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よりぬきしりんさん

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#詩

詩/ てじな

詩/ てじな

わたしはしあわせです

まずはきめるわけです
そう
いまここできめましょうか
すると
すべてのものさしが
むいみになる
ものさしこそ
しょあくのこんげんですから
わたしであること
これ
すなわち
しあわせということ
I am happy へのげんそうを
かなぐりすて
I am happiness になるですね
だれにも
そのなふだをとりあげる
けんげんはない
なんでもかんでも
そのはこにいれちま

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詩/ How To Sing

詩/ How To Sing

喉かききつて飛ぶぼくの血が
空を振るわすソプラノでせう
息絶えだえに鳴る喉笛が
大地を揺するテノールかしら
はたらき果てた鼓動のつひは
ぼくを弔ふバリトンでした

そのやうに歌ひませんか
そのやうに歌ひませうよ
ねえ

わたく詩 11/26

わたく詩 11/26

鼠色

鼠色に鼠色を混ぜて鼠色のカンバスに塗りたくる。癇癪を起こした鼠色の少年はまだ乾かぬカンバスに身を横たえる。何もかもが哀しくなった少年は鼠色のコートを羽織りお気に入りの眼鏡をかけて鼠色の穴を出る。はるか彼方には七千色の世界が見える。鼠色の百均で買った七千色眼鏡の効果である。鼠色の北風に襟を立てて少年はただ歩き歩き歩き歩く。鼠色のブーツは底が剥がれて鼠色の麦畠に脱ぎ捨てる。なぜ歩くのかと問いか

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断簡1

断簡1

在ることは幸福であるということ
であるので
わたくしは幸福である

在ることが幸福であるという
(やや老練な)
心理に想到し
故に
わたくしはもう充分に
幸福である

それはもはや後戻りも磨耗も錆びもせぬ
(真理は物質ではないため)

死は
(喩えだ)
他の大事な誰かに
この真理を継承する唯一の
儀式だ