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「正しいことを言えば理解してくれる」は今や通用しない(2/2)

【ポイント】

  • ビジネスの世界では「言ってなんぼ」ではなく「伝わってなんぼ」である。これに気付かなければ、大きな仕事は成し遂げられない。

  • 自分が正しいと思っていることを正しく伝えるには、正しいことを正しく理解してもらうためのシナリオが必要となる。

  • シナリオづくりには相手が大事。大きな仕事にはたくさんのステークホルダー(=利害関係者)が関わる。彼らはそれぞれに立ち位置が異なる。


前回は「正しいことを言っているのに、皆が理解してくれない」という発言を起点に、ビジネスで大切なのは「正しいことを言うこと」ではなく、「正しいことを相手に正しく理解してもらうこと」であると書きました。
 
要は「言ってなんぼ」ではなく「伝わってなんぼ」なのです。
 
正論を理解してもらえないとき、訴えかけたい相手は自分と同じ場所からその景色を見ているとは限りません。そんな時に心がけるべきは、相手や相手の置かれている状況を理解することです。
 
自分が正しいと思っていることを正しく伝えるには、正しいことを正しく理解してもらうためのシナリオが必要とまります。
 
そんなわけで、今回はシナリオづくりについて書きます。
 
例を挙げましょう。
 
[伝えたい事]
自前主義では通用しなくなった
 
[要素分解]
自前主義では通用しなくなった
     |
     + - 市場はさらなる低価格と新鮮さを求めている
     + - 市場はこれまでの倍以上のスピードで変化している
     + - すべて自前では、各分野の専門家に勝てない
     + - 自前主義は価格を押し上げ、開発期間も縮まらない
     + - 組み合わせ型ベンチャー企業が勢力を伸ばしている
 
[シナリオ]

1.   市場が変わったことを相手に共感させる。

  • かつての市場は変化のスピードが遅かった

  • 顧客は製品の機能や性能に満足していなかった

  • このような市場環境を背景に、私たちは自前主義で機能や性能を向上させ業界トップの地位に上り詰めた

  • 技術の進歩を背景に製品の使い勝手は向上し、低価格化は進み、市場は大幅にすそ野を広げた

2.   市場を形成するプレイヤーが変わったことを相手に共感させる。

  • 市場の圧力は製品のモジュール化を促し、それぞれの分野で専門特化型企業が現れた

  • 彼らは低価格と対応スピードを強みに勢力を拡大した

  • 専門特化型企業をうまく活用すれば、資本や技術がなくてもブランドオーナーになれる時代になった

  •  商品企画力に軸足を置くベンチャーが現れ、そのスピード感は若者層を中心に受け入れられている

3.   競争基盤が変わったことを相手に共感させる。

  • 市場は急激に成熟期に向かっており、私たちが提供してきた『こだわり』はかつての輝きを失った

  • すそ野の顧客層は、低価格と新鮮さを求めている

4.   危機感を相手と共有する。

  • 私たちが得意としてきた成熟度の高い顧客層の市場も、近い将来、大半がベンチャーに飲み込まれるだろう

  • これまでのような自前主義では、新たな戦いには勝てない

  • もし自前主義でいくなら、劇的な変化を成し遂げる必要がある


正解のある問題に慣れている人には、このような面倒な説明は苦痛かもしれません。「こんな面倒なこと、やっていられないよ」と言う人もいるでしょう。
しかし、私は心の中で「そんなことだから、あなたはいつになっても大きな仕事を任されないのですよ」と言います。
 
大きな仕事には、たくさんのステークホルダー(=利害関係者)が関わります。そして、彼らはそれぞれに立ち位置が異なります。
 

立ち位置が違えば見える世界も違い、それが問題意識や価値観の違いにつながります。意見を受け入れる背景が違うわけです。
正しいことをシンプルに「正しい」と伝えただけでは、理解のされ方が人それぞれになってしまうのも無理はないのです。
 
「私は正しいことしか言っていません。理解できないのは、単に相手の問題です」と考える人は、一度、手を胸に当ててこれまでの出来事を振り返ってみてください。
きっとピンとくるはずです。
 


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