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会いたい人には会えるときに会っておかないと、未練を8000層も重ねて後悔しか残らない人生を歩んでタラレバを語るこじらせクソ野郎になってしまうんだと思った『パスト ライブス/再会』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:38/43
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Past Lives
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ・韓国合作
   配給:ピネットファントム・スタジオ
 上映時間:106分
 ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:監督自身の経験

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。ふたりはお互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。

12年後24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいたふたりは、オンラインで再会を果たし、お互いを想いながらもすれ違ってしまう。

そして12年後の36歳、ノラ(グレタ・リー)は作家のアーサー(ジョン・マガロ)と結婚していた。ヘソン(ユ・テオ)はそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。

24年ぶりにやっとめぐり逢えたふたりの再会の7日間。ふたりが選ぶ、運命とはーー。

【感想】

すれ違う想いを抱えて24年後に再会した男女の行く末を描いたラブストーリーでした。第96回アカデミー賞で作品賞と脚本賞の候補にノミネートされた作品ですが、、、個人的には「うーん。。。」って感じでした。観終わった後にあーだこーだ人と話すには向いていると思いますが、映画として面白いかと聞かれたら、なかなかイエスと首を縦に振りづらい内容だったもので(笑)

<子供の頃のすれ違いは致し方なし>

本来結ばれてもおかしくなかった2人が、結ばれないまま時が過ぎて、大人になってから「もしあのとき……」とかってタラレバを話しちゃうところがこじらせすぎだなと思う話でしたが、ここはハッキリ言いましょう。「おまえら自業自得じゃん」と。これ、監督自身の経験が元になっているそうなので、人様の思い出にケチをつける形になってしまって心苦しいんですけど。。。

終盤でヘソンが言います。「もしキミがソウルを去らなければ……」と。でも、これはもう本人たちの力ではどうしようもなかったことです。ノラの家庭の事情ですから。当時彼女は12歳。仮に自分だけはソウルに残りたいと言ったとしても、自分ひとりで生活していくことは難しかったでしょう。まあ、そのときヘソンが気持ちを伝えていればってのはありますが、12歳じゃね、そんなこと恥ずかしくてできませんよね(笑)

<悔やむべきは大人になってから>

問題はその12年後ですよ。子供のときのように、自分たちの力でどうしようもなかったことは悔やんでも仕方がありません。むしろ、自分たちで何とかできる状態になったときにそれをしなかったことの方がもっと悲惨です。24歳になったノラとヘソンは、SNSをきっかけにしてオンライン上での再会を果たします。これで運命の歯車が動き出すかと思いきや、なぜか2人ともリアルで会おうとしないんですよ。確かにノラはニューヨークにいて、ヘソンは韓国にいるっていう物理的な距離はあります。そんな中で、ノラは「いつニューヨークに来るの?」とヘソンに聞いて、「なんで僕が行くんだい?」という回答ですよ。いや、おまえ行けよって。ヘソンも「いつ韓国に戻って来るんだい?」とノラに聞いて、「あたしはこっちで成し遂げたいことがあるから」という回答。いや、おまえも行けよって。

2人ともそれなりに忙しかったようではあるんですよね。ノラは作家としての仕事があり、ヘソンは中国語の勉強のために語学留学していたようですから。とはいえ、お互いに会いに行こうと思えば行けたはずですよ。しかも、ノラは二度も移住しているから、「ニューヨークでこそ何かを成し遂げたい」という強い意志を持っているのに、ヘソンと話していると韓国に戻りたくなっちゃうからと、彼との連絡を断つことを決めます。まあ、ノラは女心として男性の方から来てほしい気持ちはあったんでしょうけど、、、こうやって2人とも何かと理由をつけて会わなかったんですよね。それで、その12年後に再会して「あのとき会いに行っていれば……」みたいな話をするんですけど、ちゃんちゃらおかしくないですか?これが、例えば病気だったり刑務所に入っていたりで、どちらかが外に出るのが難しい事情があったなら会えなくても仕方ないですよ。でも、この映画はそういうことはまったくなく、2人とも自由に出歩ける状態ではありましたからね。まあ、僕も海外とかまったく行かないので、海を越える距離の相手に会いに行くのは相当に腰が重いんですけど、、、でも、そこまで会いたい間柄なのに会わなかったのは、これはもう本人たちのせいじゃないかと(笑)やるかやらないか迷った挙句にやらないで、それで後々メチャクチャ後悔するって……バカと言っては言葉が強すぎるかもしれませんが、やはり自業自得と言わざるを得ません(笑)それをイニョンという"縁"の話を持ち出して、前世での繋がりだの何だのロマンチックさを演出してましたが、自分たちの後悔を美化しているにすぎないのではと感じてしまいました。

<30代後半という谷間の年代>

そんなすれ違いがあって、再会して、やっぱりお互いに気持ちがあることがわかって、ワンナイトぐらいあるかなって思いましたけど、そういう安易な触れ合いはありませんでした。一時の感情でそれができるほど若くもないし、かといってすべてを受け入れられるほど歳を取ってもいない。30代も後半に差し掛かる年齢というのは、何かを始めるのも捨てるのもしづらい微妙な年代なのかもしれません。演じている人たちも観ている自分もちょうど40歳前後という年齢で共感できるところではありましたね。

先にいろいろ書きましたけれど、自業自得というのは本人たちが一番強くわかっているわけで、だからこそやるせない気持ちになるんでしょう。こういう些細なすれ違いが積み重なって、後々取り返しのつかないことになってしまう人生ってのは、意外と多くの人が経験しているかもしれません。それをうまく言語化・映像化しているからこそのアカデミー賞ノミネート作品なのかなとは思いました。

<そんなわけで>

ある程度年齢を重ねてから観ると、自分の人生を振り返りながら過去に想いを馳せることができる映画になるんじゃないかなと思います。あと、これはもうノラとヘソンを観て一番強く思ったことですが、会いたい人には会えるときに会っておいた方がいいです。この2人だって24歳のときにリアルで再会していれば、その後結ばれたかはわからないにせよ、36歳になってこんなにも後悔することはなかったでしょうから。


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