ヘッドレス(頭なし)EC: キャッシュレスを支え、ライブコマース、オムニチャネル、D2C に向けたエンジンになる IoT 時代の武器
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ヘッドレス(頭なし)EC: キャッシュレスを支え、ライブコマース、オムニチャネル、D2C に向けたエンジンになる IoT 時代の武器

5G、そしてローカル5Gの普及、エッジコンピューティングエッジAI 技術の進展、ロボティクスの進化に支えられながら、社会は IoT という新しいステージに向かって進んでいます。そして、それに呼応してECの世界も変化しています。IoT デバイスから先進的なウェブアプリまで、様々なタッチポイントを介して消費者が商品を購入することも身近になりつつあります。

去年(2019年4月)、キャッシュレス、タッチレスでのコマースに関する取り組みに関して書きました。

特に顔認証でのタッチレスペイメントも事例が増え、利便性の高いコマースサービスが普及しつつあります。

AIスピーカー、店舗内のデジタルサイネージ等のインターフェイスは、消費者に商品情報を検索したり、レビューを読んだり、注文したりする新しい方法を提供しています。言い換えれば、消費者は IoT 時代を受け入れていますが、ほとんどの小売ビジネスがそのための準備ができているかというとそうではありません。多くはその動きの重要性を認識しつつも、何の手も打てていないというのが現状です。どうすれば、このような IoT に対応した拡張性の高いECシステムを構築することができるのか。その答えのヒントは、ヘッドレス(Headless 頭なし)・プラットフォームというキーワードに見ることができます。


ヘッドレス・コマース・プラットフォーム

ヘッドレス・プラットフォームとは、ヘッドレスという拡張性の高い構成や設計上の特徴を備えた、プラットフォームです。例えば、ヘッドレス・CMS・プラットフォームと言った場合は、フロントエンドの配信レイヤーを使用せずにコンテンツを保存、管理、配信する CMS機能(コンテンツ管理機能)を持っています。

ヘッドレス・コマースとは、そのコマース版と言えます。ヘッドレスとは、頭がない、すなわち、顔がない、ということです。ユーザーに対してのプレゼンテーションを持っていないということを意味し、ヘッドレス・プラットフォームでは、フロントエンド(テンプレートやテーマを含むプレゼンテーション、ビューの部分)が分離されています。開発者はAPIを使用して製品、ブログ記事、カスタマーレビューなどのコンテンツをあらゆる画面やデバイスに配信することができ、フロントエンドの開発者やデザイナーは好きなフレームワークやソフトウェアを使用してコンテンツを表示することができます。

対照的に、従来のECプラットフォームは、頭があり、顔があることが普通です。つまり、事前に定義されたフロントエンドがバックエンドと密接に結合しています。それゆえ、カスタマイズ機能が豊富だとしても、そのようなECプラットフォームは、フロントエンドのデザインを新しいソフトウェアやサービスを活用して劇的に変更することは難しく、またWeb やモバイルアプリの形以外で例えば、PWA(Progressive Web App)、デジタルサイネージやAIスピーカー、スマートウォッチ、車のカーナビ等にコンテンツを配信することも難しくなります。

ヘッドレスなECプラットフォームは、クラウドベースの上に構築されたマイクロサービスとして提供される現代的なソリューションで、いわゆるクラウドネイティブな構成をしています。

フロントエンドだけでなく、自社がそもそも持っている支払いゲートウェイやウェアハウスマネジメント等のバックエンドのシステムともAPIを介して接続します。ゆえに、フロントエンドのデザインを自由に変えることもでき、かつ、多様なデバイスでコマースサービスを実現することが可能です。そういう意味で、ヘッドレスなECプラットフォームは、IoT時代に向けての柔軟性を獲得するのに役立ちます。


