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こんな働く場所が欲しかった「パンとスープとネコ日和」

わたしは猫が引くくらい大好きだし、パンも乳アレルギーで市販品はほとんど食べれないが、自宅で作ったパンをほぼ毎日食べるくらい好きだし、カフェなんてワクワクする場所、なんだか知らないが大好きだ。もちろんそこにスープがあるなんて夢のようだ。

だから必然的に「パンとスープとネコ日和」はスキが詰まった御本である。
しかもこの話、世界観、理想過ぎて読んだ後は現実世界に戻りたくなくなる。ドラマを見た時から繰り返しエンドレスで見るほど好きだったが、原作があると知り、それもシリーズ化しているとの事で、読んでみたら、これがもう

「こんな職場ある?」
「こんな経営者いる??」
「こんな従業員いる???」
「こんな取引先ある????」
「こんなご近所さんいる????」
「こんなご縁ある????????」
の連続である。

フィクションなんだから
「いやいや、現実的にはあり得ないし」なんて余計な事は思わず、
フィクションくらいは現実逃避してみたい。
かといって「宇宙へ行く」とか「大統領になる」とか「実はCIAだった」とかいうフィクションにしてもあり得なさすぎなお話でなく、
本当にとある町の小さな小さな界隈での、ありそうな日常だから、なおさら入り込める。

ドラマの話を中心に以前にも書いたが、今回は書籍の方のみのお話。

ドラマの方はこちらをよかったらみてね↓

なぜか、3巻にあたる「優しい言葉」のみ買いそびれて、2巻にあたる「福も来た」まで読んでストップしていたが、先日やっと3巻を手にいれて、ようやく先に進む事が出来た。

ここでとってもざっくりそれぞれの本の紹介を・・・
一応、ネタバレです。

1巻目「パンとスープとネコ日和」

ドラマの原作となった話。
長年出版社に勤めていたアキコは、母の急逝や職場内の環境の変化などから、仕事を辞め、自宅の母が営んでいた元食堂を改装し、新たに日替わりのパンとスープちょっとした副菜のみのカフェをオープンする。
母のお店の常連客とは、まったく異なったお店の方針になった事からぎくしゃくしながらも、近所の喫茶店のママには厳しくもあたたかく見守られ、体育会系の生真面目で働き者のしまちゃんと共に、日替わりのサンドイッチ、スープなどを手間ひまかけて丁寧につくり提供していく。
幼いころから、父は存在せず、母と娘二人で暮らしたアキコは、父がどこかの「お坊さん」であったとは母から聞いていたのだが、どこのまでは知らず、ある日母の元職場の同僚という女性から、アキコの父が(現在は亡くなっている)いたお寺の話をきき、それほど遠くない場所にある寺を訪ねてみる。現在は寺を継いでいる見知らぬ異母兄弟に会いに行くが、結局身分は明かさない。
愛猫たろとの愛しい日々を送りながらも、思いがけず突然の別れが来てしまう場面は、猫と暮らした経験のあるものには、痛いほどわかってしまう切なさ。
出版社時代からの繋がりがある料理学校の理事長先生からも、気にかけてもらいながら、程よくお客様にも来てもらえるようになり、店は続いていく。

私はドラマ版を先に見たので、どうしても比較(比べるというより、あここはこうなんだ程度だが)してしまう。ただどちらの作品もそれぞれある意味別のものなのでどちらも楽しめるし好きである。

