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史上最高のビールはこれだ!

ウイスキーはお好きでしょ、と歌うのは石川さゆりだが、ビールはお好きだろうか。

ビール好きなら誰にでも忘れられないビールというものがあるだろう。

初めて飲んだビール。
彼女と飲んだビール。
親友と飲んだビール。
失恋のあとのビール。

それぞれに思いの染み込んだビールの味に違いない。

しかし、この世には人類史上最も美味しいビールというものが存在するのだ。


僕は「とりあえず」ビール派だ。
そしてその後はビールだけのおかわりで終わることもあれば、日本酒、焼酎とすすむ時もある。
だが、外で飲む時にはいつもまずは、「とりあえず」ビールから始まる。

元々、外で1人で飲む習慣はない。
また少し前に急性膵炎で入院したこともあり、最近はアルコールを控えている。
いや、飲もうと思えば飲めるのだが、奥さんの厳しい目がある(もちろんこれは優しさゆえ)。

「とりあえず」ビール派の僕はビールが好きなのかと問われれば、好きだ。
特に何ビールというこだわりはないが、冷えたビールはいつでも美味しいと思う。

そして僕にも、ああ、あの時のビールは美味かったなあ、というのはある。
もちろん、あなたの思い出のビールよりも美味しいというつもりはない。
誰にとっても、自分の思い出のビールの味こそが最高だ。

しかし、それでも、そんなビールのはるかに上をいく史上最高のビールが存在するのだ。

では、その人類史上最高に美味しいビールとは何か。

「ショーシャンクの空に」という映画はご存知だと思う。
原作はスティーヴン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」で、日本では1995年に公開された。
アカデミー賞にも7部門でノミネートされ、ゴールデングローブ賞では、モーガン・フリーマンが主演男優賞を受賞している。

この映画の中にそのビールは登場する。

妻とその愛人を射殺した罪で服役中の元銀行マンのアンディ(ティム・ロビンス)は、ある日ハドリー主任刑務官が遺産相続の税金でボヤいているのを耳にする。アンディはその対策の肩代わりと引き換えに、仲間たちへのビールを要求する。
「外で働いている時のビールは最高です」

ある晴れた日、刑務所の屋上で、数人の刑務官と囚人たちが、一緒に冷えたビールを飲んでいる。
思い思いにペール缶から瓶ビールを取り出して直接飲んでいる。
缶の中にはビール瓶と一緒に冷えた水か氷が入っているのだろう。
この日だけは刑務官も囚人もない。
普段は囚人に厳しい刑務官も、反抗的な囚人もみんな笑顔で冷えたビールを口に運ぶ。
ひと口ひと口、しっかりと舌の上で香りを味わい、喉元で冷たさを噛みしめる。
アンディはみんなから少し離れたところで微笑みながら眺めている。

このシーン、このビールこそ、人類史上最高のビールなのだ。
青空の下、褐色の瓶から喉元を流れ落ちる、それはまさに神のビールなのだ。

囚人のレッド(モーガン・フリーマン)はこう述懐している。
「自由の身にでもなったみたいだ。シャバのように思えた。我々が神のようにも」

もちろん、賛否両論、諸説あるのは間違いない。
しかし、まだの方も、一度見て忘れている方も、もう一度しっかりとこの映画を見てほしい。

映画を見てこのシーンまできたら必ずビールが飲みたくなる。
映画は一旦ストップして、冷蔵庫から冷えたビールを取り出す。
ひと口、ワインを味わうように口に含む。
ゆっくり喉に流し込む。
その時のビールは、きっと神のビールに変わっているに違いない。

映画の中の話じゃないかなどと、狭い了見は捨ててほしい。
見たものも、触ったものも、全てが現実なのだという広いこころで、この神のビールを味わってほしい。



※「ショーシャンクの空に」は、Netflix、Amazonプライムその他で配信中。

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