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LGBTユースとデートDVの実態

2020年の暮れ、アメリカの調査機関から驚きの結果が報告された。

LGBTユース(性的マイノリティの若い層)は同じ年代であっても、異性愛者と比べて10%以上性暴力被害に遭いやすいという研究結果が発表されたのだ。

まず、「デートDV」とは婚姻関係にないが、交際関係にあるカップル間で暴力的、または精神的な方法で交際相手を支配したりすることであり、その中には性暴力が大きな要素を占めていることが多い。

日本においては、現在ではLGBTユースを包括したデートDVの実情はあまり明らかにされていない。
調査対象として想定されているケースが現在も少ないためだ。

今回、情報ソースとして、アメリカのシンクタンクであるアーバンインスティテュートが行った、最新の調査結果を共有したい。

アメリカの状況と日本の状況を一概に同じだとは言えないが、無視することはできない結果ではないだろうか。


まず、LGBTユースは、身体的暴力と精神的暴力どちらのリスクにおいても高くなる傾向があることが分かったのだ。
直接的な暴力被害にとどまらず、オンライン、携帯等を使用した性的被害(オンラインハラスメント、リベンジポルノ(破局後に元交際相手の裸体などをネット上でさらしたりすること)など)もヘテロセクシャル(異性愛者)の人よりも高い被害傾向がみられた。

次に、アメリカの調査機関、アーバンインスティテュートが行った10代でのLGBTデートDV調査結果の内訳を紹介したい。

調査の対象は5647名のユースを対象に行われた。
この中で、3745名は現在、パートナーと交際関係もしくはすでに交際関係を終了したと回答している。

調査によれば:
・43%のLGBTユース、29%のヘテロセクシャルユースが身体的暴力を受けたと回答。
・59%のLGBTユース、46%のヘテロセクシャルユースが精神的暴力を受けたと回答。
・37%のLGBTユース、26%のヘテロセクシャルユースがSNSなどインターネットを使用したデートDVの経験があると回答。(リベンジポルノ、SNSで裸の写真を送るのを強要されるなど)
・23%のLGBTユース、12%のヘテロセクシャルユースが性的暴行を受けたと回答。
このように、「LGBTである」ことによって、デートDVを受ける割合が倍以上になってしまうという驚きの結果なのである。

とりわけ、トランスジェンダーユースにデータを絞った場合だと、調査に参加した割合に対して、精神的暴力、精神的暴力、サイバー暴力、性的暴行のすべてにおいて被害経験割合がほかのセクシュアリティよりも上回る結果となっていると報告された。

この結果は、決してよその国の事情としてほったらかしにはできない。

私自身も、LGBTに特化したカウンセラーとして活動しており、
多くの同性間パートナーでの暴力相談を受けることがある。

この背景には、同性間カップルにおいて、自分のセクシュアリティを公にしていない場合、
周りに助けを求めにくく、周りもその関係性に気づくことが少ないことなどが挙げられる。

そもそも日本では男性、女性向けに対するデートDVの調査しか存在せず、問題自体が曖昧にされてしまっている社会的背景もあるだろう。

また、特筆すべきはトランスジェンダーユースの被害割合が、他のセクシュアリティに比べてすべての項目で10%以上数値が高かったことである。

また驚くべきことに、トランスジェンダーの性暴力被害という点に着目すると、その多くは親兄弟などからの親近者によるものが30%を占めることも明らかになっている。

日本では、こうした調査はまだ行われた記録がないのだ。
だからと言って、問題が起こっていない、と考えるのは大変危険なことだ。


アメリカは、比較的LGBTユースが性被害になどに遭った際、助けを求めることのできるサポート期間の数も多い。

一方で日本は、LGBTユースがデートDV被害に遭っても、助けを求められる体制も整っておらず、泣き寝入りとなっているケースも多いと考えられる。
問題発覚までに時間がかかり、障害心に傷を負ってしまう子どもも体感として多い。

私自身が性暴力の被験者である。この心の傷は癒えたことなどない。


だからこそ、LGBTユースに対して、適切な性に対する情報、サポート機関が必要であり、迅速な実態調査を行う必要があると訴えていきたい。

出典 https://www.teendvmonth.org/studies-show-lgbt-youth-face-higher-risk-of-dating-violence/

“Study Show LGBT Youth Face Higher Risk of Violence” October 20, 2020

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