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映画好きは観なきゃ損!『ようこそ映画音響の世界へ』

【基本情報】

 原題:Making Waves: The Art of Cinematic Sound
製作年:2019年
製作国:アメリカ
 配給:アンプラグド

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:1/115
 ストーリー:★★★★★★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
    映像:★★★★★★★★★★
    音楽:★★★★★★★★★★

【あらすじ】

ハリウッドの映画音響にスポットをあてたドキュメンタリー。映画の“音”において大きな影響をもたらした名作映画たちを振り返り、知られざる映画音響の歴史に迫る。

【感想】

すごいすごいすごいやばいやばいやばい!!これ、ドキュメンタリーなのに今年一番面白い映画でした!!!すべての映画好きの人に観て欲しいですわ、これ。

映画を「音響」という視点で切り取った作品で、その音響が映画においてどれだけ重要かを、いろんな監督や音響担当者が各作品を振り返りながらインタビューに答える形式となっています。映画や映画の舞台裏に興味がある人なら絶対ハマると思いますし、観なきゃ絶対損です!

スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、クリストファー・ノーラン、デヴィッド・リンチ、ソフィア・コッポラなどの超有名監督および名作の音響担当者たちの"音"に対する想いや、『プライベート・ライアン』、『スター・ウォーズ』、『地獄の黙示録』などの名作たちがどういう音にこだわって制作されたのかがわかるとっても興味深い内容です。

音響の歴史について、印象に残ったところをいくつか書かせていただきますが、そもそも昔は録音ができなかったから、映画って映像だけだったんですよね。映画を観るときは生のオーケストラが演奏したり、銃撃戦も打楽器の音で代用していました。

エジソンが蓄音機を発明してから徐々に変わってきたものの、最初は映像と音の同期が相当に難しかった様子。

でも、トーキーが発明されて以降は映像と音の同期がしやすくなりました。そこで世界初のトーキー映画として上映されたのが1927年の『ジャズ・シンガー』。

次に斬新だったのが1933年の『キング・コング』。これは巨大動物の鳴き声を作るために、ライオンやトラなどの鳴き声を録音して、音の長さを変えたり逆再生したりして新しい鳴き声にしたそう。そのやり方は今でも使われているんだとか。

そして、音響史において革命を起こしたのが『スター・ウォーズ』です。音響担当者は1年かけていろんな音の素材を集めてまわったようで、ブラスターの音が鉄柱?をレンチで殴っている音だったり、チューバッカの声はクマだったり、当時の制作風景も観られたのが何にも勝る興奮でした!

特に、ジョージ・ルーカスはシンセサイザーなどの電子音ではなく、現実の音にこだわったようなので、あの映画に出てくる効果音はすべて身のまわりのもので作られているとのこと。やっぱりあの映画ってすごいんだって改めて痛感しました。

その次にまたヤバい作品が出てきたんですが、それがまさかの『地獄の黙示録』。世界で初めて5.1chで制作した作品だそうで、この映画の音響が現在でも基本システムとなっているらしいです。

次にエポックメイキングだったのがピクサーですね。ジョン・ラセターのインタビューもありましたが、『ルクソーJr.』という短編アニメーションからリアルを追求した音にこだわっていたそうで、それは続く『トイ・ストーリー』にも踏襲されています。

また、この頃からコンピューターで音を作るようになったのですが、実験的な試みをしたのが『マトリックス』。仮想空間に突入するときの音なんかはかなりチャレンジングだったようです。

でも、個人的に一番驚いたのが『トップガン』でした。実際の戦闘機の音を録音したものの、なんか地味だったらしく、映画には戦闘機の音に加えて、ライオンやトラ、サルの声も混ぜた合成音にしていたらしいのです、、、!

他にもいろんな映画の音の秘密を語っているのですが、昔の映画だけでなく、『インセプション』や『ブラックパンサー』、『ワンダーウーマン』など、新しめの作品が入っているのもよかったです。

しかも、音響を「Voice(声)」、「Sound Effect(効果音)」、「Music(音楽)」の3つに分けて、その中でさらにいくつかの項目に分けて解説してくれるのは大変勉強になりました。

思った以上にすごすぎるんですよ、音の世界。普段観ている映画の音ってけっこう別撮りされてて。特に、フォーリーアーティストと呼ばれる効果音専門の人たちは、役者の動きに合わせて足音をつけたり、衣類をこすり合わせたりしてるし、声を聞こえやすくするために同じシーンをスタジオでアフレコして、後から役者の口の動きに合わせて編集するといった作業もあることを初めて知りました。

ここまで素晴らしい仕事なのに、昔は会社から「音はこだわらなくていい。映像さえあれば」と理解されず、苦い思いをした人もけっこういたみたいですねー。今はコンピューターで何でも作れてしまう時代だですが、やっぱり1970年代の手探りで作っている頃が一番楽しそうに見えました。

最後は、音響担当者が自身の仕事について想いを語ってもらっているんですが、「こんなに楽しくてお金までもらえるなんて幸せすぎる」って言ってて、本当にいい仕事だなと思いました。

もう一度言いますが、映画好き、映画制作の舞台裏が好きな人は絶対観た方がいいです!!


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