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彼女たちは団結し、立ち上がった〜「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」

かつてこれほどひとりの俳優、ひとりのヒーローに対する哀悼の意に満ちた映画があっただろうか。

実在する国、ワカンダの王位継承の物語。
もちろん地図には載っていない。
当たり前だ。
国そのものが存在を隠しているので地図には載っていない。
しかし、アフリカのどこかに実在することを、マーベルファンなら知っている。

今作のいちばんの興味は、チャドウィック・ボーズマン亡き後のブラックパンサー/ティ・チャラはどうなるのかということだろう。
ティ・チャラを別の俳優が演じるのか。
途中から俳優が変わることは珍しくはない。
ティ・チャラ、チャドウィック・ボーズマンを全編デジタル化、CGで描き切ることも可能だろう。
しかし、マーベル側は早い段階でこれらを否定していた。

それは、チャドウィック・ボーズマンに対する最大限の敬意だ。
ティ・チャラはチャドウィック・ボーズマン以外ではあり得ず、チャドウィック・ボーズマンの死は、ティ・チャラのそれをも意味する。
さて、そこからだ。
この現実をどのように受け入れていくのか。
ヒーローとしてのブラックパンサーはどうなるのか。

王を失い悲しみに暮れるワカンダに、彼らが所有するヴィプラニウムを巡って新たな試練が立ち上がる。
ヴィブラニウムというのは、日常生活から世界平和にまで、何にでも活用できる貴重な資源なのだ。
いわば、万能スパイスのようなもの。
もちろんそれは、世界を滅ぼすこともできる。
残された者たちは、ワカンダの存続のために決断し、団結して立ち上がる。
しかし、そこにはさらなる悲しみも。
新たなヒーローは生まれるのか。
ブラックパンサーは継がれるのか。

ワカンダの多くの兵士は、オコエを筆頭として女性である。
そして、その人種は黒人だ。
この映画を、ジェンダー、多様性、LGBTQ、大国と小国など、さまざまな視点から論じることも可能だ。
それは、それぞれに語り合えばいい。
彼女たちは力を合わせ、勇敢に戦った、その姿を思い出しながら。

161分、あわや3時間に及ぼうかという上映時間だが、僕にはあっという間だった。
できれば、第1作をみておくことをおすすめする。
マーベル作品では珍しく、過去の他のヒーローとの関わりはほとんど出てこない、純粋にブラックパンサーだけを楽しめる作品になっている。
そして、泣きたいひとには泣ける作品でもある。

ドラマ「ワンダビジョン」で幕を開けたフェース4も、この「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」で幕を閉じる。
「アイアンマン」に始まり、「アベンジャーズ エンドゲーム」で涙と感動に包まれて昇華したフェーズ1〜3。
フェーズ4からは、「ワンダビジョン」や「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」などのドラマも加わりその世界が広がっている。
これらが今後どのようにまとまっていくのか、来年からのフェーズ5に期待したい。
皆さん、良いお年を。
あ、違うか。
MCUファンは、もう今年が終わった気分です。

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