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【BATH】テンセント(騰訊控股)とは?

結構時間が空きましたが、今回は、テンセント(騰訊控股)についての記事です。

テンセントと聞いてあまり聞き慣れない人も結構いるかもしれません。テンセントとは、「中国のFacebook」とも言われるほどの大企業です。

Facebookは、SNSで強固な基盤を築き、広告に特化した企業です。下の記事で詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

テンセントの主たる事業

テンセントの事業領域はSNSを起点にしながらも非常に幅広い事業を繰り広げています。

例えば、ゲームのデジタルコンテンツの提供、決済などの金融サービス、AIによる自動運転・医療サービスへの参入、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のようなクラウドサービス、新小売の店舗展開など多岐に渡っています。

さて、先ほどは大雑把に事業を見ましたが、細かく説明していきます。

①SNS「QQ」「WeChat」「Qゾーン」

テンセントのビジネスの中核をなすのは、「コミュニケーション&ソーシャル」に位置付けする、「QQ」「WeChat」「Qゾーン」などのサービス。

QQは、主にPC向けのメールのようなサービス、WeChatは、携帯向けのメッセージアプリ、Qゾーンは、ブログを書いたり写真を共有したりできるSNSです。

テンセントのMAU(月間アクティブユーザー)は、2018年6月時点でQQ が約15億人、WeChatが約10億人、Qゾーンが約11億人と発表されています。

重複しているユーザーを考慮するとMAUが15億人を超えていると考えられ、MAUが20億を超えているFacebookに迫る勢いを持っています。

中国の人口が約14億人で、ほとんど全ての中国人がテンセントを利用しており、現在世界に向けてユーザーを広げています。

②ゲームや決済サービス

SNSで獲得したユーザーに対し、ゲームや動画、ニュース、音楽、文字といったコンテンツや決済サービス、アプリケーションのストアを提供しています。

テンセントは、ユーザーの課金額売り上げのVAS(Value Added Serrvice:付加価値サービス)がテンセントの売り上げの65%を占めます。

テンセントのオリジナルゲーム「Honor  of Kings」は1億人を超えるダウンロードを記録し、社会現象ともなりました。この記録に対して、共産党中央機関紙「人民日報」が『テンセントは有為な若者たちを中毒に陥れる社会悪を作っている』と非難したほどである。

次に決済サービスでアリババの「アリペイ」を猛追している「WeChat  Pay」があります。QRコードによる店舗の支払いや個人間送金の他に、ECでの支払いなど幅広い場面で使われている。

もともと、「アリペイ」が普及している段階で、殴り込みに行く感じで「WeChat  Pay」をリリースしました。

現在では、ほぼ拮抗した状況にあるとも言われています。なぜ、拮抗できるまでに成長したのでしょうか。

理由として2つあります。

1つ目は、中国には、日本と同じ正月に親戚にお金を渡す、お年玉みたいな風習があります。

現在、日本みたいに親戚と会う場面が少なくなったりしている社会に対して、お年玉を「WeChat  Pay」で送金するというデジタル文化を形成しつつあります。

2つ目は、割り勘です。SNSを主とするWeChatであるので、メッセージを送る機能がある為、割り勘がしやすい。1人が支払い、後日、送金機能を用いて割り勘金額をメッセージを送り、容易に割り勘することができる。

この2つの理由で成長したと考えられます。

テンセントの戦略分析

ここで、テンセントのスローガンを紹介します。

「improve the quality of life through internet value-added services (インターネットの付加価値サービスを通じて、生活のクォリティを向上させる)」

Facebookは、「繋がり」を重視していましたが、テンセントは「生活のクォリティ」に注目しています。

インターネットは、あくまで1つの手段であり、生活のクォリティを向上させることに使命を持って戦略を組んでいることを知ってください。

テンセントは、インターネット(SNS、画像、動画など)はもちろん、多様な産業に関連するテクノロジー(自動運転やEV、EC、小売店舗)といった生活に関わる技術開発にも注力を入れているのです。

テンセントの事業拡大は、SNSを基盤とした『テクノロジーのコンビニエンスストア』として幅広く展開しているのが特徴です。

近年の動向で注目したいところは、AI×医療・アリババとの競争です。これらは、のちに述べていきます。

次にテンセントの強みです。騰訊のチョ味は、総合力の高さであり、創業者兼CEOのポニー・マーのリーダーシップが強いと考えられます。

ポニー・マーは、マーク・ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾスなどの個性や独創性を兼ね備えているわけではありません。

非常に勤勉な人物と知られており、チームワークを重視しており、最高経営会議でも聞き役に徹し、意見調整を担う非常にバランスの取れた優良企業である。

騰訊の収益構造では、先ほど出てきたVASが65%を占め、オンライン広告が2番手で17%、そして残りがその他サービス(金融関連サービスやクラウドサービスなど)となっています。

