本屋はどう戦っているか4
前回まで、本屋について述べてきました。
本屋はどう戦えないか。
本屋はどう戦っているか。
「遊べる本屋」である、ヴィレッジヴァンガード(以下、ヴィレヴァン)はどうなっているか。
※ヴィレヴァンは本屋です。(本当)
今回は、今まで述べてきたことを踏まえた上で、賃金や構造に目を向けます。
本屋は基本的に薄利多売である
まず、本屋は基本的に薄利多売です。
再販制度によって、そうなっているのです。
基本的でない本屋でも同様です。
(本屋扱いされない本屋である)ヴィレヴァンでさえ例外ではありません。
ヴィレヴァンは関連書籍や関連グッズで利益率が良いとは言っても、「本屋にしては」です。
ゆえに、賃金が低いのです。
本屋は(ヴィレヴァンを含め)薄利多売であるため、賃上げが出来にくい構造になっています。
賃金が低いため、やり甲斐搾取が生じます。
本屋の店員さんは最高なのに最低
本屋の店員さんは最高なのに最低です。
本屋の立地する商圏(商業圏)の中で、最高クラスの知識を持っているというのに、最低賃金です。
極端な例として、ヴィレヴァンを挙げます。
「ヴィレヴァン全店まわる人」さんのXを拝見して愕然としました。
ヴィレヴァンは設立以来、最低賃金なんです。
ずっと最低賃金。そのせいか離職率が高い。
オリジナル商品のコラボアイデアを出した場合はインセンティブが出るようですが、しかしながらコラボアイデアを社員に渡すだけ。
※発案者と実務者が異なるという別の問題までもが生じていますね。
今後、手書きポップにもインセンティブをつけていくようですが、これからであるそう。
まるで普通の本屋のようになっているのです。
ヴィレヴァンは普通じゃない本屋なのに。
どんなフェア台でもつくる能力がある店員さんが最低賃金であるように。
店舗そのものがフェア台のような本屋であっても最低賃金なのです。
最高クラスの知識を持っていようとも最低賃金に据え置かれているのです。
本屋は基本的にやり甲斐搾取である
本屋は基本的にやり甲斐搾取なんです。
制度的に。構造的に。文化的に。
再販制度だけが原因ではありません。
再販制度の枠をこえた関連グッズで利益を出していようとも、構造的にそうなっているのです。
さらに、その構造にただ乗り(フリーライド)をした文化的要因が制度や構造を後押ししています。
計り知れないものはどうにもならないのです。
計測できないと査定ができない。
これは品物だけでなく人間でも同様なのです。
ヴィレヴァンが極端な例となるのは、計り知れる作業が少ないこと、そして、計り知れない仕事のインセンティブが少ないこと、この両面によって生じている、と私は見ています。
計り知れない仕事は人事査定に向かないのです。
人事制度、給与構造、出世文化。
その全てで、やり甲斐搾取が必ず生じるのです。
計り知れる作業をこなせば最低賃金を出すことになっています。
計り知れない仕事は賃金に反映出来ないのです。
ヴィレヴァンは、計り知れない仕事で成り立ってきたからこそ目立ってしまうところがあります。
どんな本屋でも構造上そうなる
ヴィレヴァンに限った話でなく、どんな本屋でも大なり小なり構造上必ずそうなります。
本屋の店員さんは、勤務時間以外の自分の時間で読書をするからです。
読書後の人間は、読書した分だけ、読書前よりも価値が微増します。
けれども、店員さんは賃金が微増しないのです。
この微増した価値と最低賃金では釣り合うことがありません。
ゆえに本屋は、全ての本屋でやり甲斐搾取になる構造があるのです。構造上の問題なのです。
ゼロ冊の人間が過半数になったのに、一冊以上の人間が最低なわけがないでしょう。
それなのに最低賃金なのは、本屋に「やり甲斐があるから」に他なりません。
「やり甲斐があるから」は、やり甲斐搾取です。
本屋は基本的に薄利多売とやり甲斐搾取によってギリギリ成り立っているのです。
今までずっとギリギリ成り立ってきたのです。