『お帰りなさい』
TODOリストをチェックした。
やり残している電話は、ない。
送り忘れているメールも、ない。
返信も全て完了。
デスクの上を片付けた。
出しっぱなしのマーカー。
ボールペン。
付箋。
引き出しの中に放り込んだ。
カレンダーを架け替えた。
パソコンの隅に、雑誌から切り抜いた門松のイラストを貼り付けた。
誰もいないオフィスを見回して、「来年もよろしく」
鍵をかけて、今年最後の家路につく。
暗い夜道を歩いた。
暗くて、寒かった。
どこからか、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
身体が少し暖かくなったような気がした。
思わず、
「ありがとう」と呟いた。
呟いてから、少し恥ずかしくなった。
普段はそんなこと言わないのに。
すると、小さな窓に明かりが灯り、
「ありがとう」と声がした。
その向こうにも、その向こうにも。
「ありがとう」の声と、小さな明かり。
導かれるようにして、歩き続けた。
たどって行くと、小さなドアがあった。
表札は「明日」
「お帰りなさい」
ドアを開けると、明るい笑顔が待っていた。
あなたの笑顔が。
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