知識やスキルよりも、信用が仕事を左右する
転職してきて経験したしょっぱい話と、
話す人によって聞き手の反応は大きく変わるなという話。
熱意とか斬新さとかロジックとかデザインとか、
そんなものでは越えられない壁に阻まれた話。
仕事に限らず、信用があるほど相手は話を聞いてくれるし、応援してくれる。信用づくりも立派な能力だし、仕事をすすめる上では欠かせない。今でこそ、ようやく色んな人とコミュニケーションがとれるようになったので、相談もしやすくなったし、面倒な仕事を持って行っても、説明すれば納得して受けてもらえるようになった。
少しだけ成長させてくれた僕のしょっぱい思い出と
信用がないと正論も通じないのかと痛感したことを記す。
1.そんな知識じゃ話にならん
当時、とある業務で、コンサルとコンセプトや計画をあーだこーだ言って練り上げていた。当然、発注元である僕たちにはビジョンがあって、それに沿って大まかな計画の打ち合わせをする。ビジョンに合わせてコンセプトも一緒に作り上げる。そして、それらを汲んでコンサルが計画に落とし込んできてくれる。この間というのは、デザインや建築の人間にとって、完成形を想像しながら妄想を爆発させる一番楽しい時間である。
そうしてある程度カタチになってきたら、次に担当者として関係部署への説明に走らなくてはならない。ビジョンやコンセプト、計画を、理由や狙いも含めて説明していく。
ここに壁があった。
相手は先輩(他にも同席者)。僕の大変悪いクセだが、けっこう人を見た目で判断するタイプなので、その人とは初めて会ったときから印象は良くなかった。だから熱く丁寧にひとつずつ説明していった。
思ったよりも順調にコンセプトなどの説明は流れていき、計画の説明に入ったとき、思いもしない言葉が飛んできた。
「そんなん、法令上可能なん?」(意訳してます)
ここまでの説明は、相手方の専門分野ではない(ぶっちゃけどうでもいい)ビジョンやコンセプトだったので突っ込んでこなかったのだが、計画の自分の専門分野に差し掛かってくると急に強気になった。僕は”法令上”という言葉に一瞬戸惑ったが「可能です」と答えた。
「ほんなら、レベルは?」(意訳してます)
その時、レベルまでは覚えていなかった。「レベルまでは今覚えていません」そう答えるしかなかった。
「お前レベルも分からへんのに説明にきたんか。」(意訳してます)
少しカチンときた。レベルを考えずに計画などするはずがなく、僕らはコンサルとも、”法令上”可能かどうかも合わせて議論している。分からないのではなく、その場で思い出せないのであって、彼らに計画の可否を問うているのではない。レベルは後々伝えればいいことだ。担当課としての説明の意味合いは、計画が可能かどうかではなく、いわゆる情報共有としての計画の確認である。(と思っている。)
「確認はしておきますが、レベルはコンサルとも議論してますので、計画は法令上でも可能です。あくまで今回は計画の説明に伺いました。」(僕の発言です)
つい短気が出てしまった。売り言葉に買い言葉とはこの事だ。見事なまでに購入してしまった。おとなしく再度確認して説明にきますと引き下がればよかったものを、Amazonのタイムセールのように飛びついてしまった。
「そんなレベルも分からんような知識で説明されても納得できへんわ。勉強してから来い。話はそれからや。」(ほぼ原文ママ)
(こいつめんどくせぇどすなー。レベルは後から伝えはりますやん。それでもアカンかったら言うてくれたらええですけど。その筋のプロのコンサルと議論して計画立ててるんやさかい、レベルがNGなわけないですやんか。)と、心の中で京都弁風に愚痴りながら、計画の概要だけ伝えてその日は終わった。
要するに彼は、説明をするなら法令くらい覚えとけということなんだと思う。同じ技術屋なんだから、それくらい当たり前だろと言っていたと記憶している。同じ技術屋。たしかに肩書きだけ見ればそうだが、10年20年戦士とルーキーを肩書きで括って、経験と知識量で叩くのはいかがなものか。
僕の考え方はこう。例えば、デザイナーが主となり建築士と組んで建物を設計するとする。施工するために、主であるデザイナーから工務店に設計を伝える。その時、工務店はデザイナーに向かって、建築基準法も分からんやつの説明は聞かれへんわ、とは言わないでしょって考え。立場で言えば、先輩は工務店、僕はデザイナー、コンサルが建築士にあたる。建築士と建築基準法を確認しながら計画したものを説明してますよ、ってことだったんだけど、ダメだったんだなー。
要するに、先輩の僕への信用度は、アイデアや熱意ではなく、「法令の知識を知っているか」にあったのだ。結局、一度得られなかった信用はなかなか高まらず、その後もあれやこれやと突つかれまくった。一度目に信用を得ていれば、少しは違った結果になっていたのかもしれないと後悔している。
僕個人の信用が目に見える成果を左右してしまうことを痛感しました。
2.良いこと言うけど嫌なことはせんもんな
いつだったか、上司へ説明に入った時、これは誰が考えたの?と聞くので、○○です。と答えたら、
「おー。これ自分が好きなことやから良いこと言ってるけど、他の自分が嫌なことはしない人やからな。こんな時だけ頑張ってもなー。」
はい、反省します。
普段、自由に好きなことをしている僕なので、与えられたことはきちんとしないといけないなーと反省しました。普段の仕事の姿勢から誰かに見られていて、それが偉い人たちの中で個人の信用として共有されているんだなと、日頃の姿勢の襟を正すとともに、こんなところまで情報は伝わってるんだなと怖くもなりました。
いくら良いことを言っていても、信用がなければ話もろくに聞いてもらえない。成果主義に走りすぎて、自分のことを疎かにしてはいけないということですね。肝に銘じておきます。
3.まとめ
これからは信用の時代と言われていて、信用がお金に変換されていく時代。クラウドファンディングなんて最たるものですよね。どういう形で信用を積み重ねていくかは人それぞれだけど、僕の場合は、飛びぬけた能力やスキルがあるわけではないから、人から何とか好かれるように媚を売るしかないですかね。スリスリ。
僕の信用がどれぐらいあるか、計る装置とかないかな。
それかみんな教えてくれてもいいんだよ。スリスリ。
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