ライブコマースや、オムニチャネル、D2C 構築に向けたエンジンになる

現代のECサービスの開発においてすべてをゼロから構築するということはそうそうないと思います。多くの企業においては、Adobe によるフロントエンドの管理を行い、SalesForces による顧客管理を行い、SAP による製造側や倉庫側との接続も行い、Tableau によるBIツールによってデータの分析を行っています。それ以外にも代表的なソフトウェアやサービスをあげたらきりがなく、基幹システムにおいてもいくつかの部門の独立したシステムにおいても多様なソフトウェアをすでに活用しているケースがほとんどです。だからこそ、企業は、白物家電なども含む、IoT 時代における多彩なデバイスに対してどうECとしてアプローチをしていいのか悩んでいます。そして、今は中国・韓国ではブームとなり、日本においても熱く注目されている、ライブコマース(Livestreaming Commerce)というトレンドも始まろうとしています。


そこで、ヘッドレスなECプラットフォームの出番となります。APIコールを介して、既に導入している様々なシステムと連携し、ライブコマースも含めた新しいコマースサービスを多様なデバイスで提供することが可能になります。さらに、特に日本においては、少なからぬケースで、独特の業界の商慣習にコマースシステムを対応させていく必要があり、パッケージソリューションの導入においてもカスタム開発が多く必要になります。ですが、ヘッドレス・アーキテクチャであれば、カスタマイズの自由度は高くなるため、複雑に入り組んだ要件にも一つ一つ対応が可能になるというメリットもあります。

これにより、実店舗の従来のPOSシステムを置き換え、ECサイトとオーダー管理を共通化するシステムを構築し、オムニチャネルの実現を進めれるかもしれません。オムニチャネルは、重要です。ハーバード・ビジネス・レビューの2017年の調査によると、調査対象となった46,000人以上の買い物客のうち、複数のチャネルを利用した人は、単一のチャネルのみを利用した人よりもオンラインでの購入が多く、また、複数のオンラインチャネルを利用した買い物客は、単一チャネルのみを利用した人よりも、実店舗での購入が多いという結果が出ています。よりシームレスなOMOのシステムを構築していくことは今後のリテールにおいてポイントになります。

また、ヘッドレス・コマース・プラットフォームは、コンシューマービジネスにおける大きなトピックの一つである D2C サイトの構築の助けにもなるでしょう。

ヘッドレス・コマース・プラットフォームは、新しい技術を随時サポートすることができます。これは、時代の変化が激しくデジタルシフトの加速が叫ばれている昨今において、新しい顧客体験を提供し続ける上で、強力な基盤になります。例えば、Slack と連携した顧客対応窓口を追加するということも、従来のECソリューションに比べて容易です。また、それぞれはAPIによる疎結合となるので、各システムの更新も独立的に行うことができる運用を目指せ、保守にかかる煩雑さも小さくできます。この柔軟性のおかげで、マーケティングチームは数ヶ月ではなく数日で新しいサイトを立ち上げることができるようにもなるでしょう。そして、異なるブランド、部門、ポートフォリオにまたがる複数のECサイトを展開することができるようになります。


EC システムとは巨大なモノリシック基盤であるとみなされてきた従来の捉え方からすると、ヘッドレスなアーキテクチャ、プラットフォームは新しい時代の幕開けに見えます。Shopify、Stripe、Contentful、Gatsby、BigCommerce、Magento、CommerceTools 等様々なプレーヤーが出てきています。今年の調査会社 Forrester による分野別競合分析である Forrester Wave においても、Commerce 領域でヘッドレス・ECプラットフォーム(CommerceTools)が台頭してきていることを確認できます。

キャッシュレスペイメント、タッチレスペイメント、そして、ライブコマース、オムニチャネル、D2C といった各トレンドに限らず、IoT 時代においては新しい体験を、様々なタッチポイントで消費者に迅速に届けることが大切になります。ここにおいて、クラウドネイティブという方向性にも適合した、ヘッドレス(頭なし)という新しいソリューションは、重要な武器の一つになっていくことでしょう。


おまけ

筆者が所属しているデロイトデジタルにおいて、今後のリテールビジネス、コンシューマービジネス、マーケティングは、AI の活用によって切り開かれるという内容の記事およびそのソリューションも提供しています。ご興味ありましたらこちらもご確認ください。


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Deloitte Digital 執行役員、Deloitte AI Institute 所長。メルカリR4D 顧問。日本ディープラーニング協会 顧問。アクセンチュアで技術リード。楽天では執行役員・研究所代表で世界のR&Dを統括。https://twitter.com/emasha