原作の方は、アキコの出生(主に父について)の話や、猫のたろの話が割合に多かった印象。

2巻目「福も来た」

マイペースながら日々店を続けていくアキコ。愛猫タロを失った悲しみはいつまでも消えることなく、事あるごとに思い出しは自分を責め、ああしてればよかった、こうしてあげればよかったと涙する。しかし、店に出れば働き者で気遣いが半端なくできるしまちゃんが、あれやこれや近所や通勤途中のネコの写真を見せて励ましてくれている。
近所の喫茶店のママとの距離感もだんだん近くなり、自宅に呼ばれたり、一緒にイタリアンのこじんまりした馴染みのお店へ連れて行ってくれるなど、店外の交流も多い。
アキコの店は、一日暇な日もあったり、お客がひっきりなしの日もあったり波がある。メニューについても検討しつつ、お店についてもしまちゃんと相談するようになる。しまちゃんは仕事は出来るしとても気が利くが、慣れたからと言って変に馴れ合いみたいにはならず、いつまでも初めて来たときのような初々しさだ。そんなしまちゃんとも日々信頼関係は強くなっていく。
物語の終盤、お店の休日に猫を2匹連れて突然しまちゃんがやってくる。近所の家から閉め出されたというその猫たちをを引き取ってほしいと話し、実は他にも何匹もいて、自分や一緒に来たシオちゃん(彼氏?)やしまちゃんの大家さんまでもが、それぞれに引き取ったのだそうだ。
愛猫たろに似た二匹に縁を感じ、アキコは快く受け入れる。
まさしく題名の「福も来た」である。それも、二倍になって。

3巻目「優しい言葉」

愛猫たろの生まれ変わりのような二匹の猫「たい」と「ろん」との暮らしが始まり、たろの思い出に浸る暇もなくわんぱくな兄弟猫の世話に明け暮れる日々。嬉しさも二倍だが、体力も、ご飯も、猫砂も二倍。なにより毛の量も二倍である。とはいえ、アキコはあらたな猫との暮らしに幸せいっぱいだ。そして同じくしまちゃんも二匹の姉妹猫との暮らしに、てんやわんやしながらも、日々アキコとの猫談義に花が咲く。
お店では時々あまり見かけない客層がちらちら現れ始める。とても礼儀正しいのだが、メニューや出した料理なんかを熱心に眺め、メモしたり・・・なんだか様子がおかしいなと思っていると、しばらくして近所に大手フランチャイズ店系列のカフェができたと知る。メニューもパンとスープなど似たような品揃えだ。基本的に穏やかなしまちゃんもこれには珍しく憤慨している。対してアキコはそれで潰れてしまうのなら、自分の力不足、それはそれで仕方が無いが、しまちゃんには申し訳ないなあと感じている。
一方そんなしまちゃんには、「福が来た」の終わり頃に突如登場した「シオちゃん」というボーイフレンドがいて、体育会系のボーイッシュな体格の良いしまちゃんと正反対のようなひょろっとした頼りなさげだけど優しいシオちゃんも、この巻からちょいちょい登場する。しまちゃんとシオちゃんの関係はまるで部活動の先輩後輩のよう、なぜかしまちゃんはシオちゃんへのアタリが厳しい。そんな二人を心配しつつ、お店はフランチャイズ店舗の影響もさほど受けず、変わらぬ日々を過ごしていく。
メニューを少し変えてみたり、喫茶店のママに「愛ある」嫌味を言われながらも臨時休業をしてみたり、マイペースではあるが、アキコなりに考えるところも多い。
立て続けに、ちょっとした知り合いが亡くなり、近頃は「死について」も考えるようになる。そうすると自然と足はあの異母兄弟がいるお寺へ向かう。

4巻目「婚約迷走中」

前巻の終わり頃に、しまちゃんとシオちゃんの結婚が決まり(しまちゃん曰く渋々・・・)アキコも我が事のように喜ぶも、当の本人しまちゃんは相変わらずシオちゃんにそっけない態度。むしろ二人娘(猫)に夢中。結婚はしても、住まいは別、一緒に暮らすなどありえないというスタンス。
そんな中住んでいたアパートの大家さんが入院して、それを機に築年数も相当なアパートは取り壊しが決まり、いよいよシオちゃんと同居か?と思われるも、なんとかペット可の新しい住まいを見つけ、やはりシオちゃんとは一緒に住まない徹底ぶり。
今時というのか、しまちゃんらしいというのか、本人たちがそれでいいならとアキコはおせっかいすることも無いが、どうもシオちゃんは同じ意見ではないらしい。どちらかと言えばシオちゃんをついつい応援したくなるアキコは、お店の事もあるがそんな二人をハラハラ見守る日々だ。
一方近所の喫茶店のママの店にも変化が。以前勤めていたけどお店の常連さんと結婚し退職した「お嬢さん」と呼んでいた看板娘?が、離婚し出戻ってくるという。仕事に復帰しても、服が汚れるから外掃除はしたくない、近所に出前に行けば油を売って30分は帰ってこない、予定があるからと忙しいさなかに飄々と早退する事も多々ある「お嬢さん」に真面目で働き者のしまちゃんはなにかとご立腹だ。とはいえ、「お嬢さん」効果か分からないがママの店もなにかと客入りが増えそれはそれでよい事なのだが、物語の終盤には結局「お嬢さん」はまた辞めてしまう(トホホ)
密かに心配していた近くの大通りにできたパクリ疑惑のスープの店は、いつの間にかかき氷押しの方向に替わっていた。
アキコのふたりの息子、たいとろんの兄弟猫は相変わらず、心配無用なほど元気いっぱい。いろいろ心配事もあるけれどふたりとの時間がなにより癒しのひと時だ。

