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魔王と呼ばれた織田信長を人間足らしめた点でこれはもう濃姫の映画だと思った『レジェンド&バタフライ』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:7/12
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:東映
 上映時間:168分
 ジャンル:時代劇、ヒューマンドラマ
元ネタなど:戦国武将「織田信長」(1534-1582)

【あらすじ】

政略結婚で結ばれた、格好ばかりの織田信長(木村拓哉)と密かに信長暗殺を目論む濃姫(綾瀬はるか)は、まったく気が合わない水と油の関係。

ある日、濃姫の祖国で内乱が起こり、父が命を落とす。自身の存在意義を失い自害しようとする彼女に、再び生きる意味と場所を与えたのは、他でもない信長だった。そんな信長もまた、大軍に攻められ窮地に立たされたとき、濃姫にだけは弱音を吐く。自暴自棄になる彼を濃姫は鼓舞し、二人は桶狭間の激戦を奇跡的に勝ち抜く。これをきっかけに芽生えた絆はさらに強くなり、いつしか天下統一が二人の夢となる。

しかし、戦に次ぐ戦の中で、信長は非常な"魔王"へと変貌していく。本当の信長を知る濃姫は、引き留めようと心を砕くが、運命は容赦なく<本能寺>へと向かっていく。

<魔王>と恐れられた信長と、<蝶>のように自由を求めた濃姫。激動の30年を共に駆け抜けた二人が見ていた"本当の夢"とは――。

【感想】

東映70周年記念作品として作られた話題の映画です。製作費も"邦画の中では"破格の20億円ということで、東映の本気度がうかがえますね(とはいえ、初日はどの時間帯もけっこう空席が目立っていましたが。。。みなさん様子見なのでしょうか。。。)。個人的には昔から時代劇にはあまり興味がなかったので、この映画もそんなに期待していなかったんですが、これが意外と楽しめたんですよ。ぜひ映画館で観てもらいたい作品です。

<真の主役は濃姫か>

連日この映画の宣伝で、メディアで木村拓哉さんを見ない日はないってぐらい世間では彼に注目が集まっていますが、本編を観ると、「いやいや、これは綾瀬はるかの映画だろ」って思いました。過去に織田信長を描いた映画やドラマは数多くありますが、本作は織田信長を表に出しつつ、実はその裏にある濃姫の手腕を称える映画なんじゃないかと。最近の洋画ではよく見かけるウーマンパワーと言うべきか、濃姫あっての織田信長でしたからね。邦画でこういう強いとかかっこいい女性を描くのってあんまりなかったので、そういう意味では革新的なんじゃないかなーとも感じました。

ちなみに、濃姫を演じた綾瀬はるかさんですが、『戦国自衛隊1549』(2005)という映画でも濃姫を演じているんですよね。それでいうと、木村拓哉さんも『織田信長 天下を取ったバカ』(1998)というTBSのドラマですでに織田信長を演じており、そのドラマでは濃姫を今作にも別役で出演している中谷美紀さんが演じられていました。

<濃姫の魅力>

物語は濃姫が織田信長のところに嫁いでくるところからスタートします。この濃姫ってのが、腕っぷしが強く、言いたいことはズケズケ言う男勝りな性格なんですよ。格好ばかりの織田信長がケチョンケチョンにやられてしまいます。まったく気が合わない二人ですが、お互いのピンチをお互いが助け舟を出すことで徐々に絆が深まっていきます。さらに濃姫ってすごくできた人でして。彼女が織田信長の窮地を救ったときも、自分の家臣には「私がここにいたことは他言無用。すべては信長殿がやったこと」と彼を立てちゃう。男性目線でこういう女性がいいっていう話ではまったくなくてですね、領地のトップを立てることをサラッとやってしまうところにかっこよさを感じたんです。

織田信長は戦を繰り返していく中で、どんどん人の心を失っていくのですが、それを繋ぎとめたのもやはり濃姫です。決して表には出しませんが、二人の絆は固く結ばれており、お互いにかけがえのない存在になっていったんですよね。だからこそ、最後の本能寺のシーンはけっこう感動的でしたね。織田信長が最後まであきらめようとしなかった理由がまさに彼女でしたから。

<時代劇として気になること>

この映画、いいか悪いかは別として、時代劇だからこそ気になる点もありました。まず、この映画の出来事がすべて史実かというと、決してそうではないことです。そもそも、織田信長も濃姫もその人物像には諸説あるらしく、正解ってのがなさそうなんですよ。まあ、人柄まで詳しく書かれた記録が残っていないから仕方ないのですが。その分、フィクションの世界ではある程度描ける幅が広がるからいいのかなって思ったりもしますけどね。本作も諸説ある中のいくつかを組み合わせて、独自の解釈で進んでいったところもありますから。

次に、戦闘シーンがメッチャ少ないこと。監督が『るろうに剣心』シリーズの大友啓史さんってこともあってちょっと期待していたんですけど、そういう方向性ではありませんでした(笑)個人戦はほとんどなく、合戦シーンに至っては皆無だったんじゃないでしょうか。

あと、妙に洋画を意識したような演出も気になりました。織田信長と濃姫のキスシーンなんて邦画ではなかなかない流れで、「え、そこで?!」とちょっと笑ってしまいます。また、最後の本能寺の変でも某洋画を思わせるシーンがあるんですが、、、多分わかる人はわかるかと(笑)

ちなみに、気になるってことでもないんですが、この映画で個人的に一番ツボだったのが徳川家康を演じた斎藤工さんです。エンドロール観るまで小手伸也さんだとばかり思っていたので、名前を見たとき本当にびっくりしました(笑)

公式サイトより引用

<そんなわけで>

いい意味であまり時代劇っぽくない映画という印象でした。織田信長について、「そういう解釈もあるんだ」っていう発見にもなりましたし。結局、歴史って学校で習う分だと歴史的な事実まではわかっても、そこに関係してくる人たちの人柄まではわからないんですよね。なので、こういう時代劇を観ると、多少の脚色はあれど歴史上の人物がどういう人柄だったのかがわかるので、そこはすごく勉強にもなると思います。この映画、総じて面白いと思ったんですが、尺がかなり長いんですよ。アクションシーンがあまりなくて2時間48分はけっこう覚悟がいりますよ(笑)でも、映画館で観てほしい作品です。

https://legend-butterfly.com/

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