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【ネタバレあり】娘の命を救うためにズブの素人から医療機器を開発し、結果的に多くの命を救うに至る父の熱意と娘の優しさに涙が止まらなかった『ディア・ファミリー』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:30/69
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2024年
  製作国:日本
   配給:東宝
 上映時間:115分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:ノンフィクション『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』(2024)
公式サイト:https://dear-family.toho.co.jp/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
生まれつき心臓疾患を持っていた幼い娘・佳美(福本莉子)は [余命10年]を突き付けられてしまう。

「20歳になるまで生きられないだと…」

日本中どこの医療機関へ行っても変わることのない現実。そんな絶望の最中、小さな町工場を経営する父・宣政(大泉洋)は「じゃあ俺が作ってやる」と立ち上がる。

医療の知識も経験も何もない宣政の破天荒で切実な思いつき。娘の心臓に残された時間はたった10年。何もしなければ、死を待つだけの10年。

坪井家は佳美の未来を変えるために立ち上がる。

【感想】

思っていた以上にいい映画でした。生まれつきの心臓疾患で余命10年を宣告された娘を助けるために奮闘する父親。娘を持つ身として自分でも同じ想いは持つけれど、イチから医療器具を自ら作るという発想に至るかと言われると、、、わかりませんね。。。

<主人公はあくまでも父親。でもそれがよかった>

この映画のよかったところは2つあるなと思っているんですが、まずは焦点を当てたのが死に直面する娘ではなく、それを助けようとする父親だったことです。邦画の感動的なヒューマンドラマでよく目にする設定って、中高生のカップルのどちらかが病気になって死ぬっていうパターンですよね。『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)以降、とめどなく繰り返される設定で、限りある命を精一杯生きる儚さとやるせなさを感じる一方、個人的にはだいぶ食傷気味でもあります(笑)この映画も、佳美を中心としたラブストーリーだったら多分観なかったんじゃないかなって思います。が、本作で扱っているのはそんな佳美を助けようと躍起になる父親です。同じ娘を持つ身として、若い頃には感じ得なかった感情移入を味わえるかと思って鑑賞したのですが、これが大正解でした。

実は、医療が発達した現代でもまだ完全な人工心臓というのは実現していないそうです。なのに、この映画の舞台は1970年代から始まります。観ている方からしたら、技術的に不可能なことはわかりきっているんですが、そこはもう結果というよりも、それに向けて奮闘する父親の姿に心打たれるわけですよ。どの病院に行っても娘の手術は断られ、いつできるかもわからない人工心臓に望みを託すしかない現実。これが単なる研究開発だけなら、悠長に構えていても問題にはならないのかもしれません。でも、佳美には"10年"というタイムリミットがあります。大学側の承認を待っている時間などありませんよ。だから、宣政は自費で高額な設備をこしらえ、1分でも1秒でも早く人工心臓の実現に向けて開発を進めたんです。彼の持つ危機感や焦燥感というのは、本当の意味では誰にも共感されなかったでしょうね。事を成すには、"期限"が必要であるということを改めて痛感する瞬間でした。

<辛い現実があっても前に向かって歩みる続ける>

もうひとつのよかったところは、、、以下、ネタバレになりますのでまだ知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。





















表現がいいかどうかはさておき、娘の死が通過点であったことです。残された人生を家族楽しく過ごせて束の間の幸せを感じられてよかったという終わりではなく、娘のために得た人工心臓開発の知見をIABPバルーンカテーテルの開発に活かし、多くの命を救えたことです。なんとか成人を迎えることができた佳美ではありましたが、心臓以外の臓器が弱ってきており、仮に人工心臓を埋め込んだとしてももう完治は不可能という状態になっていました。今まで自分のやってきたことは何だったんだと、すべてのやる気をなくした宣政ですが、佳美の「私の命はもう大丈夫だから、お父さんの知識で多くの人を助けてあげてほしい」という旨の言葉で、再び立ち上がります。このシーンはもう涙が止まらなかったんですが、父娘のお互いの愛情があるからこそできることだなあと感じました。

<そんなわけで>

いわゆるお涙ちょーだい系の話ではあるんですけど、愛する娘が亡くなって終わりではなく、それを糧に前に進む父親の姿がとても心に残る映画でした。だからか、明確に佳美が亡くなったシーンは描かれていないんですよね。本当に亡くなったのかわからないぐらいに。あくまでも、娘を助けるために奮闘し、そして娘が亡くなった後も「多くの人を助けてほしい」という彼女の意向を汲んで歩み続けた父親の伝記映画みたいな感じでした。オススメです。モデルとなった方のインタビューも面白いのでぜひ。

あと、本編とは関係ないんですが、個人的に知りたいのがIABPバルーンカテーテルの役割です。あくまでも心臓の動きを補助するためのものってことでしたけど、これは基本的にはずっと体に埋め込んだままなんでしょうか。


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