5巻目「今日もお疲れさま」

ざっくりの割には5冊あるので、なにやら長くなってしまった。。。
ここまで見て下さる奇特な方がいるのかもはや、分からないが(見て下さっていたらありがとうございます!!!)これは、もう自分用の健忘録?でもあるので、まあ、いいやという事で(どういうこと?)シリーズの最新巻
5冊目である。

もう「今日もお疲れさま」っていう題名だけでなんだか癒される。
文庫後ろの説明文にある「自分の体と心を、たまには甘やかしてみませんか?」もまた、癒し。いつも甘やかしちゃってる私はどうしたら、、、(しらん)
お店の方は大繁盛という訳でもないが日々客足が途絶えることなく、順調ではある。そんな時仕入れ先のパン屋さんが店じまいしてしまうという事で、アキコたちはあたふた、次の仕入れ先を探すことに。パンとスープの店である事からこれはちょっとした一大事。しばらくは「パン問題」で頭を悩ますが、しまちゃんのパートナーシオちゃんの仕事関係から、偶然条件がばっちり会うパン屋さんを見つける事ができ一安心。
ご近所のママの喫茶店もインスタで「渋い」と評判になったらしく、若いお客さんも増え、繁盛している様子。暑い時期は「インスタント」ではない、丁寧に入れた本物のアイスコーヒーが評判だ。
たいとろんの兄弟も相変わらず食いしん坊の遊びたい盛り。アキコが部屋に帰ってくると、競い合うようにおねだり攻撃。二匹が満足するまで、それぞれのお腹を同時に水平に撫でてあげる姿は、さながらDJのようだ。
小さな変化や、大きな変化、いろいろあるが「無理せず、時々お休み」しながら日々は進んでいく。

結論:理想過ぎる職場(経営者側・従業員側双方)

もちろん、フィクションである。だからある意味では都合がいいし、あり得ない事、うまくいきすぎている事があるのは否めない。
だとしても、、、、

・ほぼパンとスープだけの昼営業のお店
・こじんまりとして少人数対応のお店
・すぐそばにコーヒーの美味しい喫茶店がある
・店の上は住居になっている
・経営者は持ち家であり家賃の心配はない。立地もそこそこ良い。
・経営者が穏やかすぎる。従業員の事をいつも考えてくれている。
・従業員が優秀すぎる。長く勤めているからって馴れ合いになりすぎず、でしゃばらず、黙々と働き、気も利く。
・取引先に恵まれすぎている(元の取引先のパン屋さんも、新しいパン屋さんも)

などなど、
現実にもこんな環境あってほしいと願わずにはいられない。

ながなが書いたが、結局言いたいことは「こんな環境の職場で勤めたかった」である。

個人的には、パンが好きだし、カフェが好きだから、この設定がベストだが、そこらへんは「和菓子のお店」でも「衣料品店」でも「どこかのなにかの事務所」でもなんでもいい。ようは人間関係。働く環境の話。
働いている人、雇っている側が双方こんな好待遇のところって、ある?
世の中は広いから、きっとどこかにある事を願う(願ってばかりだな)

とにかく、「パンとスープとネコ日和」シリーズはまだ続きがありそうな雰囲気だし、どの巻も慈悲深いスープと美味しいサンドイッチをゆったりと食べているような幸福感が味わえる癒しの1冊である。食後のコーヒーも忘れずに。


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