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”かつては人の営みが”軍艦島で見た混沌

「ここまで朽ちたか」
強烈な重みのある言葉だった。

どんな気持ちだろうか。
生まれ育った故郷が廃れていく姿を、
ただただ見届けると言うのは。

通っていた学校、住んでいたアパート、
手を繋いで歩いた階段、みんなで集まった公園。

まだ、ビルの形も道の名残も残っている。
まだ、当時のグランドが、屋上が、残っている。
でも、もうその場所には二度と戻れない。
もう、修復されることも手を加えられることもない。

かつて立っていた場所に、
足を踏み入れることすら許されない。
見えいても住んでいた部屋にすら入ることも。
1年、2年とただ朽ちる姿を見届けることしか…

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<<経緯>>

2024年3月17日(日)14時26分
私は、念願の軍艦島に足を踏み入れることができた。

東京出身の私だが、2年ほど博多に住んでいた。
博多に住み始めた初期からずっと、
旅の候補地に上がっていたのが軍艦島だった。

そして、今回が最後の九州旅となる。
今年の4月、東京に戻ることになったからだ。

どうしても来てみたかった軍艦島。

「およそ5000人の人々が生活をしていた島」
「当時の東京より給料が高かった生活」
「かつて栄えた、炭鉱のまち」

私にとって、軍艦島はこの世の中で
とても特別な場所に感じていた。
それは宇宙に行ってブラックホールを見る気分。
タイムスリップで江戸の生活に潜り込む気分。

今でこそ、こんな言葉を使うのは不謹慎だと感じるが、
あえて当時の気持ちを赤裸々に書くなら、ロマンを感じた。
好奇心をそそられた。

未知だらけの島。
もう元の形にも別の形にも戻ることのない島。
時が止まったように当時のまま残っている島。
長い年月の中でその時代のその場所にしか存在しない島。
いつなくなってしまうかわからない島。

とても特別だ。

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<<当日の体験談>>

どうやら、軍艦島に上陸できるのは運次第らしい。
そもそも、チケットを取得するのも困難だった。

■軍艦島の上陸方法

軍艦島に上陸するには、私の調べた限り
ツアーに参加するしか方法はないらしい。

そもそも、フェリーはツアー用しか運行がない。
ガイドさん付きで、上陸後も歩行可能な通路を
みんなで歩きながら決められた時間内で散策をする。

最近は長崎市の上陸基準が厳しくなり、
時には上陸できないこともあるとのこと。

ご参考までに、
▼長崎市が定める軍艦島への上陸基準

⑴ 波高(伊王島沖波高計)の上限は0.8mであること。
⑵ 船舶に設置された風速計の測定値が5m以下であること。
⑶ 周辺海域の視程が500m以上であること。
⑷ 運航する船舶の船長が乗船客が安全に乗下船できると判断される状態であること。
上陸基準を厳守し、上陸の判断をさせていただきます。

出典:軍艦島コンシェルジュ https://www.gunkanjima-concierge.com/

世界文化遺産である軍艦島と、
危険の潜む軍艦島を訪れる人間の
両サイドを繊細に守る姿勢を感じた。

私達が行った日は、
雨風が強く、フェリーの中に入ってくるほどだった。
波も激しくガイドさんも「上陸できるかわからない」
と頻繁に言っていてハラハラドキドキした。

因みに、私の友人が訪れた日は
波が高く上陸ができなかったとのこと。
本当に、運次第というところが強い印象だ。

■ツアーについて

ツアー会社は3社ほどあり、
各社基本的に午前と午後の2便の運行をしている。
ほぼ同じ時間に出発をするが、
値段は数千円の差があった。

全ての違いはわからないけど、
ざっと見たところ船のタイプ、参加者の人数は違った。

因みに、私たちは3社の中で一番
価格の低いツアーの予約ができた。
サービスが良く、説明もわかりやすくお土産付きで、大満足だった。
※詳しくは「参加したツアーについて」にて。

■ツアー予約

ツアーの予約は早めがおすすめです。
ネットで予約ができるので、
「軍艦島 上陸」など検索をかけるのがおすすめ。

私たちも、
前日の16日の早朝にチケットを調べたが、

一社だけ17日午後の枠が2席残っていて
奇跡的に予約をすることができた。
本当にギリギリだった。軍艦島のために来たのに…

この土日は天気予報で雨と言われており、
三連休でもない普通の土日だったので
いけると思っていたのだが、誤算だった。

大人気だ。

■私たちが参加したツアーについて

ツアー会社:株式会社シーマン商会
コース  :軍艦島上陸+周遊コース
料金   :3,910円/1人
所要時間 :約2時間(13:30~15:30)

◯集合
午後の便だったので、13時20分までに集合。
建物などの施設はなく、
桟橋に止まっている船に直接集合するスタイル。
精算は、船の中に入ってから会計で行う

会計が終わると、大きな荷物は預かってくれた。
1人位セットずつ、袋を配られる。

▲中には軍艦島のパンフレット、飴ちゃん、石炭のお土産が!