中国のFacebookとも呼ばれているが、実際に収益構造を見るとまるで別事業をやっているかのような構造をしています。

これは、中国人口のほとんどが使っているSNSサービスで広告事業を拡大したとき、さらなる成長を遂げるということも意味しています。

テンセントのAI戦略

テンセントの注力分野として、先ほども述べた「AI×医療」「AI×自動運転」があります。

中国政府が発表した「次世代人工知能の解放・革新プラットフォーム」(2017年)では、国策のAI事業として4つのテーマとその委託先が決められました。

「BATH」の中で挙げると、バイドゥが「AI×自動運転」、アリババが「AI×都市計画」、テンセントが「AI×医療画像」を委託されています。

テンセントは、顔認識などのAI技術を集結させ、2017年8月には「AI医学画像連合実験室」を設立しています。

この実験室は、食道癌の早期スクリーニング臨床実験の仕組みを整えています。

従来の医療は、医療画像の続影は医者の技量や経験に頼らざるを得なかった。そこで、AIを活用して精度を高めようとしています。

テンセントの「スマート医療サービス」の構想は幅広く、「ウィーチャットスマート病院 2.0」では、オンラインでの診察番号の取得や診察料金の支払い、診察時間の通知、病院内のルート案内などの機能を実現しています。

続く3.0バージョンでは、ウィーチャットを通じた支払いの方法の多様化や処方箋の電送により身近なドラッグストアや自宅で医薬品を受け入れる仕組みなどを提供する構想になっています。

また、ブロックチェーン技術により、診療情報の記録を一元管理し、医師が患者の診察状況や健康情報などの詳細を遡及的に参照できるようにするとも言います。

※ブロックチェーンについては、後日新しい記事で紹介したいと思います。

テンセントは、次世代自動車産業にも手を出しています。米国の電気自動車メーカーのテスラの株式を5%保有していたり、ドイツのHERE社と戦略的な包括提携を結んでいます。

テンセントは、HERE社との提供のもとで、中国市場向けのデジタル地図サービスを展開するほか、自動運転に利用する高精度位置情報サービスを構築していくとされています。

デジタル技術によるマッピングやAI技術を活用し、独自の自動運転事業にも乗り出しています。

実際に、深圳市では、テンセントの無人運転かつEVの公共バスが走っていたり、テンセントが提供するスマホ乗車アプリのモバイル決済が採用されています。

深圳の記事をもっと見たいという方には、次の記事がオススメです。

「新小売」のテンセントvsアリババ

中国国内では、アリババとテンセントの戦いが激化しています。アリババはECをベースとして発展してきました。

テンセントは、SNSを起点にサービスを展開しています。両者は、決済機能のように衝突するビジネスが増えてきています。

アリババが新小売として「フーマー」を展開しているのに対して、テンセントは同様のOMO戦略(Online Merges Offline:オンラインとオフラインの融合)を取っている「スマート・リテール」と呼んでいるものがあります。

テンセントは、中国ECのB to C市場でシェア2位の座にある京東商城(JD)の筆頭株主になっています。さらに、中国大手スーパーマーケットチェーン「ヨンフイ」の株式を取得しており、2社と密接なグループ関係を築いています。

ヨンフイは、2017年、フーマーで好評を博しているグローサントサービスと同様のコンセプトを打ち出し、新ブランドのOMO店舗「チャオジーウージョン」の展開をスタートしました。

※グローサントサービス:店舗で買った商品を店舗でその場で料理してくれるサービスのこと。スーパー(グローサリー)とレストランを合わせた造語。

つまり、アリババ「フーマー」vsテンセント「チャオジーウージョン」という競争が始まった。

チャオジーウージョンはグローサントサービスだけでなく、「3km圏内に30分以内の無料配送」「すべての商品にバーコードをつけてトレーサビリティを実現」などフーマーを真似てサービスを提供しています。

また、テンセントとJDは、全米民生技術協会が主催するCES(Consumer Electronic  Show)2019では、「ハイテク小売の世界は中国はアメリカを抜いている」と紹介しました。

ここで紹介された技術は、宅配用の小型自動運転、宅配用ドローン、入荷から出荷までの完全自動倉庫、ブロックチェーンを活用した販売商品のトレース技術などを展示していました。

テンセントは、2018年にヨンフイと共同でフランス小売り大手のカルフールにも出資しており、グローバルな「スマート・リテール」の展開も視野に入れています。

私的考察

テンセントは、これから安定して成長していくと考える。現在、アメリカと中国のハイテク戦争が行われているが、中国大企業の強みは、共産党による閉鎖空間の中国でも、14億人という消費者がいるということです。

中国では、GoogleやTwitterなどは、ほとんど使用されていない。多くの人が、バイドゥやテンセントのサービスを使っていることも分かるように14億人を手中に入れているのである。

また、テンセントが安定するという理由として、医療に力を入れていることである。

医療とは、絶対に廃れない分野である。

理由として、先進国の平均寿命が伸び・少子高齢化を伴い、需要がこれからもコンスタントに伸びてくる分野であると考えるのは必然です。

テンセントは、アメリカのハイテク戦争に巻き込まれても、今後も安定して成長するであろう。

次回は、Googleを紹介していきたいと思います。


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