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ワンちゃんとの信頼関係を築いた男の壮絶な人生を描いた話だけど、ワンちゃんが出来すぎてて「そんなうまくいかんだろ」って思っちゃった『DOGMAN ドッグマン』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:22/27
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Dogman
  製作年:2023年
  製作国:フランス
   配給:クロックワークス
 上映時間:114分
 ジャンル:アクション
元ネタなど:ある家族が少年を犬小屋に監禁した実話をベース

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
ある夜、警察に止められた一台のトラック。運転席には負傷し、女装をした男。荷台には十数匹の犬。"ドッグマン"と呼ばれるその男は、半生を語り始めた―。

犬小屋で育てられ暴力が全てだった少年時代。犬たちの愛に何度も助けられてきた男は、絶望的な人生を受け入れて生きていくため、犯罪に手を染めてゆくが、"死刑執行人"と呼ばれるギャングに目を付けられ―。

【感想】

犬をメインにした映画ってこれまでもけっこう作られてきましたけど、動物系って感動的なヒューマンドラマが多いですよね。でも、この映画はそれとは打って変わってダークなバイオレンスアクションになっています。僕は「規格外のダークヒーロー爆誕」っていうキャッチコピーに惹かれて観てみましたが、、、うん、これはだいぶ違いますね(笑)

<これは波乱万丈な半生を歩んだひとりの男の話>

この映画、予告の段階では犬を使って悪いやつらを懲らしめる話のように見えますが、中身を観てみるとそれはただの一要素でしかないことがわかります。じゃあどんな話なのかと言うとですね、犬と信頼関係を築いた主人公が自由を勝ち取っていく物語といったところですかね。物語の終盤で、主人公ダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)は警察に捕まり、拘留場の中で精神科医のエヴリン(ジョージョー・T・ギッブス)に身の上話をしながら、回想という形で幼少期から現在までの軌跡を描いていきます。

ダグラスの人生はかなり波瀾万丈です。父親が闘犬を育てている関係で、幼い頃から家にはたくさんの犬がいて。あるとき、父親の逆鱗に触れて、長い間犬小屋に閉じめられ、犬たちと生活を共にせざるを得なくなって。まあ、それがきっかけで彼は犬との絆を深めていくんですけど。

やがて、ダグラスは養護施設に通うようになり、そこで演劇を教えていたサルマ(グレース・パルマー)に恋をして。彼女がいなくなった後も想い続けて。何年か経って再会したときには、彼女にはすでに夫がいて子供も妊娠していて、長年募らせていた恋心が見事に打ち砕かれて。そんなダグラスを慰めたのもまた犬たちで。もはや、彼にとって信じられる者は犬以外にいないっていう状況がどんどん出来上がっていくんですよ。

大人になってからはドッグシェルターで働いていたダグラスですが、州の方針で閉鎖が決まった後は、数多くの犬たちを引き連れて廃屋に身を隠して。そこで犬たちの面倒を見るために週一でキャバレーで女装して歌うことになって。でも、キャバレーの仕事だけでは賄いきれず、ダグラスは「富の再分配だ」という名目で、犬たちを使って金持ちたちから金品を奪うようになって。

最終的には、犬を使った何でも屋さんみたいになって、ギャングとドンパチやることも。ここだけの要素を切り取れば、確かに「ダークヒーロー爆誕」と言えなくもないですけどね(笑)

<エヴリンとの対比>

そんな話を「うんうん」と聞いていたエヴリン。そもそもダグラスが彼女にペラペラ打ち明けたのは、彼女が同じ痛みを抱えていることを嗅ぎ取ったからなんですよね。エヴリンも父や夫に恵まれず、シングルマザーをしながら精神科医の仕事をこなしてるんですが、家庭に恵まれていないことをダグラスは察知したんです。ずっと犬といっしょにいたからか、人を嗅ぎ分けることにも長けたのかもしれませんね。そして、同じような境遇でも、片や精神科医として働いており、片や犬を使った犯罪者でもあります。この180度違った立場にいるという対比に、人生はすべて自分次第という意味が込められているのか、それとも"運"要素が強いのか、いろいろ考えさせられます。

<出来すぎる犬に若干の都合のよさが(笑)>

ダグラスって、少年時代に犬小屋から脱出できたのも、青年時代に失恋を慰めてくれたのも、最後に拘留場から脱獄できたのも全部犬のおかげなんですよ。まさに、犬こそが彼に自由を与えてくれたようなもので、ある意味神のようなミラクルを起こしてくれる存在と言えたのかもしれません。ただ、脱出劇にしろ、先に書いた金持ちたちからの窃盗にしろ、ギャングとのドンパチにしろ、確かに犬って賢い動物ではありますが、「そんなうまくやれるか?」ってぐらい事がうまく運びすぎてて、ちょっと都合のよさを感じてしまう部分はありましたね。これがコメディならあまり気にはならないんですけど、リアリティ溢れるバイオレンスアクションとなると、少し気になりました。

<そんなわけで>

内容としては楽しめましたが、最初の期待が「ダークヒーロー」だったので、そこだけ違和感のある作品でした。もっと悪を懲らしめる形にしてくれた方が、個人的には好きだったかなあ。あと、この映画は音楽もオススメポイントです。『ゴッドファーザー 愛のテーマ』のボーカル入り版や、エディット・ピアフの『水に流して』はこの作品にピッタリハマっててよかったです。


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