TFBM 信じた道を走り続ける 9
遡るは十数年以上、遥か彼方昔の話。
東京の23区を少し外れたとある高校の学園祭、
体育館に手作りで組み上げられたステージの上、
ギター、ベース、ドラム、ボーカル、
通常のロックバンドとは少し異なるフォーマットのバンドがそこでライブをしていた。
あくまで青春の延長線上。
みんなにとっての部活動が、たまたまバンド活動であっただけ。
音楽で生計を立てようだなんてこれっぽっちの微塵も思っていなかったので、
出落ちしない程度にあまりかっこよくない名前が丁度いいねと、適当な名前がつけられていた。
何だかどこかでメロディーの聴いたことのあるような、
模倣に近いオリジナリティに欠けるオリジナルの曲を演奏したか、しなかったか、
当時のセットリストなど記憶の片隅にも跡形もなく残ってないのだけれど、
たった1曲だけ、その曲だけははっきりと、くっきりと、
その曲を確かに演奏したということが、
青春の1ページに強く、深く、刻まれている。
僕らはその曲を演奏するために、そのバンドの曲をカバーするために、
隣のクラスでバイオリンを弾けるという仲間を見つけ強引に捕まえて、
半ば連れ去るようにスタジオに引き込み、
結果とても仲良くなってしまったりなんてして、
その手にはギター、ギター、ベース、ドラム、そしてヴァイオリン、気づけば5人でステージに立っていた。
BIGMAMAというバンドが、
初めて"バイオリニストのいる5人組のロックバンド"になった瞬間である。
その後、楽しかったよね。これで終わるのはなんかちょっと寂しいよね。
だなんて話したことが終わらないまま、この物語は上下左右に寄り道をしながら、いまだ十数年以上続いているのだけれど。
ふと、その時の楽曲が話題に上がって、
久しぶりにちょっと合わせてみようかなんて、スタジオで音を出してみた時に、
案の定コード進行は微塵たりとも覚えていなかったけれど、
なんとなくでも歌詞の節々は覚えているもので、
人間の記憶って凄いって思ったり。
この人の声で聴いてみたいななんて欲張って、スタジオに居合わせた先輩に歌声を重ねてもらった暁には、
音楽が自分にとって、とびきりの玩具であることを思い出させてくれる。
過去が美化されるのが仕方のないことなら、
いっそ綺麗に額縁にでも飾っておけばいい。
それに気が留まらないくらいには、今に、そして未来に夢中でいられたら。
自分にとって、そんなに難しいことではないので。
<ひそひそ話はこちらでやってます>
褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。