見出し画像

【詩】ありふれた日常への幸福な接近|文と詩:洋々(詩人)@石垣島|人×ことば×詩 vol.8

それは、一連の流れ。

継続的で、不可逆な営み。

個々の『当たり前』が、当たり前として存在している状態。

ひとすじの水流が大きな川の流れの中で存在を見失うように、
積み上がる日々に埋没する。

無くしても気が付かないほど雑多である。
けれども、一つとして欠けることはない。

幸福の一端を担う、小さな小さなカケラ。

久しぶりに太陽が出て洗濯物がカラッと乾いて嬉しかった

たとえば、心澄み渡る晴天の一日。
水も空飛ぶ衣のはためき。

午後7時ごろスーパーに行ったら友達と会った

たとえば、巡り合い。
思いがけない邂逅が生む、瞬間の緊張とそれに勝る喜び。

雨の中、自転車で外出。
レインコートにポツポツ当たる雨の感触を楽しみました

天からの雨漏りも、ほんの彩り。
匂いも、空気も、音さえも、織りなす一欠片のピース。

『当たり前』は、心に映らない。

縁の下を支える柱が揺れて。
温かな床の上にいることに、気付く。

些細な積み重なりは、数字にはならない。
関わりの交差は、記号にはならない。
営みは、文字にはならない。

一欠片の命だから。

戻すことも、減らすことも、
文字でも、記号でも、数字でも。

成り代わってしまったならば、
それは人では無くなるのでしょう。

代替はない、今もここにある。
そこに近付けないのは、あなたは常に中心だから。

瑞々しく、傷付きやすい、揺れる心がいい。

そんなあなたが
いるだけでいい。

参照

“久しぶりに太陽が出て洗濯物がカラッと乾いて嬉しかった”   by AKKOさん

“午後7時ごろスーパーに行ったら友達と会った”   by まじの蕎麦好きさん

“雨の中、自転車で外出。レインコートにポツポツ当たる雨の感触を楽しみました”   by 柚子子さん


この記事を書いた人

洋々(詩人/作家/整体師)
1989年生まれ。『自由に表現できる心を』石垣島を拠点に活動中。PSJ2019年大会で、日本3位。KSJ2021年大会、名古屋大会優勝。静岡でポエトリーユニット『分水嶺』を結成。


▼洋々さんの「人×ことば×詩」記事集です!▼


▼月刊まーる運営のため、「応援まーる」をいただけると嬉しいです!▼

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?