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計画者の出鼻をくじくのは、周囲の“有りがち”な誤解だった (2)

今回は、前回の続きです。

計画軽視の背景には、計画に対するさまざまな誤解があります。今回は、代表的な誤解の例を3つ取り上げます。

誤解 その1 計画してもその通りにはいかないから、計画はムダだ
誤解 その2 情報がそろわなければ計画はできない
誤解 その3 いったん計画を作成したなら、それを変更してはいけない

◆ 誤解 その1 計画してもその通りにはいかないから、計画はムダだ

計画通りにものごとが進むならそんなにいいことはありませんが、たいていそうはいきません。だからといって、それが「計画をしてもムダだ」に直結するのでしょうか。
答えはもちろん「ノー」です。
計画しなかった場合と、計画したもののその通りにものごとが進まなかった場合とでは、結果に以下のような違いが生まれます。

・ 計画していなかった場合は、失敗の兆候に気付くことができず、傷口を広げてしまう。計画していた場合は、計画と実績のギャップから失敗の兆候に気付くことができるため、傷口を最小限に抑えることができる。
・ 計画していなかった場合は、なぜ失敗したのか、その失敗の原因を振り返ることができない。計画していた場合は、計画と結果のギャップを辿ることで、どこを考え違いしていたのか、その失敗の原因を振り返ることができるので、次回以降の学びにつながる。
・ 計画していた場合は、計画することで計画対象に対する理解や考察が深まっているため、計画していなかった場合に比べ、失敗に対して速やかに対処できる。
・ 計画していた場合は、計画段階にさまざまな気付きを得て失敗しないような備えができるので、計画していなかった場合に比べて失敗が少ない。計画通りにいかなかったとしても、その頻度や影響度は同じではない。

もうおわかりでしょう。
計画通りにものごとが進まないのは当たり前で、だからこそ計画が必要なのです。

混乱を招くかもしれませんが、敢えて説明を付け加えておきます。
「予測不可能な領域では計画に意味はない」
こんな主張をする人がいますが、これはあながち間違いではありません。
開発を研究開発と製品開発に分けるなら、創薬(薬効の確認された新薬を発見すること)に代表されるように、研究開発の大半は予測不可能です。これに対して、薬効の確認された新薬を世に送り出すための製品開発は予測可能です。後者には計画が欠かせませんが、正直なところ、前者には計画的アプローチはあまり意味をなしません。
ブログ「計画の技術」は後者を対象にしています。前者も実行と予測を繰り返しますが、予測は極めて短期的であり、計画とは区別すべきです。

◆ 誤解 その2 情報がそろわなければ計画はできない

「情報が少なすぎて計画できる状況にありません」
これは、計画嫌いの組織でよく耳にする逃げ口上です。
「うちの業界には特殊事情があって、情報はプロジェクトがかなり進んでからでないと集まってきません。立ち上げ当初に計画を立てることなど不可能です。教科書通りにはいかないのです」

自分たちは特別なことをやっているのだという自負は悪いことではありませんが、だからといって、計画をしないことにはつながりません。プロジェクトは、同じことの繰り返しではないからこそ「プロジェクト」なのです。程度の違いはあっても、立上げ当初に十分な情報が揃っているということなどあり得ません。
情報の欠落を想像で補ってこそ計画です。想像のない計画、情報がすべて出揃った後の計画など、むしろ意味がありません。

◆ 誤解 その3 いったん計画を作成したなら、それを変更してはいけない

計画通りにものごとが進まなかったとしても、それが失敗に直結するわけではありません。しかし、この段階に計画の更新を怠ってしまったのでは、実態は計画とどんどんかけ離れてしまい、手を付けられない状況(=コントロールを失った状況)に陥ってしまいます。

「皆で合意した計画を変更するなどけしからん」
これは時代錯誤の発想で、変化が前提の現代では通用しません。プライベートなシーンではいざ知らず、ビジネスシーンでは対面を考えるより実益をとるべきです。

プロジェクトは進行に伴って手にする情報が増えます。過去の計画は実績に置き換わり、想像は事実でとってかわられ、その結果、将来の選択肢は絞り込まれます。だからこそ私たちは進捗会議を通じて最新情報を収集し、計画を更新するのです。
立上げ当初には情報が少ないなりの計画のやり方が、中盤には情報を活かした確度の高い計画のやり方が、それぞれ存在するわけです。

計画は変更してはいけないどころか、まったく逆で、変更しなければいけません。
計画を大事にするなら、これが正解です。

3つの例を取り上げて説明してきましたが、計画に対する誤解は皆さんの職場にもあるはずです。誤解が大手を振って歩き回り計画者を悩ませる、こんなことは日本の職場では日常茶飯事です。
誤解に打ち勝つ強い気持ちで計画に取り組みましょう。

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