席は早い者勝ちで、
前に室内席、後ろに外席がある。
席に着くと、誓約書に署名を求められる。

誓約書は、
「安全のための注意事項と軍艦島上陸に際しての誓約書」
と言うもので、内容としては傘の持ち込みが禁止など、
約束事が書かれているもの。

◯出発
いよいよ出発!
予約メールにも「13時40分ごろ出発」と
書いてあったが、その通り、人数が揃った
13時30分には出港していた。

この日は風も強く雨の心配もあったので、
波が荒れて上陸許可が出なくなることを
恐れていたため少し焦り気味だったかもしれない。

出発すると、早速ガイドのおじいちゃんが
マイクを使って通り道にある名所を説明してくれる。
長崎は造船が栄えていて、軍艦島以外にも
文化遺産に登録されているものが多く!

出港して軍艦島に向かうまでの
通り道で見られるので、出港してから
ツアーは始まりとても楽しいです。
※進行方向に向かって右に名称が多かった

途中で、軍艦島に関する
ビデオ資料も見せてくれて気分が上がります。

▲途中で見た海軍の船、カッコイイ…

◯軍艦島周りを船で一周
出発後、30分くらいで軍艦島が見えてきます。

突然現れる軍艦島の存在感。
これは実際に見ると感動ものです。
本当に軍艦に見えるんですよね!

まず、軍艦島が見えると近くに止まって、
遠くから軍艦島全体を眺めます。

その時は二階席を開放してくれるのですが、
私たちは左側に座っていたので場所取りに
入らなくても安心して眺められました。
※反時計回りなので左側が良く見えました

軍艦島に上陸しても、
今は規制されていて入れない場所があるので、
上陸したら見られない裏側を船から紹介してくれます。

「端に見えるのは学校です〜」
「あの上にあるのがパチンコとお寺で〜」
「あそこのビルの地下にはデパートが〜」
こんな感じで細かく教えてくれます。

◯軍艦島上陸!
ついに上陸!!!
と、行きたいところですが、、

ここが一番、緊張の瞬間です。
私たちの前に出港していた別会社の船は、
無事に上陸を果たして、「ついに私たちも」
と安心したいところですが。

「前の船が上陸してるからといって、
私たちも上陸できるとは限りません。
これから、長崎市に無線で上陸許可をとります」

とのこと。
どうやら、刻一刻と変化する波や気候によって
都度都度上陸許可をもらっているそうです

ドキドキしながら波に揺られて許可を待ちます。
「皆様、許可、出ました!」
と言うことで、やっと安心!上陸が叶いました。
船内は拍手が上がり、ツアーならではの謎の団結。

余談ですが、当日は小雨が。
軍艦島の中に傘は持ち込めないため、
船の中でカッパを販売してくれます。
確か1枚200円かな?

でも、正直、小さな島で風も強いので。
結局カッパを脱いでる人もちらほら、
私たちは購入しませんでしたが、
結構濡れました。笑

やはり雨が降って傘がないと凌ぎ用がないので
濡れるのが嫌な方はあると安心だと思います。

◯今度こそ上陸!
もうここからの感動は、
ぜひ直接味わってください。
あまり語りません。
百聞は一見にしかずです。

ざっと概要だけいうと、
遊歩道にいくつか見学スポットがあり、
それぞれの場所でガイドさんが
当時の様子や建物の紹介をしてくれます。

説明→5分ほど写真タイム
こんな感じでした。

最後に、集合写真を撮ります。
※公式サイトのブログに載るようです。
 載りたくない人は、映らなくてもいいそう。

これだけは言える。
ガイドさんの説明がとってもわかりやすく
とっても面白い。このガイドさんのおかげで
理解も面白さも何十倍に広がりました。

◯帰宅
見学が終わると、船に乗り帰ります。
座席は、奥から詰めるタイプなので、
同じ席に戻れるとは限りません。


なんと感動なのが、、、

雨と潮風で髪も顔も
びしょびしょベタベタ、、、
ちょっと気持ち悪いなぁ〜と言う感じだったのですが。

船に戻ると、温かいしぼりが!!!
心も、手も、顔も、あったかい。
ほっとした安心感と感動はいいですね。
すごいサービス!

