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7年後の君へ

能代工業を7年ぶりにセンターコートに導いた男たち

先日、ダブドリnoteの連載で、この企画をやらせてもらった。
2014年、当時全国でなかなか勝てなかった能代工業を7年ぶりのセンターコートに導いた4人のインタビュー企画。

アメリカTBLのダラス・スカイラインでプレーする猪狩渉、秋田でスキルコーチをする渡邉竜也、Bリーグサンロッカーズ渋谷でプレーする盛實海翔、Bリーグ秋田ノーザンハピネッツでプレーする長谷川暢。

7年ぶりにセンターコートに立った日から、7年が立った今。
彼らはどんなことを想い、バスケと向き合っているのだろうか。

7年がキーワードになり、この企画は始まった。

何を隠そう。僕自身、7年前。センターコートに戻ってきた能代工業を現地で見ていた高校バスケファンの1人だった。

まずはこの企画に4選手が快くインタビューを受けていただき、そしてBリーグの2クラブの全面協力をいただけたこと、能代ミュージアム様が写真提供をしてくれたことを心から感謝したい。

そして、この企画を始める前からある意味、当時キャプテンだった長谷川暢が全部持って行くんだろう…。いい意味でそんな気がしていた。
しかし、インタビューをするにつれて、それが違ったと僕は思った。

みなさんはアスリートや芸能人のインタビューを読む時、どんなことを期待して読むだろうか。またはそこから何を感じ取るだろうか。

もちろんその企画によって違うが、僕は「アスリートも変わらず悩みと向き合っているんだな」とある意味で一般人である僕らと変わらない部分に共感を覚え、けれどそれをさまざまな努力で乗り越えて行く姿に感動を覚える。

その中で、この能代工業企画で1番の鍵となったのが、渡邉竜也だったと私は感じた。

他の3人は現在プロバスケ選手としてコートで戦っている。
いくらバスケットボールがコートと観客席が近いとはいえ、そのラインを超えた先は戦いの場であり、僕らには想像し得ないプレッシャーや葛藤と戦っていることは想像に容易い。要するに彼らは特別な存在だと僕は思っている。

その中で、渡邉竜也はある意味、僕らと割と同じ世界線にいる。
その彼の経歴を振り返れば、能代工業を卒業後、岩手大学に進学し、実業団でプレーをしてから、バスケをやめ、就職をし、そして今は兼業でスキルコーチをしている。

彼はプロ選手ではない。そして、一度バスケから離れた人間なのだ。

そんな彼の視点はこのインタビューの中で、最も僕らの感覚に近いものを持っている。

彼のインタビューには能代工業というプライドを持ちながらも、プロになった仲間達をシンプルにすごいと認めつつ、悔しいことは悔しいと感じる。けれど、どこかで1ファンのような目線を持っている。

僕もそうで、今は選手と近しい立場にいるかもしれないが、彼らの言葉やプレーに勇気をもらう時が多々ある。

渡邉竜也の言葉は1番僕らに近しい目線で当時を語り、認めざる得ないものを認める素直さがあった。

このインタビューで初めて渡邉竜也と話したが、インタビュー中に1番表情が豊かだったのも渡邉竜也だった。

能代工業への憧れを嬉しそうに語り、仲間達の活躍を自分のことのように喜び、当時の悔しさを思い出し顔を歪ませ、彼らから得たこと、彼らと能代工業で過ごして得たことを誇りを持って話してくれた。

彼の言葉はどこかリアルで、共感を感じるものだったように思う。

そして、何よりさまざまな経験をして、最後は大好きなバスケットボールに戻ってきたところも、多くのバスケ好きに重なるのではないだろうか。

人生は必ずどこかで何かを諦める。

猪狩渉の夢や理想を追いかける姿に心打たれるのは、自分がどこかでそれらを諦めたからではないだろうか。

盛實海翔のように華麗なプレーをしたいと願うのは、それができない自分に歯痒さを感じていたからではないだろうか。

長谷川暢のように真っ直ぐな気持ちで秋田へ感謝の想いに心が震えるのは、伝えられなかった感謝があるからではないだろうか。

その全てを渡邉竜也は身をもって感じ、そして少し距離をおき…巡り巡ってバスケットボールに戻ってきたのだと僕は思う。

7年前を思い返す。

今、思えばなんであんなことが言えなかったんだろう。
どうして自分の気持ちに素直になれなかったんだろう。

そんなことを思う僕がいる。

もちろん彼らにもそんな経験はあるのだろうけど、僕から見る彼らはそんな全てに打ち勝ち、成し遂げてきた特別な人に見える。

けれど、それを僻むことも嫉妬することもなく、少しの勇気を出せば、自分だって踏み出せることを渡邉竜也が教えてくれた。

7年前の自分へ。

あの日、うまく表現できなかったあの気持ちは7年後。
ちゃんと思い描いた未来に繋がっているから。

そして、このインタビューが、彼らのこれからの7年で何かに迷った時の
道標になりますように。
そんな願いを込めて。

#能代工業あれから7年


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