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長崎県東彼杵郡東彼杵町にて、お菓子屋さんをしています。 作る物に想いを込めて、想い出を…

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長崎県東彼杵郡東彼杵町にて、お菓子屋さんをしています。 作る物に想いを込めて、想い出を綴ながら、お作りします。 こちらに出てくる商品は、お店やオンラインでお買い求めできるようになっています。 店舗は長崎県東彼杵Sorrisoriso・Tsubame Coffee内。

記事一覧

春ちゃんの夏。

長崎市内、アーケードを越えて、仲通りを進むと、可愛らしいお茶屋がある。 お茶が好きで好きでしょうがない春ちゃんの城だ。 何組かお客さんが来ると、肩を寄せ合う形と…

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2週間前
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きらきら。

絵の具みたいなお菓子だな。 初めて見た時、そう思った。 ショーケースにはカラフルなパートドフリュイが並んでいて、表面のグラニュー糖が光に反射してキラキラと輝いて…

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2か月前
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甘ぇかしバナナパウンド 

バナナブレッド、バナナケーキ、バナナパウンド。 いろんな呼び方がされるということは、いろんな国で作られていて、好きな人が多いのだと思う。 アメリカにはナショナルバ…

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3か月前
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オストゥアンデル

僕の祖父は真面目だった。 その上に手先も器用で、丁寧。 仕事を引退しても、勉強し続けていたし、いろんなものを自分で修理したり、機械も好きだった。厳しく言われた記憶…

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4か月前
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大阪ダックワーズ

しっかりもので、みんなの中心のこうたろうさん。 物静かで穏やかだけど、やさしさにあふれていたひろしさん。 いっつもいっしょにいてあそんでいた、親友ぽんちゃん。 専…

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4か月前
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フィナンシェ・ナチュール

このまち、東彼杵に来て3年になった。 恥ずかしながら、3年前まで、ほぼ来たことがない町だった。 コロナが社会におおきな影響を与えていたころ、故郷長崎のお茶の名産地…

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4か月前
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おもやいクッキー

私はおばあちゃん子だった。 おうちでも末っ子だったけど、親戚を合わせても僕が一番下。 祖母は特に僕を可愛がっていて、小さい頃は何をするにも一緒だった。 おやつを…

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4か月前
6

はじまりのおはなし。

だいすきでしょうがない街、長崎。 嫌いで嫌いでしょうがない街、長崎。 この街で生まれ育って、何不自由なく、育ててもらい、 家族にも、友人にも、先生にも恵まれた。情…

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7か月前
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春ちゃんの夏。

春ちゃんの夏。

長崎市内、アーケードを越えて、仲通りを進むと、可愛らしいお茶屋がある。
お茶が好きで好きでしょうがない春ちゃんの城だ。

何組かお客さんが来ると、肩を寄せ合う形となるお店には、全国のお茶好きから、近所の可愛らしい小さなお客様まで多様な人がやってくる。

ひとりひとりのお客さんに、一煎一煎お茶を淹れながら、自身で選んだ全国各地のお茶を案内している。ふんわりと、やわらかい言葉と空気で案内している。

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きらきら。

きらきら。

絵の具みたいなお菓子だな。

初めて見た時、そう思った。
ショーケースにはカラフルなパートドフリュイが並んでいて、表面のグラニュー糖が光に反射してキラキラと輝いていた。

実際に学校の実習で作った時は、可愛らしい見た目に反する糖度と、しっかりとした酸味に驚いたけど、この糖度と酸味こそがこのお菓子の肝なのだ。

もともとフルーツを保存するために作られたというこのお菓子は、砂糖と酸、そしてペクチンの力

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甘ぇかしバナナパウンド 

甘ぇかしバナナパウンド 

バナナブレッド、バナナケーキ、バナナパウンド。
いろんな呼び方がされるということは、いろんな国で作られていて、好きな人が多いのだと思う。
アメリカにはナショナルバナナブレッドデーというものがあるらしい。

僕は火の入ったバナナが好きで、二十歳くらいのころから、たまにバナナパウンドを作っては、少しずつ食べていた。僕にとっては、とても日常的なおやつで、商品として出したことは、このまちに来るまでなかった

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オストゥアンデル

オストゥアンデル

僕の祖父は真面目だった。
その上に手先も器用で、丁寧。
仕事を引退しても、勉強し続けていたし、いろんなものを自分で修理したり、機械も好きだった。厳しく言われた記憶も少なくて、穏やかだった。

ある日、兄と僕と祖父とで話をしているとき、祖父が、

「お饅頭ってフランス語でなんていうかわかるか?」

もちろん僕たちは知るわけもないので、ポカンとしていると、

「オストゥアンデル」

と祖父が教えてくれ

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大阪ダックワーズ

大阪ダックワーズ

しっかりもので、みんなの中心のこうたろうさん。
物静かで穏やかだけど、やさしさにあふれていたひろしさん。
いっつもいっしょにいてあそんでいた、親友ぽんちゃん。

専門学生のころ、大阪に住んでいた。
もう10年くらい前のことで、大阪時代のことは、この3人に感謝が尽きない。

パティシエになると決めて大阪に行き、毎日が忙しかった。
もちろん学校も授業や実習でびっしりで、アルバイトも週5~6入っていた。

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フィナンシェ・ナチュール

フィナンシェ・ナチュール

このまち、東彼杵に来て3年になった。
恥ずかしながら、3年前まで、ほぼ来たことがない町だった。

コロナが社会におおきな影響を与えていたころ、故郷長崎のお茶の名産地として観光で訪れたことがあって、その時の投稿した自分のInstagramにはこんなことがかいてあった。

「ここらへんに住めたらな、とか思ったり。ここら辺でお店できたらな、とかおもったり。」

この投稿の一か月後にはこの町に引っ越して、

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おもやいクッキー

おもやいクッキー

私はおばあちゃん子だった。

おうちでも末っ子だったけど、親戚を合わせても僕が一番下。
祖母は特に僕を可愛がっていて、小さい頃は何をするにも一緒だった。

おやつを食べるとき、口癖のように言っていた言葉がある。

「お兄ちゃんとおもやい食べなさい。」

4つ離れた兄と、よく食べ物をおもやいで食べていた。

もやいというのは、長崎の方言で、「共有する。」とか、「一緒に使う。」とかいう意味であって、食

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はじまりのおはなし。

はじまりのおはなし。

だいすきでしょうがない街、長崎。
嫌いで嫌いでしょうがない街、長崎。

この街で生まれ育って、何不自由なく、育ててもらい、
家族にも、友人にも、先生にも恵まれた。情緒にあふれ、個性的。
すごくいい街だと思う。

出会った人も、いいひとばかり。私の世界には、私を知る人しかいない。
みんなが僕を知っていて、僕もみんなを知っている。
このまちが世界の全てだった。
すごく田舎でもあり、すごく都会でもある。

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