そして帰り道では、
軍艦島や長崎に関連するファイルを渡してくれます。
横から流す式で回ってくるので、
そのファイルを見ながら余韻に浸り、、、

あっという間に到着しました。
最後の最後まで丁寧ですね。

◯解散
とてもとても内容の濃い時間でした。
到着すると解散は意外とあっさり。

まあ、桟橋しかないので、
船を降りたら各々、次の目的地へ。
ゾロゾロと解散して行きました。

■最後に注意点まとめます

・上陸できない日もある
・軍艦島に傘の持ち込みはできない
・雨の日はカッパ持参がおすすめ
 ※船の中でも販売はある
・座る位置は行く途中を楽しみたいなら右側
・軍艦島周遊を楽しむなら左側
 ※2階席も解放してくれますが争奪戦
・帰りの席は奥から詰めるので選べない

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<<上陸してみて>>

「かつては人間の営みがあった」
私が強く感じた、虚しさと美しさ
その正体は未だよくわからない。

私の目に映る軍艦島、この街は、
一言で言うと、廃墟。
暗く、黒く、崩れ、歪み、腐り、
今にも崩れ落ちそうな危うさを持ち合わせていた。

「一つの街」その事実に
理解が追いつかない。

かつてはここに、何世帯もの家族が住んでいたこと。
テレビを見て、学校へ行き、ご飯を食べ
祭りがあり、運動会があり、買い物をしていたこと。

今の自分の生活と
なんら変わらない生活をおくる人間が
ここでその世界を生きていた。

だからこそ、心に残った話がある。
「辛い時、1人になる場所がこの島にはない
そんな時、屋上へいき空と海の広さを感じた」

「軍艦島を離れることが決まった時、
先生は学校があるから見送りができないと言った。
でも、船で出港したら、学校のグランドで
みんなが横断幕を持って見送ってくれたんだ
”この島を忘れるな”と。感動して涙が出たよ」

この小さな町で、
今は誰も住むことのないこの街で、
大切な思い出を残す人がいる。

出来事はそこにいた人にしかわからない。
そこにいた人の記憶にしか残らない。
もしかしたら今自分が住むこの街もこの時もー
自分の中にある記憶も思い出も。

同じように、、、
そう感じると、そこにいた人たちの営みや
かつての栄を想像しないわけにはいかなくなった。

そして、今自分が生きているこの時代、
生まれ育ち、当たり前にある日常…
そんな日常こそが特別で、ちょっと違った見方ができた。

自分の大切な人、大切なもの、大切なこと。
残酷なことに、その「大切」は自分にしかわからない。
どんなに大切なのか、どんな感情を抱いているのか。
それは、自分の感情で自分にしかわからない。

だから、そう言う気持ちを
もっと大切に生きたいと思った。

自分の形で大切なものを愛し、
思い出を作り経験し記憶に留める。
後に何も残らなかったとしても。

自分にとって自分の記憶、
感情や思い出は自分だけのものだから。
そしてそれは紛れもない事実だから。
そうやって生きていきたいと。

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<<余談>>

軍艦島のフェリー出港桟橋から歩いて10分ほどのところに、
「軍艦島デジタルミュージアム」がある。

最近できた施設のようで、
近未来な施設となっていた。

▲当時の様子が資料で感じられる

例えば、ドローンとVRの技術を使って
今や人間が立ち寄れなくなったエリアである
建物の中や屋上の映像を見ることができる。
VRはリアルな映像で本当にそこにいるかのよう。

そのほかにも、炭鉱を掘りに
地下へ行く大画面の映像もあり、
座りながら自分もその一員として
行っているような錯覚に陥る。

正直、軍艦島は訪れても未知が多く、
少し不完全燃焼の気持ちになる。

その気持ちの正体がわからなかったが、
おそらく、建物の外観は見えるけど
安全性の問題で中まで足を踏み入れられなかったり。
当時の生活を実際に見ることもできない。

そういった想像でしか補えない部分を、
このデジタルミュージアムは埋めてくれる。
ここを訪れることで理解はより深まった。

いくなら、ここもセットで行くのがおすすめ。

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行ったことのある方、
これから行く方ぜひ感想聞きたいです、

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