やさしさ

#4 悩みの種は、学問の種

こんにちは!
毎週金曜日開館の【Vivid Books】へようこそ!

先々週はPCの調子が悪く、先週は寝落ちして金曜日にあげられなかったので、二週間ぶりの投稿となります。

実に、怠惰、デスね。


さて、今週は、
言いたいことがあるのに言えない、人間関係のもどかしさに疑問を持ち、3年生の個人研究の時に読んだ現代の「やさしさ」にせまる一冊です!

目次
1.今週の一冊
2.要約
3.学び・気づき
4.さいごに

1.今週の一冊

タイトル:やさしさの精神病理
作者:大平健
出版:岩波書店、1995


2.要約

今の社会には「やさしさ」があふれています。
胃にやさしい食べ物、肌にやさしい石鹸、やさしく解説する参考書、衣服にやさしい洗剤など、モノやヒトに対して「やさしさ」が求められている時代なのです。

人間関係にもやさしさが求められます。
厳しい親、こわい教師、叱る上司は評判があまりよくありません。やさしい親、やさしい教師、やさしい上司が人気なのです。

この本は精神科医である大平さんが、親に塾に通いたいと言わないやさしさ、好きでもないのに結婚してあげるやさしさ、グチを受け止められないやさしさ、黙って返事をしないやさしさなどを持ち、生きづらさを抱えた患者とのやりとりが描かれています。その中で、行き過ぎたやさしさに疑問を持ち、やさしさの意味がねじれてしまっていることに気づきます。

現代のやさしさとは、お互いを傷つけないやさしさなのです。

そしてこのやさしさが、滑らかな人間関係を築く上で大切なのです。


3.学び・気づき

①やさしさによる人間関係の変化
やさしさの弊害

この本を読んでよかったことの一つは、普段感じる人間関係のもどかしさが、「やさしさ」の意味が変化したことによるものだと納得できたことです。

この本では、旧来のやさしい関係を「ホット」、現代のやさしい関係を「ウォーム」と例えています。相手の気持ちに寄り添い、積極的に相手を理解するために言葉をかける「やさしさ」から、相手の感情を察して近寄らないことが「やさしさ」とされるようになったというのです。

「これを言ったら相手は傷つくんじゃないか?」
「ここで泣いたら相手は困惑するんじゃないか?」

こういったことを自分の言動の前に考えるようになっているんですね。


これはこれで悪いことではないと思います。しかし、このような「やさしさ」が人間関係の標準になると弊害もあるのではないかと思ったのが二つ目の学びです。

例えば、ゼミの教授が「学生たちはバイトやサークル、就活などに忙しいだろう」と思って課題を少なくしてくれたり、ゼミの欠席を許してくれたりすると多くの学生は喜ぶでしょう。

一方で、「この課題に取り組む中で学生たちにこのような力をつけてほしい」と思って考えて課題を出す教授がいても、学生にその意図を理解できなければ、即「ダルイ先生」認定されることになるでしょう。

本に沿って説明すると、前者は現代の「やさしい」(ウォームな)先生、後者は旧来のやさしい(ホットな)先生という比較になります。

他にも、子育ての場や仕事の場でも、このような「やさしさ」が蔓延することで、その「やさしさ」に甘える人の成長や社会の発展を阻害することになるんじゃないかと、僕は危惧しています。

アイドルグループ欅坂46の『不協和音』の歌詞にも、

ああ 調和だけじゃ危険だ
ああ まさか 自由はいけないことか
人はそれぞれバラバラだ
何か乱すことで気づく
もっと新しい世界

とありますが、過剰な「やさしさ」が僕たちの目の前にある問題や課題を見えないようにしているとすると、これは大きな問題になりうるのではないでしょうか。

単純に他人に合わせすぎたり、自分の気持ちを伝えられないってストレスたまりますしね。こんな感情を持った個人や社会がいつか爆発するかもしれません。

「かわいい子には旅をさせよ」とか「獅子の子落とし」みたいな厳しさも、現代には必要なんじゃないでしょうか。


4.さいごに

人間関係で悩んだときは、その感情を仲の良い友達に話すことも大事ですが、自分と同じような悩みを持っている人は世界中に、過去にもたくさんいるはずです。

だからこんなときこそ僕は本を読みます。割とアカデミックな。

これは人間関係に限りませんが、「なぜこんなことが起きるの?」が分からない状態では感情に頼るしかありません。でも僕はだいたい、「あの人の考えは1990年代のバブル崩壊以降の社会によって生まれた多くの若者の考え方なんだな」と、本を読んだり研究したりしてしまえば、なんとなくスッキリしてしまうのです。その人の問題を社会のせいにしてしまえば、その人への嫌悪感もなくなりますし。(笑)

「これはこうゆうものなんだ」と自分や自分を取り巻く環境を客観的に捉えると、その悩みはいくらか楽になる気がします。

そもそも「疑問を持ったことを科学する」のが学問なわけですしね。

だから逆に、論文のテーマが浮かびません~みたいな人は、好きなものではなくて、「人間関係で嫌だったこと」や「社会の気に入らないところ」に注目すると意外と浮かんだりするかもしれませんね。


ハイ、というわけで皆さん学問に勤しみましょう!という学問のすすめでした~。(笑)


来週は旅行に行くため一週間お休みします。

次の定期投稿は再来週の水曜日【キャリアデザイン学超入門#6】です。
それではまた。


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