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ステークホルダーを巻き込んだ計画は期待以上の成果を引き出す(2/2)

前回の話を軽く振り返りましょう。

生産計画部は、恒常的な生産日程の遅れに苦しんでいました。その原因は上流である設計部の日程遅れにありました。
生産計画部は以下の方法で課題解決に取り組みました。

納期からの逆算で日程を積み上げることで設計期限(デッドライン)を明らかにし、設計部の日程順守を促す。

この活動は、主役を張る設計部との組織の壁に跳ね返され、風前の灯でした。
ところが、ここで神風が吹きます。設計部がトップマネジメントからのお達しでプロジェクトマネジメント力強化に取り組むというのです。

生産計画部はこの神風をうまく捉え、自分たちの生産日程計画作成プロセスに設計部を巻き込むことに成功しました。
この試みは功を奏し、結果的に、当初の目標を上回る成果をあげました。

前回はここまででした。
今回は、その続きです。

設計部とのコラボレーションを進める中で新たな問題が浮上しました。
この問題は設計部からもたらされました。設計部だけでは日程順守は難しいというのです。

その理由は顧客にありました。

顧客が予定通りに要求仕様を確定しない限り、設計部は設計には着手できません。フライングで先行着手したところで、下流で手戻りが発生したのでは納期は守れません。

そこで、生産計画部と設計部の連合軍は、顧客と対峙しているシステム開発部をこの議論に巻き込むことにしました。

顧客との関係性に影響を与える話なので、今回は、設計部を巻き込んだときのように簡単にはいきませんでした。システム開発部が難色を示したのです。

そんな最中、またしても神風が吹きました。

トップマネジメントから、今度は、顧客との関係構築の在り方を見直すようにとシステム開発部にお達しが下ったのです。中期計画作成と並行して進んでいた「黒字体質を目指す会」からの提言に呼応して、経営企画部長が、顧客接点の問題を指摘したのがきっかけでした。

これを境に、生産計画部の計画強化プロジェクトは、システム開発部と設計部を巻き込んだ全社改革プロジェクトに姿を変えました。

ここで生み出された相乗効果はトップマネジメントの期待をも上回り、生産計画部のトップは見事、プログラム・オブ・ザ・イヤーに選出されました。

この例では、ひとつの部門の変革活動が会社全体を巻き込み、大きな相乗効果を上げました。事業計画やプロジェクト計画をやっていると、これほどではないにしても、成果につながるようなステークホルダー巻き込みの機会はここかしこに潜んでいます。

計画をきっかけにステークホルダーを巻き込んで相乗効果を積み上げるのは、計画者の役目です。

最後に、ごく身近な例を紹介します。

この会社では、商品開発計画はそれぞれの担当チームが行っていました。
加藤が商品Aの開発マネージャに抜擢されたときもそうでした。加藤はプロジェクト計画を作成する過程で、このままでは開発予算が足りないことに気づきました。市場調査の規模を縮小すればコスト削減は可能ですが、戦略的なマーケティングを旗頭にしている今回、それだけは避けたいというのが加藤の思いでした。

彼は悩んだ末にあるアイディアを思いつき、同じ時期に開発が進んでいた商品Bと商品Cの開発マネージャに声を掛けました。

加藤の提案で、彼らはお互いの商品発表時期を調整し、市場調査が相乗効果を生み出せるように変更しました。3つの商品の開発予算を持ち寄り、マーケティング活動を共同で展開することを決めました。
この活動が功を奏して、開発予算をキープしながら開発したこれら新製品は市場に受け入れられ、大ヒットを記録しました。

計画段階にステークホルダーの存在に気づき、彼らを計画に巻き込んだ加藤の機転は、会社に期待以上の成果をもたらしたわけです。

めでたし、めでたし。


【告知です】
さて、ブログ「計画の技術」ですが、今回で一時中断します。
これに代わってスタートするのは、私が note 駆け出しのころに執筆していた「正解のなお問題を解く力」の焼き直し版です。
ビジネスシーンで注目されている概念化力(コンセプチュアルスキル)をテーマにした「なるほど」につながる内容なのですが、当時はうまくPRできていませんでした。
ブログのタイトルは「今だからこそ”正解のない問題を解く力”」です。
乞うご期待!



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