ブルーオーシャン戦略は、時代を生き抜く老舗に学ぼう
食事処にしろ、服飾ブランドにしろ、私は老舗に目がありません。見た目や機能はさほど変わらなくても、そこはかとなく伝わってくる本物感が堪りません。少々値が張ろうと、代えがたい歴史の重みやドラマがそこにはあります。
果たして、老舗と二番煎じは何がちがうのでしょうか。
老舗の多くは、何もないところから価値を作り上げた人たちです。試行錯誤を繰り返すことで、それまでになかった価値を創り上げることに成功したわけです。これに対し、二番煎じは、老舗が創り上げた価値をそのまま真似した人たちです。
二番煎じのイメージは、以前に取り上げた「欧米型のベストプラクティスを鵜呑みにして失敗してきた日本企業」と重なります。
老舗と二番煎じの差は、事業環境が激しく変化したときに表面化します。
老舗には、自ら市場を分析し、お客様を観察した結果として価値に到達した経験やノウハウ、開拓者精神があります。価値が認められるのには理由があり、その理由を理解しているのが老舗なわけです。
これに対し、二番煎じは目に見える価値を忠実に再現したに過ぎません。価値の背景にあるものを知っているわけではないのです。事業環境が変化したとき、老舗はかつて得た経験やノウハウを駆使してこれに対処できますが、二番煎じはそうはいきません。
かくして、ノウハウや開拓者精神が脈々と受け継がれることで、老舗は長年に渡り反映するわけです。
老舗がかつて行ったことは、価値提供に向けた概念化に他なりません。
「誰が不便を感じているのか」
「何が不便なのか。どうして不便なのか」
「その不便を解決するにはどうすればいいのか」
「私たちにできることは何か。私たちはいま何を持っていて、これから何を手に入れなければならないのか」
「どうやって価値にまとめ上げ、どうやって困っている人たちにそれを届ければいいのか」
できあがった概念モデルは試行錯誤を通じてノウハウの一部となり、組織に受け継がれてきています。彼らはこの過程で、洞察、すなわち本質を見極めることに成功したはずです。
お客様の要求に100パーセント応えることができたとしても、それだけでは本質には行きつけません。老舗はお客様を観察することで、お客様すら気付いていなかった「片づけたい用事(≒要求)」を見つけ出すことに成功したわけです。
松下幸之助は、自転車店に勤めていたときに市電が走るのを見かけ、その便利さに驚き、「これからは電気の時代になる」と直感したそうです。大ヒット商品の二股ソケットは、観察と工夫を繰り返す中で生まれた新しい概念がかたちとなったものなのでしょう。
この開拓者精神が忘れられたとき、老舗は危機に瀕することになります。
成功者やヒット商品の真似をするのは簡単ですが、目に見えるものがすべてではありません。その陰に隠れた開拓者としての情熱と努力を見逃してはいけません。
かつての大量生産の時代に社会人となり、物欲主義を叩き込まれてきた私たちの世代には、これはなかなかハードルの高い理屈です。
しかし、行動を起こすからには、私たちは老舗を目指し、ドラマを生み出すべきだと思います。ブルーオーシャンを目指すというのは、そういうことなのです。
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