからは外れますが、こちらもご興味がありましたらご笑覧ください。


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