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目の見えない白鳥さんと一緒に楽しむ美術鑑賞プログラム(千葉市美術館/福田美蘭展) に参加した

千葉市美術館 福田美蘭展関連
エデュケーター・ラリープログラム「あらわる★ミカタ案内人」
目の見えない白鳥さんと一緒に楽しむ美術鑑賞プログラム
に参加した。

ドキドキしながら白鳥さんをアテンド。
白鳥さんに導かれるように福田美蘭のへんてこな世界を発見していく。
いつでも発言できて、場所や体勢を変えて作品の見方を変えられる自由度。
気づいたら福田美蘭作品の鑑賞に夢中になっていた。

福のり子先生発信による白鳥さん情報から知った白鳥建二さんの存在と、書籍『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』と、「目の見えない白鳥さんと一緒に楽しむ美術鑑賞プログラム」。

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福田美蘭展について

福田美蘭展では、福田美蘭が日本美術作品を読み解いて新たに創作した作品を中心に展示されている。読み解き作品には、千葉市美術館の日本美術コレクションが多く使われている。

目の見えない白鳥さんと一緒に楽しむ美術鑑賞プログラムについて

「目の見えない白鳥さんと一緒に楽しむ美術鑑賞プログラム」のナビゲーターは、書籍『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』に出てくるマイティこと佐藤麻衣子さん(エデュケーター/プログラムコーディネーター)と、白鳥建二さん(全盲の美術鑑賞者)。
参加者は5名で、マイティさんと白鳥さんを加えた7名で鑑賞を進める。

鑑賞会では、福田美蘭展の3作品を鑑賞。
鑑賞作品はマイティさんが基本選んでいたそうだけど、その中の1作品は白鳥さんの好みで選んだそうな。

鑑賞作品
1.雪月花/2017年(白鳥さんの好みで選ばれた作品)
  元となる作品:雪月花/月岡芳年/1890年/千葉市美術館蔵
2.夏景山水図/2016年
  元となる作品:四季山水図(夏)/雪舟/15世紀末~16世紀初
3.松竹梅/2017年 or 虎渓三笑図/2020年
  元となる作品:松竹梅図/長澤蘆雪/1789-1801/千葉市美術館蔵
  元となる作品:虎渓三笑図/曾我蕭白/1772-1781/千葉市美術館蔵
3作品目はみんなで松竹梅を選んだ。

移動の際は参加者のひとりが白鳥さんをアテンド、作品の前に着いたら作品ごとに15分程度みんなで鑑賞する。作品のキャプション情報は基本読まない。

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見返り美人 鏡面群像図/福田美蘭/2016年

目の見えない白鳥さんとの鑑賞会で感じたこと考えたこと

特定のファシリテーターは不在で、みんなで作品鑑賞をしながら、自由に取り留めのない話を進めていく。

コミュニケーション体験自体は、飲み会と近いだろうか。7人グループで話をしていて、7人で話していることもあれば、2人と5人で分かれて同時に話をすることもある。自由なタイミングで主体的に一人ひとり発言して、席(場所)の移動も自由。砕けた場なので、必要以上に発言の補足説明をすることもない。

白鳥さんはどうしているかというと、基本みんなの発言を聴くことに徹していて、変な発言が出ると笑ったりリアクションをしてくれる。このリアクションにリードされるように、作品のへんてこな部分やよくわからないところに意識が向かう。白鳥さん自身、わからないものやへんてこなものを好むそうな。

福田美蘭展の作品は、意識的に視点を変えると発見が得られるものが多い。近づく離れる、立って見るしゃがんで見上げるなど、身体を使って見ると色んなものが見えてくる。作品キャプションに、視点を変えるヒントが書かれているけど、キャプションを読まずに発見にたどり着いた時のおどろき喜び盛り上がりがたのしい。

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二代目市川団十郎の虎退治/福田美蘭/2020年
元となる作品:二代目市川団十郎の虎退治/鳥居清倍/正徳3年(1713)/千葉市美術館蔵

事前に書籍『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』を少し読み、白鳥さんとの鑑賞会の追体験をしていた。白鳥さんのアテンドから、白鳥さんとマイティさんとの作品鑑賞と、著者・川内さんと近い体験をすることで、自分も本の中の登場人物になったかのような気持ちがたのしめた。

鑑賞プログラム後のマイティさんのTweet

目の見えない白鳥さんとの鑑賞を追体験したい方へのオススメ

第1章&第2章は立ち読み可能、第1章の朗読もあり。
書籍にはテキストデータが付いてくるので音声読み上げも可能。

白鳥さん主演のドキュメンタリー映画『白い鳥』も観たいな。


対話型鑑賞ファシリテーターとしての気づき

鑑賞会体験は、ブラインドトーク中心の鑑賞会をイメージしていたけど違った。(ブラインドトークは、作品を見ていない人に、鑑賞作品を言葉のみで想像してもらうワーク)
もちろん全盲の美術鑑賞者・白鳥さんと一緒に鑑賞をすることで、白鳥さん視点での発話情報の不足を意識する機会は増える。誰かの発話に対して、その発話内容だけだと白鳥さんに観ているものが伝わらないだろうな、と思ったら描かれている事実情報を多少加える。「どこからそう思ったか?」の情報を丁寧に拾うことって、対話型鑑賞ファシリテーターがよくやることではあるけれど、白鳥さんという存在がいることで自然と鑑賞者間で鑑賞のファシリテーションが発生する。

「白鳥さんはどうしているかというと、基本みんなの発言を聴くことに徹していて、変な発言が出ると笑ったりリアクションをしてくれる。」
この白鳥さんの佇まいも示唆に富んでいた。
作品から感じる違和感や、作品のわからないところに、その作品のおもしろいところが詰まっている。どれだけ違和感やわからないものを意識できるかで、鑑賞のおもしろさって変わってくる。
対話型鑑賞でも、「違和感」や「わからないもの」へのファシリテーターの感度が、鑑賞体験を変えていくんだろうな。

「コミュニケーション体験自体は、飲み会と近いだろうか。7人グループで話をしていて、7人で話していることもあれば、2人と5人で分かれて同時に話をすることもある。」ここも興味深いなと思ったポイント。
対話型鑑賞中って基本的には発話者がひとりであることが多い。複数の人が同時に話すことってあまりない。リアルの場で人が多いと複数の人が同時に話すようなケースが稀にあるけど、オンラインの場だと同時並行で話すことができないので発話者がひとりに絞られてしまう。
鑑賞者グループの変形可能性か。このあたりはリアル/オンラインでまだまだチャレンジできるところなのかも。

最近はオンラインの鑑賞会ばかりしていたけど、リアルの鑑賞会はたのしい。白鳥さん自身、リアルの鑑賞会の方がたのしいからリアルの場で鑑賞を続けている面もあるみたい。

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