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#3 破滅と知って進む 映画「JOKER」

先日、映画業界だけでなくアメリカでは社会問題にもなっているこちらの映画「JOKER」を観てきました。ちなみに僕は関連する大人気作品の「バットマン」や「ダークナイト」といったアメコミは一切見たことがありません。
観たくなった動機は、観賞終えた人の感想が単に「面白かった」「怖かった」「やっぱジョーカー好きだわ。」などではなくて、鑑賞者それぞれが悪役且つ主人公である「ジョーカー(アーサー)」を通して、現代社会や自分自身に目を向けて様々なメディアでコメントを発信している印象があったことが起因として大きいです。

映画という本来エンタメ要素の固まり的存在が観賞後も人それぞれに余韻を与え、議論が生まれる作品はエンタメ性以外にも大きな社会的役割を担っていると思っていて、それを多くの人が観て終わりではなくて自分や周りと一緒に心もモヤモヤを解消しようとする現象が非常に有意義で素敵だと思います。
一方で議論されてもいい映画が視聴者の受け取り方次第で放っておかれる事も多いのが実情です・・・。その辺りについては前回記事で映画「ザ・サークル」というIT系映画を扱って書きましたので、短い為是非読んで頂ければ幸いです。


「破滅と知って進む道」(※以下ネタバレ要素含む?)

悪役としてはイレギュラーなほど絶大な人気も持っているDCシリーズの宿敵「ジョーカー」ですが、本作を観て反響が大きいのもめちゃくちゃわかるなと思いました。ある意味芸名である「ジョーカー」になる前の人間「アーサー」は社会的弱者である孤独な男の人生を追うストーリー。原作にはアーサー時代の話は存在しないので、新たに再構築された完全オリジナルストーリーです。(ちなみにメガホンをとるのは「ハングオーバー!」で知られるトッド・フィリップス監督。正直それだけも十分観たくなる要素(笑))

母思いで優しく、周りを笑わせるコメディアンな"普通の青年"だったアーサーがなぜ史上最低な悪役"ジョーカー"が誕生するに至ったかを、彼の人生、彼の身に起きる様々な事件が彼の心を変えていく事となる話。

劇中には現実社会でも起きている"問題"と沸騰とさせるようなリアリティ要素が充満しており、巧みな映像美やサウンドセンスで観る者を一気に引き込む没入感抜群の映画でした。

後半ではジョーカー非人道的な行動がたっぷり出てきます。しかしアーサー時代の"苦しみ"が観る者それぞれにリンクし得る内容なので、理解できないことは無い。むしろ観る者の当時の精神状態、社会的立場によっていはひどく"共感"しても仕方ない。TOHOシネマズ劇場の隣の席のサラリーマンや学生が暴徒化するんじゃないかと本気で思い背中に冷気を感じたほどです。

一方で、そうさせる描写がいくつかありますが"ジョーカーへの共感"をするのではなくて、"アーサーへの共感"をすべきで、二人は全く別人という見方が必要だなと。後者の場合は、この映画を社会的問題提起として捉える事ができる。
しかし面白いのは、前者の共感も悪意がある訳ではなく、決していい判断ではないかもしれないがそういう気持ちにならざるを得ない。「善」でもないが「悪」でもない。劇中でも「善悪は主観でしかない」というセリフがあります。その通りすぎてぐうの音も出ないです。

じゃあ自分が観たらどういう考えになるか。
試してみたくなりませんか。
そしてどこでも良いのでそれをアウトプットすることが大切。

映画の解釈は当然個人の自由です。

この作品の意味をどう解釈するかはまさにあなた次第。

ただ、あなたの価値観、幸福の尺度、精神状態によっては誰でも"ジョーカー"になり得るだろう。

間違いなく言えるのは、映画史に残る大作ということ。
また大衆の中で鑑賞するスタイルの方が絶対に良い作品なので、是非劇場へ足を運ぼう。


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