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AI企業が注目すべき顔認識に関する法律の変化とは

顔認識技術などは世界中で幅広く研究が行われており、個人認証やターゲティング広告など様々な分野での利活用が進んでいます。

一方で個人を特定して情報を集めるという事もあり、個人のプライバシーに関して議論が生まれている領域でもあります。

顔認識技術の発展はこれからの社会の利便性を考える上で必要不可欠な技術であるという前提に立った上で、プライバシーに関して様々議論が起き始めています。

今回の記事ではこれから広がるであろう顔認識技術とプライバシー問題に関して、事業を考える上で参考になるリスク事例を紹介したいと思います。

顔認識技術に関連したビジネス

顔認識技術に関する取り組みは世界各国で始まっており、GoogleやFacebookなどのテック大手企業を始め、各社が実用化に向けて開発を行なっています。

リサーチ会社のMARKETSandMARKETS社が公表しているデータによると、関連市場は2019年の32億ドル(約3300億円)から2024年には70億ドル(約7100億円)まで拡大して行くと予測されています。

年成長率は16%で国などの防衛利用、小売店舗の広告などこれまでリアル空間で活用できていなかった個人のデータをビジネスやサービスに変えて行く手段として注目が集まっています。

プロジェクト別に見ると、Facebookは2014年からDeepFaceプログラムと呼ばれる取り組みをスタートしています。

(出典:What is DeepFace? 'Human-Level' Face Matching, Explained)

2つの写真が同一人物であるかどうかを正解率97.25%で回答するサービスです。

Googleは日本でも有名なFaceNetを2015年6月から展開しており、DeepFaceを上回る99.63%の正解率を誇ります。

実際にインドのオフィスで従業員が退出する際に試験的に導入された動画がこちらです。

(出典:Tensorflow, Facenet, Keras, Python- Real Time Face Recognition - Checking Out of Office)

顔認識技術を活用して個人を特定する技術はこれ以外にも各社が様々なテクノロジーの開発を行なっており、AmazonのRekognitionなどクラウドをベースとしたソリューションなどの提供も進んできています。

特定の企業だけでなく、サービスが一般化されて簡単に顔認識技術を活用したビジネスが可能になると私たちの世界では個人を識別する情報が数多くで回る事になりプライバシーに対する関心はより一層高まって行くと考えられます。

顔認識技術とプライバシーにまつわる動き

顔認識技術の活用は既に数多くの分野で取り入れられています。

中国を始めとして、アメリカ合衆国国土安全保障省では97%の空港での顔認識技術の導入を決定しています。

これにより渡航禁止リストの乗客などを見分けるだけでなく、空港での認証時間を大幅に削減する狙いがあります。

日本でも昨年の4月15日よりNECの顔認識技術を活用した税関検査の仕組みの導入が始まり、2020年からはさらなるエリアの拡大を目指しています。

(出典:スムーズで快適な旅を ~税関検査場電子申告ゲート~ [NEC公式])

利便性の観点から顔認識技術の活用は加速度的に進んで行くと考えられている一方で、顔認識技術を通した私たちのプライバシー情報の問題に関する議論がここにきてさらに加熱し始めています。

昨年5月には米サンフランシスコ市監理委員会で公共機関による顔認証技術の使用を禁止する条例案を可決しています。投票結果は賛成8、反対1、棄権2と賛成多数の結果になりました。

連邦政府が管理している空港や港湾などでは今回の条例は適用されませんが、サンフランシスコ市の決定により全米各地の州で顔認識技術に対する市民の関心の矛先に変化が起き始めています。

オークランドやバークリー、そしてマサチューセッツ州サマービルなどの近隣でも検討が進んでおり地域単位でルール変更が行われる可能性があります。

この背景には市民活動団体の草の根活動が大きく関わっているのですが、団体の活動を後押しする動きとして以下の点が挙げられています。

急速な技術の進展による市民のプライバシー、人権に対する懸念
技術制度とバイアスの問題
テクノロジー企業における専売特許

急速な技術の発展を特定の企業だけに依存する事による弊害が一部の市民を中心に盛り上がり、制度を変える動きへと進展し始めています。

顔認識技術に関連した法律

GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)を始めとして、データ主体に権利を明確化する動きは各国で進み始めています。

イリノイ州、テキサス州、そして2017年にワシントン州では生体認証情報プライバシー法(BIPA:Biometric Information Privacy Act)が制定されています。

2008年に各州に先駆けて生体認証に関連した法律の制定を行なったイリノイ州では2015年11月20日にFaceBookの顔認証によるタグ付けでのクラスアクション訴訟を受け連邦地裁で一度却下されています。

これまではBIPA(生体認証情報プライバシー法)に関して米国中心に制定されるものの実際に法律の下での制裁金や罰金などの大きな事例は発生していませんでした。

顔認識技術に対する世論の変化

2015年のクラスアクション訴訟以来、顔認識技術とプライバシーに関連した動きは様々な地域で議論されるようになります。

そして、今年の1月29日にFacebookはイリノイ州でのクラスアクション訴訟に対して和解金として600億円を支払う合意を発表しました。

これまでのプライバシー訴訟に関する和解金では過去最大の金額で生体認証識別子の収集においてユーザーの主張が受け入れられた大きな一歩となります。

さらに欧州ではGDPRの下で顔認識技術に活用に関して公共の場での使用禁止など検討を行なっていると発表しています。

実際に禁止となるかどうかは確定していませんが、GDPRにおける個人のプロファイリングなど同意を必要とする際に、公の場での顔認識技術がどのように認識されるのかという点には注目が集まっています。

これは余談ですがBrexitを契機に欧州から離脱したイギリスでは、独自の個人情報の取り扱い規制などが制定される可能性もあります。

既にイギリスの地方警察では顔認証システムが幅広く普及しており、今後人工知能を含めたテクノロジー分野での進展が期待できる可能性があります。

これまで欧州全体のルールによって技術発展が遅れてきたという側面もあり、国によってプライバシーに対する考え方が変化して行く可能性があります。

AI企業が注目すべき顔認識に関する法律の変化

顔認識技術の進展は年々目紛しいスピードで成長しています。

一方でデータ主体のプライバシーや安全性などのセキュリティの議論も徐々に具体的な事例として広がりつつあります。

これはプライバシーという一般の個人だけの話ではなく、技術の急速な進展に伴う一種の成長痛的な側面も考えられます。

カリフォルニアの例のように市民団体の活用によって条例が変わってしまうような動きも引き続き出てくるのではないかと思います。

一方でインドでは昨年から生体情報で認証するアドハー番号民間企業でも活用できるように法の改正が行われており、顔認識を始めとした生体認証に関しては利活用も進んで行くと期待されます。

小売店や公共施設、電車や車の車内など様々な場面で顔認識の技術が利用される可能性は考えられますが取得したデータを個人を特定する形でプロファイリングする際はより注意が必要になります。

※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。

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